嫌味なエリート治癒師は森の中で追放を宣言されて仲間に殺されかけるがギフト【痛いの痛いの飛んでいけぇ〜】には意外な使い方があり

竹井ゴールド

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1、追放と斬撃

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「マーク、おまえをこのパーティーから追放するっ!」





 冒険者パーティーのリーダーの勇者候補の剣士のアレクトロに突然言われて、

「? 何言ってるんだ、おまえ? 頭、大丈夫か?」

 名指しされた治癒師のマークは軽蔑よりも残念な子供を見るような顔でアレクトロを見た。

 ここは拠点として村から徒歩3時間の距離にある森の中。

 なのに、突然、こんな事を言い出したのだから。

 上級治癒師として王国に仕えるマークが優秀な頭脳で導き出した結論は、

「もしかしてオレの見てないところで、また変なキノコでも拾い食いしたのか、アレクトロ? これだからド田舎出身の村人あがりは。森に生ってる木の実やキノコや花の蜜の拾い食いは止めろ、とあれほど言ったのに。こんな男が勇者候補とは聞いて呆れるがろくみ、王国から派遣されてる身では仕方がない。てやるよ」

 マークは、やれやれ、とアレクトロの身体を心配したが、

「そういうトコだっ! おまえを追放する理由はっ!」

 アレクトロは怒り任せにビシッとマークを指差した。

「はん?」

「事ある毎に勇者候補のオレを村人あがりだとバカにしやがってっ! そもそも、おまえなんか仲間でも何でもねぇんだよっ! 王国がどうしてもって言うから一緒に居てやってるのにっ!」

「何を今更そんな分かり切った事を言ってるんだ、ド低能? おまえが勇者かどうかを王国が見定める為にオレが派遣されてるんだから、おまえの一存でオレを『追放』なんかには出来ないんだよ。理解したか、自分の立場を? なら進むぞ」

 とマークがいつものようにアレクトロに自分の立場を再認識させてから、目的地に向かって歩もうとした時、マークの背中に激痛が走った。

「グアアアア」

 悲鳴を上げたマークが背後に振り返ると、剣を抜いたアレクトロがニヤニヤ顔でマークを見ていた。

(ド低能の下民に斬られただと?)

 マークは理解した。

 治癒師のマークの装備は鎧ではなくてローブだ。

 アレクトロが持つ上等な剣だと一溜まりもない。

「何を・・・」

「追放出来ないなら死んだと報告するまでだ、へっへっへっ」

 アレクトロが狂人のような事を言う中、マークが注目したのは他の仲間達だった。

 魔術師ビキニととんがり帽子とマントの女魔術師のナーダ。

 神官ローブを纏った聖女のカサブランカ。

 2人とも斬られたマークを見ても驚いていない。

 それどころか、笑っていた。

 先頭を歩いてた重そうな鎧と盾と斧槍を持った戦士のバッカスも、

「おいおい、マジでやったのか、アレクトロ?」 

 と呆れてる。

(・・・・オレがやられる事を事前に知ってただと? まさか、こいつら)

 優秀なマークは瞬時に図式に気付き、

「・・・おまえら、まさか。王国から派遣されてるオレを謀殺する気か?」

「何を言ってる? おまえは魔物に敗北して死んだ事になるんだよっ!」

 アレクトロが笑って更に倒れてるマークの胸に剣を突き刺したのだった。

「グアア」

 悲鳴を上げながら、マークは、

(なるほど、その手があったか。意外に頭が回るじゃないか、下民にしては)

 とアレクトロが意外に悪知恵が働く事を称賛した。

「ゲフッ・・・・・・」

 血を吐いたマークが剣を抜いたアレクトロに、

「ハアハアハア・・・おまえ達、忘れてないか? オレの【ギフト】を?」

「【痛いの痛いの飛んでいけぇ~】か? そんなの治癒師の治癒魔法に補正が掛かるだけで全然役に立ってないだろうがよっ!」

 普段からマークにバカにされてて余程欝憤が溜まってたのか、アレクトロがマークを蹴る中、蹴られたマークは、





「ハアハア・・・・・・痛いの、痛いの、飛んでいけぇ~」





 そうギフトの名前を唱えたのだった。
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