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盤石
トルオン、貴族の老人の前でズッコケる
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女伯爵のルーヴァが不良兵士狩りでエトリア帝国を飛び回ってるので、夫のトルオンが城塞街ネレシオの執政をしていた訳だが(実際は部下に丸投げだが)、貴族の訪問があった。
貴族の折衝などはルーヴァが卒なくこなしてた訳だが、ルーヴァが不在の今はトルオンが相手をしなければならない。
大物になればなるほど先触れがやってきて日時等々を伝えるので、相手の予習もばっちりだった。
今日会うのはカモスモーという老人で、爵位は侯爵。ネイチャ王国からの降伏組だが侵政前からエトリア王国に内通していた為、伯爵の地位を安堵され、更には帝国建国とともに侯爵になっていた。
ネイチャ領の南部でデカイ顔をしてる地方貴族だ。
用向きは領土の境界線の確認だが、これは無論、嘘っぱちだ。
旧エトリア王国と旧ネイチャ王国の国境は昔からちゃんと定められているので。
「本日は天気が良くて助かりましたわい」
などと挨拶したカモスモーは人間の88歳。身長171センチ。白髪で顎にチョロっと白髭。顔の皺が深くて老獪を通り越して凄味がある老人だった。
足が悪いのか魔石を嵌め込んだ杖を突いてる。
「本当ですね」
などの世間話を幾つか終えた後、
「実は大変困った事がありまして」
「?」
「お聞きかもしれませんが、どうも夜盗どもが我が領内を騒がしておりましてな。退治したいのですが、退治の際にこちらのネレシオ領に夜盗が逃げてしまうかもしれないので、事前にその承諾を・・・」
「いいですよ」
トルオンがアッサリと承諾して、
「それはありがとうございます。お陰で肩の荷が居りましたわい」
会談はスムーズに終了したのだが、見送りの際にトルオンが、
「のわっと」
カモスモーの前で1人でズルッとズッコケた。
トルオンのズッコケは老人を押し倒すような無様な事はしない。
カモスモーが持つ魔玉を嵌め込んだ杖にはトルオンの足が軽く当たってしまったが。
なので、カモスモーも驚きつつ、
「大丈夫ですかな?」
「いやぁ~、お恥ずかしい。ギフトが不運系の【転倒】なもので。ナハハハ」
「それは大変ですな」
などと心にもない事を喋って、カモスモーは帰っていったのだった。
カモスモーが帰った後、ミタザクがヒーナの執政官に出向した事で家宰兼伯爵領総行政官に昇格したオーキドンが、
「よろしかったのですか、承諾されて? 絶対に何かを企んでいますよ、あの老人?」
と忠告した。
オーキドンは外見年齢62歳のドラゴニュートだ。深緑の髪と翼で眼鏡を掛けた文官肌の男だった。仕えてまだ1年だ。信用出来るかどうかは微妙だが、セレシレル、セレーリュが信用してるのでトルオンも一応は信用していた。
「断っても勝手にやったさ」
トルオンはそう苦笑して答えたのだった。
◇
さて。
ネレシオ領の頭脳担当はトルオンの3人の妻や親衛隊の女達だった。
これはもう仕方がない事だ。
トルオンがズルで3人の妻と親衛隊を強くした所為で、知力の基礎能力値も跳ね上がっており、もうその辺の文官どもよりも優秀だったのだから。
そして、経済幹部がトルオンを裏切った事件から反抗的な周辺貴族への対応を『撃滅』に変更した城塞街ネレシオでは、既に幾つかの罠や陰謀をネレシオに反抗的な貴族に施していた。
なので、トルオンはネイナの太股に顔を乗せてイチャイチャしながら、
「カモスモーが夜盗退治をするって言ってきたよ」
「では、あの老人には御退場していただきますね」
「バレないようにね、ネイナ」
「バレませんよ。旧ネイチャ王国の愛国的な残党が祖国を裏切った貴族を成敗するだけなのですから」
そう笑ってネイナは愛しそうにトルオンの髪を撫でたのだった。
貴族の折衝などはルーヴァが卒なくこなしてた訳だが、ルーヴァが不在の今はトルオンが相手をしなければならない。
大物になればなるほど先触れがやってきて日時等々を伝えるので、相手の予習もばっちりだった。
今日会うのはカモスモーという老人で、爵位は侯爵。ネイチャ王国からの降伏組だが侵政前からエトリア王国に内通していた為、伯爵の地位を安堵され、更には帝国建国とともに侯爵になっていた。
ネイチャ領の南部でデカイ顔をしてる地方貴族だ。
用向きは領土の境界線の確認だが、これは無論、嘘っぱちだ。
旧エトリア王国と旧ネイチャ王国の国境は昔からちゃんと定められているので。
「本日は天気が良くて助かりましたわい」
などと挨拶したカモスモーは人間の88歳。身長171センチ。白髪で顎にチョロっと白髭。顔の皺が深くて老獪を通り越して凄味がある老人だった。
足が悪いのか魔石を嵌め込んだ杖を突いてる。
「本当ですね」
などの世間話を幾つか終えた後、
「実は大変困った事がありまして」
「?」
「お聞きかもしれませんが、どうも夜盗どもが我が領内を騒がしておりましてな。退治したいのですが、退治の際にこちらのネレシオ領に夜盗が逃げてしまうかもしれないので、事前にその承諾を・・・」
「いいですよ」
トルオンがアッサリと承諾して、
「それはありがとうございます。お陰で肩の荷が居りましたわい」
会談はスムーズに終了したのだが、見送りの際にトルオンが、
「のわっと」
カモスモーの前で1人でズルッとズッコケた。
トルオンのズッコケは老人を押し倒すような無様な事はしない。
カモスモーが持つ魔玉を嵌め込んだ杖にはトルオンの足が軽く当たってしまったが。
なので、カモスモーも驚きつつ、
「大丈夫ですかな?」
「いやぁ~、お恥ずかしい。ギフトが不運系の【転倒】なもので。ナハハハ」
「それは大変ですな」
などと心にもない事を喋って、カモスモーは帰っていったのだった。
カモスモーが帰った後、ミタザクがヒーナの執政官に出向した事で家宰兼伯爵領総行政官に昇格したオーキドンが、
「よろしかったのですか、承諾されて? 絶対に何かを企んでいますよ、あの老人?」
と忠告した。
オーキドンは外見年齢62歳のドラゴニュートだ。深緑の髪と翼で眼鏡を掛けた文官肌の男だった。仕えてまだ1年だ。信用出来るかどうかは微妙だが、セレシレル、セレーリュが信用してるのでトルオンも一応は信用していた。
「断っても勝手にやったさ」
トルオンはそう苦笑して答えたのだった。
◇
さて。
ネレシオ領の頭脳担当はトルオンの3人の妻や親衛隊の女達だった。
これはもう仕方がない事だ。
トルオンがズルで3人の妻と親衛隊を強くした所為で、知力の基礎能力値も跳ね上がっており、もうその辺の文官どもよりも優秀だったのだから。
そして、経済幹部がトルオンを裏切った事件から反抗的な周辺貴族への対応を『撃滅』に変更した城塞街ネレシオでは、既に幾つかの罠や陰謀をネレシオに反抗的な貴族に施していた。
なので、トルオンはネイナの太股に顔を乗せてイチャイチャしながら、
「カモスモーが夜盗退治をするって言ってきたよ」
「では、あの老人には御退場していただきますね」
「バレないようにね、ネイナ」
「バレませんよ。旧ネイチャ王国の愛国的な残党が祖国を裏切った貴族を成敗するだけなのですから」
そう笑ってネイナは愛しそうにトルオンの髪を撫でたのだった。
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