ギフト【ズッコケ】の軽剣士は「もうウンザリだ」と追放されるが、実はズッコケる度に幸運が舞い込むギフトだった。一方、敵意を向けた者達は秒で

竹井ゴールド

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知恵の女神ジュピマーズ

トルオン、操られてもズッコケる

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 トルオンは夢から目覚めた。

 寝室が暗い。まだ夜だった。

 トルオンは暗室のベッドで上半身を起こした。

 鮮明に記憶が残ってる。

 知恵の女神ジュピマーズ様のノーパンのM字開脚に20001回顔でダイブした記憶が。

(マジでか。20001回も知恵の女神ジュピマーズ様のノーパンのM字開脚に顔をダイブって・・・ってか、あれって本当に夢だったのか? 唇や顔面で触れた感触や匂いが妙にリアル過ぎて夢と思えないんだが。もし恥ずかしがって夢と言ってるだけで、実は現実とかだったらオレ、確実に殺されるぞ、知恵の女神ジュピマーズ様に)

 額に手を当てたトルオンは興奮しなかった。

 逆だ。

 青ざめてる。

(ともかく指令だ。指令を果たして知恵の女神ジュピマーズ様の機嫌を取ろう。それしかない・・・それにしても、夢だとマイナスの事が起こるのか、オレのギフトって?)

 トルオンは冷や汗を流しながらギフト【ズッコケ】の新たな一面に戦慄した。

 あの知恵の女神ジュピマーズが偽物、または夢による術師の攻撃だとはトルオンは微塵も疑わなかった。

 あれが本物の知恵の女神ジュピマーズ様だった事くらいはトルオンも四半神なのだから分かる。

 トルオンはベッドの隣に眠る相手を見た。

 今夜のねやの相手はセレーリュ1人だけでそのセレーリュがベッドで寝ていた。ドラゴニュートなので背に翼があるので腹這いだったが。

 そして・・・

 何故か、もう1人、身長208センチの、白髪白耳白尻尾の虎人族の女も居た。

 裸なので左肩には3本の爪痕、右腹には神代言語の魔法陣が身体に張り付いていた。

 この虎人族の女こそが、たった今、夢で知恵の女神ジュピマーズから抹殺指令を受けた対象のタガナだった。

 左肩の傷痕は父親の聖虎に付けられて痕が残り、右腹の魔法陣も母親の芸術の女神ララービーに刻まれた呪いの一種と推察出来た。

 そのタガナがぬけぬけと、

「おはよう」

 とトルオンに声を掛けてくる。

「あれ、どうして、ここに?」

 トルオンは眼をパチクリする中、タガナが、

「前に関係を持った時に目印を付けてたからね。それよりも陰険女神から何か指令を受けなかった?」

「受けたよ。タガナを殺せってさ」

 トルオンは顎でタガナを差した。

「それで・・・私を殺すの?」

 真顔で聞いてきた。

「無理でしょ、殺すのとか?」

 へらっとトルオンが答える。

「あれ、気付いてたの? 私の方が強いって?」

「そりゃね」

「それで抱いたんだ? 私を?」

「タガナがいい女だったからね」

「ええっと、もしかして・・・」

 と言ったタガナが右手の人差指に魔力を宿しながらトルオンに向けてオーケストラの指揮者が指揮棒を振るように振った。

 直後にトルオンの両眼に膜が掛かる。

「何だ、ちゃんと【魅了】の細工は有効じゃないの。まあ、当然よね。6人の中で一番の美貌を誇る芸術の女神ララービーおかあさま直伝の【魅了】なんだから。他の5人に解ける訳がないし。でも念の為に・・・そのベッドの女を殺しなさい」

「・・・はい、タガナ様」

 虚ろな眼をしたトルオンがベッドの脇に立ててたそれなりの剣をシャキンッと抜き、寝てるセレーリュを背中から剣で貫こうとした時、

「っ!」

 ズルッとズッコケた。
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