ギフト【ズッコケ】の軽剣士は「もうウンザリだ」と追放されるが、実はズッコケる度に幸運が舞い込むギフトだった。一方、敵意を向けた者達は秒で

竹井ゴールド

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敵対者

【英雄side】ズッコケ斬撃に死す

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 トルオンという男は引きが強過ぎる。

 もはや六柱神の加護とは別の何かに魅入られていると言っても過言ではない。

 何せ、精霊人ゴルバリンの徘徊場所がマラサイト秘境だったのだから。

 ついでに言えば、樹上の里ナルドゥの女戦士達は精霊人ゴルバリンを信仰する守護兵だった。

 なのに、トルオンはその日、猫人族のシンレイにズルで強くする為にマラサイト秘境に来ており、秘術を施した後にジャングルで魔物の狩猟を始めていたのだ。

 それも遠斬りで。

 トルオンを知る者が居れば、もうこの後の展開が読めていて『逃げろ』と忠告したはずだが、精霊人ゴルバリンは呑気に木の上からその様子を眺めていた。

 『男がこの秘境に居るなんて珍しいな。男は嫌いだから後で戦士達に殺させよう』と思いながら。

 精霊人ゴルバリンは白縁の幽霊みたいな存在だった。

 元は身長174センチの人間の男で、羽根飾りなんかが付いた原住民の半裸の衣装姿だった。

 その精霊人ゴルバリンは実は普通の奴には見えない。

 まあ、トルオンは普通じゃないから見えてたが。

 それでも害意がなかったので無視してたが、お約束とばかりにトルオンが魔物に剣を振る際にズッコケた。

 そして、その際に斬撃が案の定、精霊人ゴルバリンに一直線に飛んできて、

『へっ?』

 とのマヌケな声を上げた瞬間、ズシャッと居た樹木ごと斬られたのだった。

 それも聖剣ボロロカリバーの遠斬りに。

 ダメージを喰らわない理由はどこにもなく、

『ギャアアアアアアアアアアアア』

 モロにダメージを喰らった。

 致命傷だ。

 存在が消え始める。

 拙い。

 誰かに憑依しなければ本当に消滅する。

 一番近いのは猫人族だが、あの神の力を宿した人間に近付くのは拙い気がする。

 そんな訳で、別の憑依先の人間を探すべくダメージを追った状態で移動したのだが、背を向けた瞬間、2撃目が飛んできた。

 そうなのだ。

 トルオンは2度ズッコケた。

『ギャアアアアアアアアアアアア』

 今度の斬撃は残る存在を丸々消滅させるにふさわしい威力で、その一撃で精霊人ゴルバリンは完全に消滅したのだった。





 ◇





 マラサイト秘境の森で2度ズッコケたトルオンが起き上がりながら、

「んん? 今、何か聞こえたような?」

「ってか、ドジだな、おまえって」

「そこも好きだろ?」

五月蠅うるさい」

 シンレイが呆れながらもトルオンの背中に付いた葉っぱを払ったのだった。
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