【完結】「嘘告されるわよ」というショートメールがきて執着系の御曹司に溺愛されてた事に気付きました

竹井ゴールド

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白羽から平良へ

記者会見での暴露

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 翌日、白羽ジュンは婚約の記者会見をする破目になった。

 結婚ではなく婚約ごときで記者会見など大袈裟だと思うかもしれないが、白羽財閥の御曹司と龍前グループの令嬢の婚約なら会見は普通にありで、白羽ジュンと、17歳で黒髪ロングをアップにした着物姿の龍前ユキが並んで座り、多数集まった記者達の質問に答えていた。

 このテの記者会見は殆ど質問が事前に通達される訳で問題なく終わると思われたが、





「この時期の婚約になった経緯はどうしてでしょうか?」





 との会見終盤の記者のその質問に、ジュンが、

「それはボク(普段はオレだが、おおやけの場では17歳なのでボク)の所為ですよ」

 喋る度にカメラのフラッシュが焚かれる中、笑い話のように、

「実は子供の頃、モナコのホテルのレストランで現地で知り合った日本人の女の子とをした事がありましてね。そのレストランに十字架を首から下げてた外国のお爺さんが居て、頼んでしまったんですよ、神父役を。そのお爺さんも快く引き受けてくれたんですが。そしたら、何と翌日の現地の新聞に記事が載っちゃって。何でもボク達が神父役に頼んだ人がローマ教皇様だったらしくって。本当、人間が出来てますよね、子供の結婚ごっこに付き合ってくれるんですから、ローマ教皇様も。『結婚ごっこ』とは言え、ローマ教皇様が祝福を与えた相手と違う相手と婚約するんですから、白羽財閥が展開しているキリスト教圏の事業を総て撤退しても結婚したいと思う相手を探すのに手間取ってしまって」

 とジュンが言ったところで、司会進行役の白羽財閥の広報の社員が青ざめながら、

「と、途中ではございますが、ここで記者会見は終了とさせていただきます。本日は御足労いただきありがとうございました」

 との言葉と共に、会見緊急中断用のマニュアル通りに室内の照明が落とされて、黒服によってジュンは連れ出されたのだった。





 ◇





 11年前、モナコの5つ星ホテルのレストランにて。

 大人の真似をしてひざまずいたジュンが、





「アリスちゃん、大好きです、結婚して下さい」

「うん、いいよ。大きくなったら迎えに来てね、ジュン君」





 と子供ながらに結婚の約束をした訳だが、





 それには続きがあり、

 ジュンが愛を告げたすぐ隣の席で十字架を服の外側にぶら下げてるお爺さんが居り、

 6歳のアリスが片言のフランス語で、

「神父のお爺ちゃん、少しいいですか? プロポーズされたのでここで結婚式を挙げたいんですけど、神父をして貰って?」

 頼んで、周囲の大人全員が慌てて止めようとしたが、お爺さんが、

「いいですよ。これもしゅのお導きでしょう」

 と快く引き受けてしまい、誰も止めれず、

 本当にレストランでの簡易の結婚式ごっこで、

「誓います」

「誓います」

 子供2人は神父役の老人の前で愛を誓ったのだった。





 その神父役をした老人がローマ教皇だった為に、本当に翌日、ヨーロッパの各新聞に記事が掲載され、





 この幸運な日本人の子供のカップルの話は意外と海外では有名だった。





 ◇





 記者会見直後の白羽財閥の本社ビルの総帥室にて、





「やってくれたなぁ~、ジュンっ!」





 総帥の学が吠える中、

「何の事? 記者の質問に正直に答えただけだけど? 祖父様も『喋るな』と言わなかったでしょ?」

 ジュンがわざとキョトンとした顔をすると、

「あの時の神父役がローマ教皇だとジュンが気付いてると思わなかったからじゃよっ!」

 そう吠えた。

 実はその『結婚式ごっこ』は有名で学も知っていた。

 と言うか、そのレストランの場に学も居た。

 『大変な事になったぞ』と当時、学も思ったものだが、ジュンとアリスに改めて屋敷でそれとなく探りを入れるも、当人達は気付いた様子がなく『バレない』とタカをくくっていたのだが、結局はこんな事態になっていた。

 ジュンが記者会見で言ったような撤退はないと思うが、宗教が絡んだ以上、キリスト教圏での事業の規模の縮小はもう確定事項だろう。

「覚えてるに決まってるでしょ、恐れ多くて口にしなかっただけで」

 とジュンは言ったが、本当は覚えてもいなかった。

 アリスが大豪邸滞在中にイチャイチャしてる時に掌に書いた指文字で教えてくれて、半信半疑で確認したら本当で『使える』と記者会見で暴露した、という経緯だった。

「なら何故、記者会見で口にした? 損失は5000億では利かんのだぞっ! 分かってるのか?」

「5000億って円なの、ドルなの?」

「円に決まってるだろうがっ! ドルであってたまるかっ!」

「あっそ」

 とジュンが呟いた時、ノックとともにインテリ美人秘書がドアを開き、

「後にせい。今、大切なーー」

 学が追い出そうとしたが、本当に緊急事態だったので秘書が、

「国連の事務総長がたった今、記者会見で『日本の龍前グループがテロ支援国家に軍事転用可能機器を提供してる』と名指しで非難しました」

「はああああ?」

 と学が驚いた顔をする中、たった今、龍前ユキとの婚約会見を終えたばかりのジュンが、

「龍前? どこかで聞いた名前だな?」

 白々しく呟いたので、学が、

「・・・ジュン、おまえの仕業か?」

「まさかぁ~」

 と答えたジュンの声のニュアンスは『そうだよ、決まってるだろ』で、

「オレが生まれる前の20年前から軍事転用パーツを提供してるのに? ってか、本当に国連が非難するって知らなかったの、祖父様? 3日前から首相官邸はその件でホワイトハウスとずっと連絡を取り合ってたのに?」

「3日前・・・アリスちゃんを屋敷に連れ込んだ翌日か? ジュン、おまえ、最初から・・・」

「オレ、『あの女、嫌だ』って何度も伝えたんだけどね、みんなに? 誰も本気にしてくれないから」

 他人事ひとごとのように小指で耳をかっぽじりながらジュンは言った。

「これで終わりだよな?」

 学が探るように尋ねると、

「もちろんだよ」

 ジュンが嘘臭い笑顔で笑い、





「他に何をしたっ! 言えっ!」





 学が叫んだ。

「2週間後くらいに分かるんじゃない?」

「今教えろっ!」

「それよりもオレと龍前ユキの婚約の白紙撤回、早くお願いね。白羽財閥まで巻き添えで株価が下がったら大変だから。ああ、もう白羽財閥うちの海外事業関連の株は売られてるか」

 ジュンはそうひょうしたのだった。
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