王立ミリアリリー女学園〜エニス乙女伝説・春の乙女祭編〜

竹井ゴールド

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負け犬達の断末魔

声が聞こえなくなった【テンレーンside】

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 ミリアリリー王国のアテッサ伯爵家の一族が持つ特異能力は【精霊の囁き】だ。

 精霊が囁く声(まあ、大概警告かしら?)が聞けるだけの能力。

 これが凄いかどうかは人それぞれね。

 我がアテッサ伯爵家はこの能力のお陰でミリアリリー王国の歴史を見事に歩き渡ったのだけど・・・

 私ははっきり言って全然大した事のない能力だって軽視してたわ。

 だって生まれてこの方、見たこともない精霊の声が聞こえるだけなのよ?

 それも大抵、悲観的な事を囁くし。

 だから、私も適当に聞き流してて、精霊の声が止めるのも無視してミリアリリー女学園に入学したんだけど・・・・・・・





 未来の王妃様の妹のカウービーさんと知り合って・・・・・・

 転落するのにそう時間は掛からなかったわ。





 エスレバート伯爵家に分家の男爵令嬢を呼んだ時、





『ダメよ。この場に居ちゃ』





 今回は強めの声が聞こえた。

 そして結果は男爵令嬢が毒を飲んだ。

「ちょ、何よ、これ?」

「カウービー様達はすぐにお帰りを。ここは私が何とかしますから」

 と騒ぐ中、





『さよなら』





 その声が聞こえて、それから私は【精霊の囁き】が聞こえなくなったわ。





 ◇





 アテッサ伯爵家に戻った時には、お父様以下家族や使用人達が玄関ホールで勢揃いしていて、





「テンレーン、おまえは勘当だ」





 と告げてきたわ。

「はい? 何ですか、それ、お父様?」

「お父様? 気軽に呼ぶな。【精霊の囁き】を失った者はアテッサ一族ではないのだからな。そのような者が家に居ると【精霊】も嫌がる。安心しろ。食い扶持ぶちが稼げる仕事は用意してやったから。連れて行け」

 冷徹に告げるお父様の命令で、家の私兵が私の両腕を掴み、

「はあ? お母様、何とか言って下さい」

 ハンカチで涙を拭いてるお母様に声を掛けると、本当は泣いてなくて泣くフリをしてるだけのお母様が、

「貴族籍は抜いたから安心してね、平民さん」

 最初は演技かと思ったけど、少し不安になった私は兄を見て、

「ちょ、お兄様?」

 でも、兄は私の声など聞きもせず、お父様に、

「精霊の声を聞かない者がこの家から出るとは。父上、母上の血が悪かったのでは?」

「ふむ」

「ちょっと、それはないでしょ。アナタも悩まないでよ」

「みんな、聞いてるのぉぉぉっ?」

 私兵に抵抗して引きずられる私が絶叫すると、

「大きな声だな、【精霊】も嫌がってるぞ」

「あんなのが妹なんて・・・・・・」

「さよならね」

 こうして私は本当にアテッサ伯爵家から勘当されて、屋敷から狼車に乗せられて・・・・





 ◇





 罪を犯した貴族の娘が入れられる高級娼館で15歳から客を取らされたわ。

 客に病気を貰って死ぬまでの8年間、ずっとね。

 病気で痩せ細って、娼館から追い出されて路上で死ぬ間際に、





『じゃあね、おバカさん』





 って聞こえたのは幻聴に決まってるわ。
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