ギフト【ズッコケ】の軽剣士は「もうウンザリだ」と追放されるが、実はズッコケる度に幸運が舞い込むギフトだった。一方、敵意を向けた者達は秒で

安全地帯

トルオン、ネレシオ砦を貰う

　エトリア王国の最高権力者の王太后ビレリアの承諾を以もって、トルオンはエトリア王国内でドラゴニュート５００人を傘下に収める事を許された。

　だが、さすがに王都アースレナでの居住は許されなかった。

　王都アースレナ内にドラゴニュート族５００人が滞在して、それが一斉蜂起するという可能性があるだけでエトリア王国は気が気でないのだから。

　そんな訳で、トルオン達はネレシオ砦に転居する事となった。

　ドラゴン21頭をエトリア王国内で販売した褒美として、エトリア王国から砦を下賜げしされた形式が取られた。

　場所はエトリア王国の北東側に位置するヨルデの森の南側。

　国内のヨルデの森とエトリア王国の西側のバーラ平原の対魔物用の防衛砦だ。

　何せ、バーラ平原からヨルデの森に魔物が入ってくるので数が全然減らなくて。

　そんな防衛用のネレシオ砦が貰えたのは・・・・・・

　既に４年前にエトリア王国がヨルデの森の魔物対策としてヨルデの森内に城塞街ギバンを建築し、ネレシオ砦が役目を終えていたからだ。

　城塞街ギバンの完成により、ヨルデの森の魔物対策の拠点も移り、ネレシオ砦は現在、兵士が少数常駐するだけの兵の詰所となってたが･･･

　この度、トルオンに下賜される事となった。





　すぐに転居とはならない。

　ドーベルの斡旋で建築系のドワーフ職人50人を雇い入れてネレシオ砦に派遣して改築や増築工事だ。





　同時にネレシオ砦内に・・・

　冒険者ギルドの素材買取出張所。

　食堂や酒場も計３軒。

　服屋。

　鍛冶屋。

　道具屋。

　運搬屋。

　これらもドーベルの仲介で誘致した。





　そして改修作業を終えた50日後にトルオンは王都アースレナの屋敷からネレシオ砦にドーベルの公爵家所有のグリフォンで移動したのだった。





　砦は城壁に囲まれて、城門は森側と街道側の２門。

　城壁に付いた見張り塔は森側に２棟ある。

　敷地内は広く、畑や温室花壇もあり、砦なので兵舎や厩舎もある。

　冒険者ギルドの素材買取出張所は森側の門の内側に新築した。道具屋はその隣だ。

　ヨルデの森で活動する冒険者達も利用出来るように、との配慮だ。

　同様に、更に隣に３軒の食事処も新築した。チーズ系と酒場系とスイーツ系だ。

　鍛冶屋は砦の鍛冶工房を丸々提供。

　服屋は砦内の一角に設けた。

　運送屋には厩舎の一部を提供した。





　改修された砦の本城は見事にリニューアルされていた。

「まるでお城ですね」

　ルーヴァの感想に、

「そうだな」

　トルオンも同感だった。

　この時のトルオンは四半神になって５１０日が経過し・・・

　メッシュとして残ってた黒髪も、時折光の加減で橙色に見える眼も、完全に金色に染まっていた。

　人間だった時の名残りはもうない。

　完全な四半神だった。

　それはともかく、

「いいじゃないか」

「本当ですね」

　セレシレル、セレーリュも砦を見た感想を言った。

「で、信用出来るの？　ドラゴニュートの皆さん？」

「少し怪しいのも居るけど大丈夫だと思うぞ」

　セレシレルの言葉にトルオンは、

「『少し怪しいの』って」

　呆れながらも『面倒臭い事になったな』と思ったのだった。