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白羽から平良へ
白羽環の帰国とジュンの婚約発表
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その会話から10分としない内に白羽家の大豪邸の玄関前にヘリが着陸した。
ヘリから出てきたのは42歳のマダムだった。
ヘリのプロペラの風に長い茶髪と真っ赤なドレスと首からぶらさげた大きなダイヤモンドの首飾りを靡かせている。
白肌で、線は細め。
リップもマニキュアもヒールも真っ赤。
ジュンと似てなくもないが、気は強そうだった。
名前は白羽環。
ジュンの母親である。
そして拙い事に母親の環の方が白羽家の血筋だった。
その為、性格はわがままである。
白羽家の血筋の為、次代の総帥最有力候補でもある。
当然、白羽財閥の役職もあり、総帥補佐兼ニューヨーク支社長だった。
玄関でジュンやアリス、使用人達が出迎える中、
「その子がジュンを誑かした身の程知らずでいいのかしら?」
挨拶もなしにいきなりアリスをロックオンした。
好意さは微塵もない。
視線には見下した侮蔑しかなかった。
「初めまして、平良アリスです。よろしくお願いします、お義母様」
「アナタの名前なんて聞いてないわよ。それに気安くお義母様なんて呼ぶんじゃないわよ、庶民が」
「では、どう呼べばーー」
アリスが問おうとすると環が、
「呼ぶ必要はないわ。アナタは今からこの屋敷を出ていくのだから」
そう言い、ジュンが、
「何を言ってるんです、母上? 祖父様の了承は・・・」
「総帥には後でちゃんと言っておくわ」
「なら先に祖父様に言って・・・・・・」
「ダメよ。この子は今から帰るの。アナタの為よ、ジュン。いいわね?」
「そんなの承服出来・・・・・・」
そうジュンが環を睨んだ時、桐屋が背後から、
「ジュンお坊ちゃま。白羽財閥の広報部がジュンお坊ちゃまと龍前ユキ様の婚約を発表しております」
スマホを片手で映像を見せてきた。
本当に記者会見をやってる。
それもジュンの婚約発表の。
リアルタイムっぽい。
「はあ? 祖父様の了承もなしに何をやってるんだ?」
と叫んでから、ハッとしたジュンが環を見て、
「まさか、やらせたの、これ?」
質問すれば、堂々と、
「当然でしょ。今まで婚約を発表しなかった方がどうかしてたのよ。お陰でジュンにゲイ疑惑の噂までが広まってしまったんだから」
「・・・祖父様は了承したの? この婚約発表の事?」
「総帥の了承は後で貰うわ」
(ダメだ。やはり話が通じない)
ジュンが内心で心が折れそうになる中、
「そんな訳で、アナタには屋敷を出ていって貰うからね」
ビシッと環がアリスを指差し、
「はぁ~い」
とアリスが聞き分けの良い返事をした事で、ジュンが慌てて、
「ま、待って、アリス。嘘だよね?」
「ここまで嫌われたら無理よ、ジュン君。ちゃんと御家族を説得してから迎えにきてね」
アリスの言葉に環が、
「ジュンは迎えになんて行かないわよ。アナタとはここで一生のお別れなんだから」
それにはアリスも環の顔をマジマジと見て、
「それは少しジュン君の事を知らな過ぎるのでは?」
「あぁ~ら、アナタに何が分かるの? ジュンはちゃんと聞き分けるわ」
「聞き分ける訳ないでしょうがっ!」
ジュンが噛み付けば、環がアリスを指差して、
「あら、この子が交通事故に遭ってもいいの?」
真顔で言ったので、ジュンはゆっくりと眼を閉じて、
(それを実の母親が言うかっ! ・・・もういいや。オレも覚悟を決めた。とことんやってやるっ!)
眼を開いた時にはその内心の覚悟とは裏腹に、しれっと、
「わかったよ、母上。アリス、ゴメンね」
「いえいえ」
こうしてアリスは白羽家の大豪邸からリムジンで出ていったのだった。
だが、その後が少し妙だった。
アリスが白羽家から出たその足で向かった先が神奈川県の米軍基地だったからだ。
リムジンでの送迎はそこまで。
よってアリスの足取りはそこで完全に途絶える事になるのだった。
◇
ジュンの方は祖父、学が大豪邸に帰ってくるまで待てなかった。
よって白羽財閥の本社ビルの総帥室まで乗り込んでいた。
婚約発表後だったので、新聞社の数名にカメラを向けられる破目になったが。
それはともかく、総帥室にて、
「どういう事だよ、祖父様? アリスの事、認めてたんじゃなかったの?」
「うん。ああ、まあのう」
顎を触りながら学が言葉を濁す。
歯切れが悪いのは否定と同意だ。
「本音をどうぞ」
「言っていいのか? 不機嫌になるぞ?」
「もう怒ってるからね」
「じゃあ言うぞ。アリスちゃんの屋敷滞在はジュンが『ゲイなのか、そうでないのか』を確認する為に許しただけだ。それでジュンが女を愛せると分かったのでちゃんとした相手と婚約させようと思ってた矢先にタマが帰国して勝手に婚約発表してくれて『ラッキー、孫に嫌われずに済んだ』ってところだな」
その学の言葉にジュンは衝撃を受けながら、
「最初からオレとアリスを結婚させる気はなかった?」
「まあな。考えてもみよ。釣り合わんだろ、さすがに」
「釣り合わない。その程度の理由で・・・・・・」
ジュンが沸々と怒りを煮え滾らせながら、
「・・・よぉ~く分かったよ。アリスを屋敷に招いて有頂天になってたオレが如何に周囲が見えていなかったのかが」
と呟き、
(結局はアリスが正しかった訳か)
ヘリから出てきたのは42歳のマダムだった。
ヘリのプロペラの風に長い茶髪と真っ赤なドレスと首からぶらさげた大きなダイヤモンドの首飾りを靡かせている。
白肌で、線は細め。
リップもマニキュアもヒールも真っ赤。
ジュンと似てなくもないが、気は強そうだった。
名前は白羽環。
ジュンの母親である。
そして拙い事に母親の環の方が白羽家の血筋だった。
その為、性格はわがままである。
白羽家の血筋の為、次代の総帥最有力候補でもある。
当然、白羽財閥の役職もあり、総帥補佐兼ニューヨーク支社長だった。
玄関でジュンやアリス、使用人達が出迎える中、
「その子がジュンを誑かした身の程知らずでいいのかしら?」
挨拶もなしにいきなりアリスをロックオンした。
好意さは微塵もない。
視線には見下した侮蔑しかなかった。
「初めまして、平良アリスです。よろしくお願いします、お義母様」
「アナタの名前なんて聞いてないわよ。それに気安くお義母様なんて呼ぶんじゃないわよ、庶民が」
「では、どう呼べばーー」
アリスが問おうとすると環が、
「呼ぶ必要はないわ。アナタは今からこの屋敷を出ていくのだから」
そう言い、ジュンが、
「何を言ってるんです、母上? 祖父様の了承は・・・」
「総帥には後でちゃんと言っておくわ」
「なら先に祖父様に言って・・・・・・」
「ダメよ。この子は今から帰るの。アナタの為よ、ジュン。いいわね?」
「そんなの承服出来・・・・・・」
そうジュンが環を睨んだ時、桐屋が背後から、
「ジュンお坊ちゃま。白羽財閥の広報部がジュンお坊ちゃまと龍前ユキ様の婚約を発表しております」
スマホを片手で映像を見せてきた。
本当に記者会見をやってる。
それもジュンの婚約発表の。
リアルタイムっぽい。
「はあ? 祖父様の了承もなしに何をやってるんだ?」
と叫んでから、ハッとしたジュンが環を見て、
「まさか、やらせたの、これ?」
質問すれば、堂々と、
「当然でしょ。今まで婚約を発表しなかった方がどうかしてたのよ。お陰でジュンにゲイ疑惑の噂までが広まってしまったんだから」
「・・・祖父様は了承したの? この婚約発表の事?」
「総帥の了承は後で貰うわ」
(ダメだ。やはり話が通じない)
ジュンが内心で心が折れそうになる中、
「そんな訳で、アナタには屋敷を出ていって貰うからね」
ビシッと環がアリスを指差し、
「はぁ~い」
とアリスが聞き分けの良い返事をした事で、ジュンが慌てて、
「ま、待って、アリス。嘘だよね?」
「ここまで嫌われたら無理よ、ジュン君。ちゃんと御家族を説得してから迎えにきてね」
アリスの言葉に環が、
「ジュンは迎えになんて行かないわよ。アナタとはここで一生のお別れなんだから」
それにはアリスも環の顔をマジマジと見て、
「それは少しジュン君の事を知らな過ぎるのでは?」
「あぁ~ら、アナタに何が分かるの? ジュンはちゃんと聞き分けるわ」
「聞き分ける訳ないでしょうがっ!」
ジュンが噛み付けば、環がアリスを指差して、
「あら、この子が交通事故に遭ってもいいの?」
真顔で言ったので、ジュンはゆっくりと眼を閉じて、
(それを実の母親が言うかっ! ・・・もういいや。オレも覚悟を決めた。とことんやってやるっ!)
眼を開いた時にはその内心の覚悟とは裏腹に、しれっと、
「わかったよ、母上。アリス、ゴメンね」
「いえいえ」
こうしてアリスは白羽家の大豪邸からリムジンで出ていったのだった。
だが、その後が少し妙だった。
アリスが白羽家から出たその足で向かった先が神奈川県の米軍基地だったからだ。
リムジンでの送迎はそこまで。
よってアリスの足取りはそこで完全に途絶える事になるのだった。
◇
ジュンの方は祖父、学が大豪邸に帰ってくるまで待てなかった。
よって白羽財閥の本社ビルの総帥室まで乗り込んでいた。
婚約発表後だったので、新聞社の数名にカメラを向けられる破目になったが。
それはともかく、総帥室にて、
「どういう事だよ、祖父様? アリスの事、認めてたんじゃなかったの?」
「うん。ああ、まあのう」
顎を触りながら学が言葉を濁す。
歯切れが悪いのは否定と同意だ。
「本音をどうぞ」
「言っていいのか? 不機嫌になるぞ?」
「もう怒ってるからね」
「じゃあ言うぞ。アリスちゃんの屋敷滞在はジュンが『ゲイなのか、そうでないのか』を確認する為に許しただけだ。それでジュンが女を愛せると分かったのでちゃんとした相手と婚約させようと思ってた矢先にタマが帰国して勝手に婚約発表してくれて『ラッキー、孫に嫌われずに済んだ』ってところだな」
その学の言葉にジュンは衝撃を受けながら、
「最初からオレとアリスを結婚させる気はなかった?」
「まあな。考えてもみよ。釣り合わんだろ、さすがに」
「釣り合わない。その程度の理由で・・・・・・」
ジュンが沸々と怒りを煮え滾らせながら、
「・・・よぉ~く分かったよ。アリスを屋敷に招いて有頂天になってたオレが如何に周囲が見えていなかったのかが」
と呟き、
(結局はアリスが正しかった訳か)
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