ギフト【ズッコケ】の軽剣士は「もうウンザリだ」と追放されるが、実はズッコケる度に幸運が舞い込むギフトだった。一方、敵意を向けた者達は秒で

竹井ゴールド

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敵対者

トルオン、城塞街バギンでズッコケる

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 トルオンの妻ルーヴァケビスがエトリア帝国の伯爵位を得た事でヨルデの森内で廃墟化が始まっている城塞街バギンもトルオンの財産となった(表向きはルーヴァのだが)。

 そんな訳で、城塞街ネレシオと城塞街バギンを一直線で結ぶ街道をヨルデの森に作る事となり、既にトルオンは数回に分けて(一発だと城壁にまで被害が出そうだったので両方の街側から慎重に)斬撃波で木々を伐採し、工事は始まってる訳だが・・・

 トルオンはその様子を城塞街バギンの城壁から見下ろしていた。

 城壁町バギンは完成5年の真新しい街だ。

 ヨルデの森内の中央の湖から少し離れた南西側に位置し、城壁が囲む周囲の森は伐採して平地となってる。

 城門は東西南北の4門。

 障壁は高く、四方の城壁の角に4棟の見張り塔がある。

 城壁内の街も大きい。

 魔物の侵入を想定してか、内壁が軍基地と東西の区画を区切っていたが・・・

 もう閑散としていて住民も少なかった。

「殺風景なところですね」

 専属護衛官のエイチェナがトルオンに話し掛けた時、城壁の上に上がって街を見下ろし、満更でもないトルオンが、

「そうだな・・・のわっとっ」

 ズルッとズッコケた。

 城壁のへりに片足を乗せてたので真横に。

「キャ」

 1人でズッコケて、盛大に城壁の床にズシャッと顔面をダイブさせた訳だが・・・

 次の瞬間、カカカカカンッとトルオンが1秒前まで居た場所を通過して5本も矢が城壁に突き刺さった。

「えっ? 今、風を切り裂く音が聞こえなかったわよ?」

 エイチェナが耳を立てて警戒して、他の親衛隊の、

「それって風の高位精霊の加護付きの矢じゃないの?」

 女魔術師のアナリアが状況を把握し、

「なら狙撃手も風の精霊を纏って姿を消してるわね。あっ、あの屋根の上に居るわ、3人もっ!」

 女魔術師でハーフエルフのベリラベートが指差して事態に対処する中、トルオンは、

「イツゥ・・・・・・鼻を打ったぁ。ホント、最悪」

 と痛がり、周囲が真剣な顔をしてるのに気付き、

「えっ? 何?」

 不思議がったのだった。





 城塞街バギンでトルオンの命を狙った3人はその場で捕縛された。

 何せ、トルオンの親衛隊はズルによる大物喰い熱を最低2回は経験しており(故意に妻より弱くしてあるが、それでも)強かったのだ。

 捕縛されたのは凄腕冒険者の弓使い3人だった。

 同じ冒険者パーティーではなく、どうもこの暗殺の為だけにそれぞれ雇われたらしい。

 人間1人にエルフ2人。

 全員男だ。

 城壁の上から【空中ジャンプ】を駆使して屋根まで跳躍したエイチェナがボッコボコに殴ったので3人とも顔面が倍以上に腫れて見る影もなかったが。

 捕縛後、

「誰に頼まれたんだ?」

 興味があったのでトルオンが質問すると、

「けっ! おまえは嫌われ者なんだよっ! その内、誰かに殺されるだろうさ」

 なんて顔を倍に腫らした赤毛の人間の男がイキがったので、トルオンは再起不能になるまでたっぷり5分間、例の【威圧】を至近距離で喰らわして3人全員の心をバッキバキにへし折って再起不能の負け犬にしてから見せしめとして、わざと城塞街ギバンへと解放したのだった。
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