【完結】「嘘告されるわよ」というショートメールがきて執着系の御曹司に溺愛されてた事に気付きました

竹井ゴールド

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白羽家と聖ミカエル女子大学高等部

転校生の通過儀礼『邸宅訪問』(そんなものはありません)

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 翌日もアリスはリムジンで聖ミカエル女子大学の高等部に通学した。

 正門を潜った校舎の3メートル手前でアリスがリムジンから降りると聖ミカエル女子大学の高等部に通学する女生徒全員の視線が集まった。

(目立ちたくなかったのに、ほら、目立ってる)

 アリスはしみじみと頭痛でもないのに人差指でこめかみを押さえ、

「いってらっしゃいませ」

「いってくるわね、長谷川さん」

 アリスはそう言ってさっさと校舎の玄関に入ったので知る由もないが、





 今日もリムジンは正門を出るのに手こずり、朝の通学渋滞の原因となったのだった。





 ◇





 2年4組の教室に入れば生徒が少なかった。

 疎らだ。

 というか、3人しかいなかった。

 その3人の女子達もアリスを遠巻きに見ているだけだ。

(どうしてこんなに生徒が少ないの? もしかして私と同じ教室の空気を吸うのも嫌で別の場所でたむろしている? でも、映像が流れたんだからもう私の冤罪は晴れたのよね? なのに、どうして嫌われてるの? あれ、もしかしてスクールカーストのトップ組から喋るなとか命令が出てる?)

 とズレた勘違いをしていた。





 因みに、女子3人が遠巻きなのはアリスが2年4組の女子を軒並み退学や停学にしたので引いてるだけで、





 どうして教室に生徒が少ないかと言えば2年4組はアリスを含み生徒は35人。

 その内、





 退学が8人。

 停学が(生徒指導室に行かなかっただけで無関係なのに停学になった生徒も居て)21人。





 出たからだ。





 つまり本日の2年4組の登校生徒数はアリスを数えても最大6人だった。





 ◇





 本日は1限目の授業を変更して、臨時の朝礼となった。

 とは言っても、記念堂や体育館に移動して椅子や床に座るのではない。

 ここは日本一のお嬢様学校の聖ミカエル女子大学の高等部だ。

 教室に座る生徒1人1人に支給されるタブレットにリアルタイムの高等部長の野村の顔が映り、

『御存知の生徒も居るかも知れませんが、2年4組で痛ましい出来事があり、複数の生徒が昨日付けで当校を去る事となりました』

 との話から始まって『つまらなぁ~』とアリスが思ってると、

『今回の件を受けて、まず長らく議論となっている校舎内に防犯カメラを設置するのは今回は保留と致します。代わりの再発防止策として、聖ミカエル女子大学高等部は校舎前のロータリーをリムジンでも円滑に通れるように拡張します。拡張工事は夏休みの期間中。生徒の皆さんはそれまでの間、リムジン通学は控えて下さいね。特例は認めません。2年4組の平良さん、アナタに言ってるんですからね。守って下さいね。本日の下校は許しますが、明日以降は2学期初日までリムジン通学はダメですからね』

「はぁ~い」

 と声に出して名指しされたアリスは答えたのだった。





 授業の合間の休み時間、アリスはどうにか他の5人の女生徒と仲良くなろうと頑張ったが、何故か5人全員が敬語でアリスに応対してきて上手くいかなった。

(どうして? ジュン君が裏で凄んだ? まさかね? 凄んでたらもっと露骨に私に媚びてくるはずだし。ならどうして?)

 アリスだけが不思議がった。





 ◇





 昼休み。

 友達作りに失敗したアリスは(5人全員が食堂なのか)教室で1人、虚しくメイドさんお手製の手作りお弁当(モデルスタイル維持バージョン)を食べていた訳だが、

 そこに3年生(上履きのゴムのカラーで判別)の女生徒5人がやってきた。

 アリスはその1人に見惚れた。

 茶髪の巻き毛ロングのファンタジー貴族令嬢の髪型だったからだ。

 同じ女子としてアリスには、この髪型にするのにどれだけの時間と手間が必要なのかをちゃんと理解しており、それで見惚れてしまったのだ。

 もはや『尊敬した』と言ってもいい。

 その髪型に。

 だが、自分でやったはずはない。

 複数人が手間を掛けてやったはずだ。

「平良さんね」

 そのファンタジー貴族令嬢ロールの3年の女子が声を掛けてきた。

「はい」

「単刀直入に聞くけど、アナタ、どこの誰なの?」

「はい? ただの庶民ですけど?」

「ただの庶民はリムジンになんか乗らないわよ」

 と白カチューシャの黒髪ロングの女子がツッコミ、ファンタジー貴族令嬢ロールの先輩が更に、

「平良アリス、アリス・J・タイラーの名前でパリコレに参加。母親は芸能人の平良アイナ。父親は既に他界し、実家はスポーツメーカーの創業者一族だけど縁が切られている芸能人の亜紋レイ。そこまではこっちも分かってるわ。でも、アナタのバックボーンはそれだけじゃないわよね? あのリムジンはどこから出てるの?」

「ええっと、日本の私の後見人にあの車に乗るように言われて。なんかお金持ちみたいで」

 そうアリスが答えると、黒髪ショートのインテリ眼鏡女子が、

「どこのお金持ちなの?」

「花井グループとか言ってました。部品メーカーだって」

 さらっと嘘をついたアリスの言葉でスマホを片手に調べて、

「もしかして、これ? でも年商30億よ?」

 仲間に見せた後、アリスにも見せてきた。

「さあ。興味がないので聞いてませんけど」

 ファンタジー貴族令嬢ロールの先輩が、

「そう。実は聖ミカエル女子大学の高等部に転校してきた生徒にはね、邸宅訪問という通過儀礼があるの」

「何ですか、それ?」

「前に成金娘が聖ミカエルに転校してきてね。そこまでなら良かったんだけど、麻薬を校内にばら撒いた事があって大惨事になったの。以来、学校とは別に自警的に代表生徒が転校生のお宅を確認する伝統が出来てしまってね。本当は転校初日の昨日にするはずだったんだけど、アナタ、冤罪を受けて午前中で帰っちゃったから」

 それを聞いたアリスは素直に、





(さすがは日本一のお嬢様学校ね、しっかりしてるわ)





 と関心してしまい、

「そういう事でしたら」

「じゃあ、こっちの2人が放課後、アナタのお宅を訪ねて、家の人に二、三質問するから。お願いね」

「わかりました」

 このような会話が交わされてしまった訳だが、2年4組に誰も居なかったので『そんな伝統なんてないわよ』とツッコむ生徒が居らず、





 またしても被害者が出てしまったのだった。
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