27 / 29
白羽から平良へ
ヴァージンロードまでの下準備
しおりを挟む
◇
嘘のような話だが、
サンデー財団のビル・ネイビスとの会談の僅か3日後には本当に、白羽財閥が『名称を平良財閥に変更する』と発表した。
白羽財閥の規模が巨大過ぎる為、変更までの準備期間は1ヶ月。
8月下旬には平良財閥の誕生となる訳だ。
◇
そしてアリスはと言えば白羽家の大豪邸に舞い戻っていた。
大豪邸の喫茶室で、
「何をどうやったら白羽財閥の名前がアナタの名字の平良財閥になるのよ? 何をやったの、アナタ?」
叔母の朱橋レイコに詰め寄られている。
アリスが、
「知りませんよ。サンデー財団が・・・おっと通訳としての守秘義務があったんだっけ? なので詳しい事は言えませんが、私も名字を使われて正直不本意です」
「本当かしら? 内心で喜んでるんじゃないの?」
心外だとばかりにアリスが、
「そんな訳ないじゃないですか。不祥事が起こる度に私の名字が出るんですよ?」
「不祥事なんて起きないわよっ! 白羽財閥が母体なんだからっ!」
とツッコミを入れたレイコが、
「そもそもどうやってサンデー財団の通訳に潜り込んだのよ?」
「ジュン君の手紙1つで簡単に」
「ジュンが黒幕だってワケ?」
「いえ、ジュン君は企画立案だけですよ。その企画を買取った映画会社がサンデー財団という訳です」
「やれやれね。来週の8月の頭にバチカンでやるローマ教皇が神父役を務めるジュンとの結婚式も当然、サンデー財団の仕切りな訳ね?」
「そりゃそうでしょう。どうやったらローマ教皇様と連絡を取れるのか私には想像も付きませんもん」
「それは白羽本家出身の私も同じよ」
などとアリスはレイコと会話したのだった。
◇
同時刻。
まだ名前が白羽財閥の本社ビルの総帥室では総帥の学と総帥補佐の環が居た。
不満大爆発中の環が、
「本当にジュンをあの女と結婚させるの、総帥?」
エネルギーを無駄に撒き散らしていた。
対して学の方は、読み間違えた事で、明治から続く財閥名が変わる事に意気消沈しており、
「誰の所為でこんな大事になったと思っておるのだ?」
ジロリッと環を見た。
環が『我が意を射たり』とばかりに身を乗り出して、
「ジュンを誑かしたあの平良アリスとかいう庶民の所為でしょ?」
『この際、殺しちゃう?』と言葉を続ける前に、学が、
「違う。ジュンの教育をちゃんとしなかった母親のタマの所為だ」
「私? 冗談じゃないわ」
「ともかく、もう何もするなよ、タマ。サンデー財団は本気だからな」
「あら。私は何もしなくてよ」
と環が答えた瞬間、父親の学がピンときて、
「何をした、タマ? 分かってると思うが本当に馬鹿な事はするなよーー」
という言葉と同時に総帥室のドアが開き、ジュンがサンデー財団の外国人の黒服5人を引き連れて、
「これは悪の首魁のお2人がお揃いで。我が妻アリスを暗殺する御相談ですか?」
他人行儀な敬語で皮肉げに尋ね、
「はん? 何を言って・・・」
学の問いを無視して、
「サンデー財団って本当に凄いですよね? サンデー財団の庇護リストにアリスの名前を記しただけで暗殺依頼を受けた海外の一流の暗殺者や日本のヤクザがサンデー財団に『依頼があった』と通報してくるんですから」
とジュンが冷淡に2人に言った後、環をビシッと指差して、
「そんな訳で、サンデー財団法第4条、サンデー財団への庇護リスト者を害そうとした反逆罪で白羽環、おまえを逮捕するっ!」
刑事ドラマの刑事のように宣言した。
サンデー財団の外国人の黒服エージェントが環を捕縛する中、
「何を・・・警備は何をしてるのっ! 不審者よっ! 助けなさいっ!」
「安心して下さい、母上。医者に診断書を書かせて父上が入ってた施設に入れてあげますから」
冷徹にジュンが言い放ち、
「それが子供が母親にする仕打ちなの?」
「父上を隔離した母上と同じ事をしてるまでですよ。『総ては白羽家、しいては白羽財閥の全従業員の為』ってね。母上が居なくなれば総て丸く収まるんですから」
「何を言ってるの。私がどれだけ白羽財閥の為に・・・」
環の弁明にジュンが、
「はて? 勤続20年のトータルでは損失の方が多いはずですが? キリスト教圏での全事業がマイナス収支なのですから? 本当、どれだけ疫病神なんですか? 白羽家始まって以来の役立たずですよね、母上って」
「ジュン、アナタねぇぇぇっ! 私はアナタの為に・・・」
引きずられていく環が喚き散らすが、
「はいはい。一生『オレの為だ』と言ってて下さい。オレはオレで勝手に幸せになりますから」
ジュンは相手にせず、環は総帥室から連行されていった。
ドアが閉じるのを確認したジュンが総帥席に座る学を冷淡に見て、
「で? アリスの暗殺依頼に祖父様は噛んでるんですか?」
総帥室だからか、まだ敬語で他人行儀に尋ねた。
『敬語の方がジュンは迫力があるな』と思いながら学が、
「いいや」
「信じられないなぁ~」
ジュンは学を見た。
真意が読めないので本当に噛んでる可能性があるが証拠を残す程、馬鹿でもない。
「馬鹿な事はしないように。孫としてちゃんと忠告しましたからね」
「・・・本気でアリスと結婚するんだな?」
「今更、その質問? 本当にオレの話を聞いてないんだな、祖父様って」
ジュンは辟易と溜息を吐いたのだった。
そんな訳でこの日から白羽環は精神病を患って隔離施設に幽閉される事となったのだった。
嘘のような話だが、
サンデー財団のビル・ネイビスとの会談の僅か3日後には本当に、白羽財閥が『名称を平良財閥に変更する』と発表した。
白羽財閥の規模が巨大過ぎる為、変更までの準備期間は1ヶ月。
8月下旬には平良財閥の誕生となる訳だ。
◇
そしてアリスはと言えば白羽家の大豪邸に舞い戻っていた。
大豪邸の喫茶室で、
「何をどうやったら白羽財閥の名前がアナタの名字の平良財閥になるのよ? 何をやったの、アナタ?」
叔母の朱橋レイコに詰め寄られている。
アリスが、
「知りませんよ。サンデー財団が・・・おっと通訳としての守秘義務があったんだっけ? なので詳しい事は言えませんが、私も名字を使われて正直不本意です」
「本当かしら? 内心で喜んでるんじゃないの?」
心外だとばかりにアリスが、
「そんな訳ないじゃないですか。不祥事が起こる度に私の名字が出るんですよ?」
「不祥事なんて起きないわよっ! 白羽財閥が母体なんだからっ!」
とツッコミを入れたレイコが、
「そもそもどうやってサンデー財団の通訳に潜り込んだのよ?」
「ジュン君の手紙1つで簡単に」
「ジュンが黒幕だってワケ?」
「いえ、ジュン君は企画立案だけですよ。その企画を買取った映画会社がサンデー財団という訳です」
「やれやれね。来週の8月の頭にバチカンでやるローマ教皇が神父役を務めるジュンとの結婚式も当然、サンデー財団の仕切りな訳ね?」
「そりゃそうでしょう。どうやったらローマ教皇様と連絡を取れるのか私には想像も付きませんもん」
「それは白羽本家出身の私も同じよ」
などとアリスはレイコと会話したのだった。
◇
同時刻。
まだ名前が白羽財閥の本社ビルの総帥室では総帥の学と総帥補佐の環が居た。
不満大爆発中の環が、
「本当にジュンをあの女と結婚させるの、総帥?」
エネルギーを無駄に撒き散らしていた。
対して学の方は、読み間違えた事で、明治から続く財閥名が変わる事に意気消沈しており、
「誰の所為でこんな大事になったと思っておるのだ?」
ジロリッと環を見た。
環が『我が意を射たり』とばかりに身を乗り出して、
「ジュンを誑かしたあの平良アリスとかいう庶民の所為でしょ?」
『この際、殺しちゃう?』と言葉を続ける前に、学が、
「違う。ジュンの教育をちゃんとしなかった母親のタマの所為だ」
「私? 冗談じゃないわ」
「ともかく、もう何もするなよ、タマ。サンデー財団は本気だからな」
「あら。私は何もしなくてよ」
と環が答えた瞬間、父親の学がピンときて、
「何をした、タマ? 分かってると思うが本当に馬鹿な事はするなよーー」
という言葉と同時に総帥室のドアが開き、ジュンがサンデー財団の外国人の黒服5人を引き連れて、
「これは悪の首魁のお2人がお揃いで。我が妻アリスを暗殺する御相談ですか?」
他人行儀な敬語で皮肉げに尋ね、
「はん? 何を言って・・・」
学の問いを無視して、
「サンデー財団って本当に凄いですよね? サンデー財団の庇護リストにアリスの名前を記しただけで暗殺依頼を受けた海外の一流の暗殺者や日本のヤクザがサンデー財団に『依頼があった』と通報してくるんですから」
とジュンが冷淡に2人に言った後、環をビシッと指差して、
「そんな訳で、サンデー財団法第4条、サンデー財団への庇護リスト者を害そうとした反逆罪で白羽環、おまえを逮捕するっ!」
刑事ドラマの刑事のように宣言した。
サンデー財団の外国人の黒服エージェントが環を捕縛する中、
「何を・・・警備は何をしてるのっ! 不審者よっ! 助けなさいっ!」
「安心して下さい、母上。医者に診断書を書かせて父上が入ってた施設に入れてあげますから」
冷徹にジュンが言い放ち、
「それが子供が母親にする仕打ちなの?」
「父上を隔離した母上と同じ事をしてるまでですよ。『総ては白羽家、しいては白羽財閥の全従業員の為』ってね。母上が居なくなれば総て丸く収まるんですから」
「何を言ってるの。私がどれだけ白羽財閥の為に・・・」
環の弁明にジュンが、
「はて? 勤続20年のトータルでは損失の方が多いはずですが? キリスト教圏での全事業がマイナス収支なのですから? 本当、どれだけ疫病神なんですか? 白羽家始まって以来の役立たずですよね、母上って」
「ジュン、アナタねぇぇぇっ! 私はアナタの為に・・・」
引きずられていく環が喚き散らすが、
「はいはい。一生『オレの為だ』と言ってて下さい。オレはオレで勝手に幸せになりますから」
ジュンは相手にせず、環は総帥室から連行されていった。
ドアが閉じるのを確認したジュンが総帥席に座る学を冷淡に見て、
「で? アリスの暗殺依頼に祖父様は噛んでるんですか?」
総帥室だからか、まだ敬語で他人行儀に尋ねた。
『敬語の方がジュンは迫力があるな』と思いながら学が、
「いいや」
「信じられないなぁ~」
ジュンは学を見た。
真意が読めないので本当に噛んでる可能性があるが証拠を残す程、馬鹿でもない。
「馬鹿な事はしないように。孫としてちゃんと忠告しましたからね」
「・・・本気でアリスと結婚するんだな?」
「今更、その質問? 本当にオレの話を聞いてないんだな、祖父様って」
ジュンは辟易と溜息を吐いたのだった。
そんな訳でこの日から白羽環は精神病を患って隔離施設に幽閉される事となったのだった。
7
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
愉快な無表情クール系幼馴染にがんばって告白したら、強烈な一撃をもらった話
みずがめ
恋愛
俺には赤城美穂という幼馴染がいる。
彼女は無口無表情で愛想がない……というのが周りの奴らの印象だ。本当は悪戯好きで愉快な性格をしていて、そして何より繊細な女の子なのだと俺は知っている。
そんな美穂は成長していく度に美人になっていった。思春期を迎えた男子から告白されることが多くなり、俺は人知れず焦っていた。
告白しよう。そう決意した俺が行動を開始し、その結果が出るまで。これはそんなお話。
※他サイトでも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
守護神の加護がもらえなかったので追放されたけど、実は寵愛持ちでした。神様が付いて来たけど、私にはどうにも出来ません。どうか皆様お幸せに!
蒼衣翼
恋愛
千璃(センリ)は、古い巫女の家系の娘で、国の守護神と共に生きる運命を言い聞かされて育った。
しかし、本来なら加護を授かるはずの十四の誕生日に、千璃には加護の兆候が現れず、一族から追放されてしまう。
だがそれは、千璃が幼い頃、そうとは知らぬまま、神の寵愛を約束されていたからだった。
国から追放された千璃に、守護神フォスフォラスは求愛し、へスペラスと改名した後に、人化して共に旅立つことに。
一方、守護神の消えた故国は、全ての加護を失い。衰退の一途を辿ることになるのだった。
※カクヨムさまにも投稿しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる