ギフト【ズッコケ】の軽剣士は「もうウンザリだ」と追放されるが、実はズッコケる度に幸運が舞い込むギフトだった。一方、敵意を向けた者達は秒で

新顔

【三頭大蛇side】三頭大蛇の血で故郷が呪われる

　大陸北部のラムネイ氷原の東の端の都市国家バビロ。

　トルオンがソルンのタワーホテルを崩落させた深夜、都市国家バビロは警戒を知らせる鐘の音が響き、兵士達が走り回って騒然としていた。

　深夜ながら誰も眠ってはいない。

　原因は最近、大陸北部のラムネイ氷原に三頭大蛇だった。

　全長２００メートル級。全身の蛇皮は黒色。

　見るからに邪悪な存在だ。

　討伐を何度も試みたが、『三つ頭』は強過ぎる。

　知恵も回り、傷や皮の再生力も高い。

　倒せないのだ。

　ラムネイ氷原の白い世界に現れた黒い三つ頭の大蛇は今や恐怖の存在だった。

　それが都市国家バビロに近付いていたのだ。

　それでこの騒ぎだった。





　そして、その騒ぎの主ぬしの三頭大蛇は信じられない事に、王子カーン、聖女リリア、老賢者トイレスの自我を有していた。

　それぞれの首に自我が宿っており、中央がカーン、左がリリア、右がトイレスだった。

「シャアア（何とかしろ、 トイレス）」

「シャアア（創造の女神リュアラビーテの生物創造の前にワシの知識など・・・）」

「シャアア（殿下、それよりもこのまま行くと都市国家バビロに向かうのでは？）」

「シャアア（それは拙い。方向転換だ）」

「シャアア（無理ですよ。自我はあっても身体は動かせないのですから）」

　という訳で、大蛇は三人の故郷の都市国家バビロを城壁を越えて襲撃したのだった。





　都市国家ハビロに侵入を果たした大蛇の、

「シャアア（止めてくれっ！　もう許してくれっ！　民達を殺させないでくれっ！）」

　王子カーンの悲痛の叫びは凶悪な咆哮にしか見えず、迎え撃つ兵士達が奮戦するも、王子カーン率いる精鋭２００人は古代遺跡に出向き帰らぬ人となっている。

　お陰で兵士達の奮戦虚しく喰われていった。

「シャアア（おまえ達、逃げろっ！　逃げてくれっ！）」

　王子カーンがそう指示を出すも、声が通じる訳もなく、

「この邪蛇がっ！　カーン様の意思はオレ達が継ぐっ！　かかれっ！」

　と兵士達が突進する中、ビュンッと神聖力を帯びた剣圧が三頭大蛇の右の頭を貫いたのだった。

「シャアア（トイレス？　死んだのか？）」

　と王子カーンが右の首がない事に驚くが、問題は首から噴き出た黒い血だった。

　黒い血が都市国家バビロを汚していく。

　まともな血な訳がなく、【呪い】が込められており、黒い血で汚された都市国家バビロはこうして呪われて滅亡したのだった。





　因みに、二つ頭になっても大蛇は死なず生き続け･･･

　７日後には右の首も当たり前のように生えたのだった。