ギフト【ズッコケ】の軽剣士は「もうウンザリだ」と追放されるが、実はズッコケる度に幸運が舞い込むギフトだった。一方、敵意を向けた者達は秒で

竹井ゴールド

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追放、特訓

トルオン、顔見知りの常連と会う

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 王都ベードリッヒに騎士区にその私塾はあった。

 アスレス流剣技道場。

 だが、活気も微塵もなかった。

 門弟が居なかったので殺風景な道場だった。

「こちらです、トルオンさん」

「お邪魔しまぁ~す」

 とトルオンはアリシアの後について道場の玄関を潜ったが、

「アリシア、誰だ、ソイツは?」

 そう声を掛けてきたのは、60代の寝癖の付いたボサボサの金髪で額が少し禿げた無精髭の男だった。

「チンピラに絡まれてた私を助けてくれたトルオンさんよ、お祖父ちゃん。トルオンさんは騎士学校に入学されたいんだって。だから、塾に入らないかって誘ったの」

「アリシア、何、勝手に決めて・・・ん? トルオンだと?」

 そう呟いてトルオンを見る中、トルオンの方も、

「あれ、ええっと・・・確か、アレックス先生?」

「えっ? トルオンさんは祖父とお知り合いなんですか?」

「うん。オレの故郷に一時期、素材を持ち込んでた常連で、オレに【弾き】のコツを教えてくれた先生だ」

 とトルオンが笑顔で答える中、アレックスの方は、

(コイツ、王都ベードリッヒまできやがったのか。血は争えないな)

 と内心で呆れ果てた。

「アレックス先生、剣技を教えてくれ」

「オレの塾の授業料は高くてな。1月、金貨50枚だ。払えないなら諦めろ」

 断る為にアレックスは言い、

「ちょ、お祖父ちゃん、何、そのバカ高い授業料は?」

 孫のアリシアは驚いたが、トルオンは手切れ金に貰った魔物の素材で棚ボタの大金をせしめていたので、

「じゃあ、とりあえず10ヶ月分で」

 簡単にアイテムボックスから金貨500枚の入った皮袋を出したのだった。

「待て、トルオン。おまえ、この金、どうしたんだ?」

「ランクDの赤猪を倒したら胃袋の中からランクBの魔石が出て来て・・・」

「ギフト【ズッコケ】か?」

「あれ? オレのギフトの事、どうして知ってるんだ? 確かオレのギフトが発現した時にはもう先生は故郷に来てなかったと思ったけど?」

 トルオンが記憶を辿る中、

「おまえが冒険者になった後に村に出向いて聞いたんだよ。笑えるギフトだからその時、聞いたまでさ」

 そう強調して嘘の言い訳をしたアレックスだったが、

(父親と同じギフトでやっぱり幸運系か。こりゃ、バレたら王都が荒れるぞ)

 と舌を巻く中、

「まあいい。授業料が払えるなら剣技を教えてやろう」

 そうアレックスはトルオンの入門を認めたのだった。
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