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ショートメール
アリス・J・タイラー
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茶髪ロングで化粧もバッチリの桃尻カレンが読者モデルをしてる雑誌の出版社に呼び出されたのは、ショウが学校から連行された当日の放課後だった。
つまりはアリスがキスされた翌日な訳だが、ハイブランドのスーツでビシッと決めた女編集長の上月が、
「カレン、アナタ、男に裸の写真を撮られて従わされてるの?」
真顔で質問してきた。
カレンが呆れながら、
「何ですか、それ?」
「今、バズってる『大鳳学園の淫行王子』よ」
「ああ。それは根も葉もないデマですよ」
とカレンは鼻で笑ったが、
「でも、この平良アリスって、アリス・J・タイラーの事よね?」
「誰ですか、それ?」
「パリコレの日本人モデルよ」
と言って、上月がノートパソコンを開いて画面を見せてくると、そこにはパリコレ用の化粧をしたアリスがパリコレのランウェイを歩いてる写真が何枚も出てきた。
最新の春夏のハイブランドを5着以上、纏っている。
「あの女、こんな事をしてたの?」
「知らなかったの?」
「はい」
動画もあるので見てみると、完璧な足取りでランウェイを歩いていた。
どう見ても、素人じゃない。
モデルの訓練を長時間受けたウォーキングだった。
パリコレに出場するだけあってモデル特有のオーラもある。
ロングの髪を卸しているので学校とは別人だ。
「なら隠してた訳ね」
「パリコレ出場をどうして隠すんです?」
『私なら自慢しまくるのに』とカレンが問うと、
「馬鹿な男につきまとわれない為でしょ? 淫行王子のような」
と評した上月が、
「それにしても読者モデルからパリコレモデルに鞍替えしようとした訳よね、カレンのカレ? ふん、ウチのカレンを舐めてるわね。ソイツとは別れなさい。いいわね」
と言われ、カレンは、
(ただのいつものキスだと思ったけど、本当に乗り換えられるつもりだったの? 信じられない、ショウの奴)
との怒りから、
「はい」
と二つ返事で別れる事を了承した。
「なら、SNSで別れるって報告するようにね。ファンが心配してるから」
「はぁ~い」
こうして、あっという間にカレンの方から一方的にSNSで『恋人と破局。原因は相手の浮気』と発表されたのだった。
大鳳学園の淫行王子はバズってたので、桃尻カレンとの破局は更なるゴシップニュースとしてに流布されたのだった。
◇
東京からフランスのパリまで往路だと13時間20分も掛かる。
よって朝9時に東京を出発したアリスは飛行機の中だった。
ファーストクラスにのんびりと座っていた。
母親が送ってきたエアチケットなので優雅に機内を満喫する。
その間、スマホなど一度も開かなかった。
◇
アリスとどうにかコンタクトを取ろうとした大企業ゴンドーの顧問弁護士団はようやくアリスのマンションの部屋の隣人から、
「『ママに呼ばれた』と言って出かけましたよ、今朝」
との情報を得た。
「ええっと、どちらへ」
『地方に出張か。面倒臭い』と思いながら質問すると、
「パリだって言ってたけど」
予想外の情報だったので思わず息を飲む破目になった。
◇
そんな訳でアリス本人との示談交渉は絶望的となった。
というか、ショウが告訴された事で大企業ゴンドーは平良アリスを調べ、パリに居るアリスの母親が平良アイナだった事まで調べ上げた。
平良アイナは、モデルで芸能人だった。
若い頃は日本でも人気があった。
今はフランスのパリに住む。
大企業ゴンドーが集めたデータベースには、フランス最大の軍需企業ジュスティスのCEOで、フランスの名門モンテール家の嫡流、フィリップ・モンテールの愛人の1人に納まっており、フィリップとの間にシングルマザーながら第2子目(アリスの異父弟)を儲けた、とあった。
お陰でカネには困っていない。
それどころか、交渉が難航してモンテール家が出てきたら面倒臭い事になる相手だという事までが分かった。
何せ、アイナの別れたクズ夫(つまりはアリスの実父)がパリまで金を集りに行って、ホテルの一室で恋人(日本人)と一緒に麻薬の過剰摂取でショック死しているくらいなのだから。
フランスの警察発表がそうで、もしかしたら本当にそうなのかもしれないが、疑って見れば殺されたと見えなくもない。
軍需企業を経営しているだけに、きな臭い死である事この上なかった。
かと言って、委任状を持つ善一郎の交渉にゴンドーの顧問弁護士が出向いても相手にされず、結局は大企業コンドーの会長でショウの祖父にあたる権藤章三が一郎と会う事になった。
挨拶を交わして、一郎がアリスの委任状を持ってる事を知った後に章三が頭を垂れて、
「この度は孫がとんだ事をしてしまいまして。どうにか示談にしていただけないでしょうか?」
「では示談金は1億円で」
しれっと一郎が言ってきた。
「キス以上の事はしていませんよね?」
章三は『キスごときで何を吹っかけてるんだ?』と内心で思っていながら、その事を億尾にも出さずに確認した。
「『高く付いた』とお孫さんに思わせなければいけませんからなぁ~」
「いや、しかし、1億円はさすがに・・・」
「では、示談の話はなかったという事で。意外にゴンドーも渋チンでしたな」
「・・・お待ちを。分かりました。払いましょう、2億円」
損得勘定ではなく、『勘』で章三は一郎の顔色を読んで言い放った。
一郎が意外そうに、
「ほう、倍ですか? よろしいので?」
「ええ、被害に遭ったお嬢さんに迷惑を掛けましたので」
「では、贈与税分もお願いします」
「ええ」
こうして章三が勘と大人力を見せて、どうにか示談に持ち込んだのだった。
この章三の判断は結論から言えば正しかった。
翌日に過去にショウにキスされた13人(全員、大鳳学園の卒業生)が集団訴訟をショウとショウを指導出来なかった大鳳学園に起こし、
更にその日発売の週刊誌に、ショウの父親で、権藤家に婿入りしてるトウヤのセクハラと隠し子2人が素っ破抜かれたのだから。
お陰で権藤家の名声は地に落ち、株価も一気に下がり始めた。
因みに、ショウの両親は隠し子がバレた3日後には正式に離婚したのだった(そしてショウの父親は入り婿だったので専務の地位を追われて孫会社に左遷させられた)。
つまりはアリスがキスされた翌日な訳だが、ハイブランドのスーツでビシッと決めた女編集長の上月が、
「カレン、アナタ、男に裸の写真を撮られて従わされてるの?」
真顔で質問してきた。
カレンが呆れながら、
「何ですか、それ?」
「今、バズってる『大鳳学園の淫行王子』よ」
「ああ。それは根も葉もないデマですよ」
とカレンは鼻で笑ったが、
「でも、この平良アリスって、アリス・J・タイラーの事よね?」
「誰ですか、それ?」
「パリコレの日本人モデルよ」
と言って、上月がノートパソコンを開いて画面を見せてくると、そこにはパリコレ用の化粧をしたアリスがパリコレのランウェイを歩いてる写真が何枚も出てきた。
最新の春夏のハイブランドを5着以上、纏っている。
「あの女、こんな事をしてたの?」
「知らなかったの?」
「はい」
動画もあるので見てみると、完璧な足取りでランウェイを歩いていた。
どう見ても、素人じゃない。
モデルの訓練を長時間受けたウォーキングだった。
パリコレに出場するだけあってモデル特有のオーラもある。
ロングの髪を卸しているので学校とは別人だ。
「なら隠してた訳ね」
「パリコレ出場をどうして隠すんです?」
『私なら自慢しまくるのに』とカレンが問うと、
「馬鹿な男につきまとわれない為でしょ? 淫行王子のような」
と評した上月が、
「それにしても読者モデルからパリコレモデルに鞍替えしようとした訳よね、カレンのカレ? ふん、ウチのカレンを舐めてるわね。ソイツとは別れなさい。いいわね」
と言われ、カレンは、
(ただのいつものキスだと思ったけど、本当に乗り換えられるつもりだったの? 信じられない、ショウの奴)
との怒りから、
「はい」
と二つ返事で別れる事を了承した。
「なら、SNSで別れるって報告するようにね。ファンが心配してるから」
「はぁ~い」
こうして、あっという間にカレンの方から一方的にSNSで『恋人と破局。原因は相手の浮気』と発表されたのだった。
大鳳学園の淫行王子はバズってたので、桃尻カレンとの破局は更なるゴシップニュースとしてに流布されたのだった。
◇
東京からフランスのパリまで往路だと13時間20分も掛かる。
よって朝9時に東京を出発したアリスは飛行機の中だった。
ファーストクラスにのんびりと座っていた。
母親が送ってきたエアチケットなので優雅に機内を満喫する。
その間、スマホなど一度も開かなかった。
◇
アリスとどうにかコンタクトを取ろうとした大企業ゴンドーの顧問弁護士団はようやくアリスのマンションの部屋の隣人から、
「『ママに呼ばれた』と言って出かけましたよ、今朝」
との情報を得た。
「ええっと、どちらへ」
『地方に出張か。面倒臭い』と思いながら質問すると、
「パリだって言ってたけど」
予想外の情報だったので思わず息を飲む破目になった。
◇
そんな訳でアリス本人との示談交渉は絶望的となった。
というか、ショウが告訴された事で大企業ゴンドーは平良アリスを調べ、パリに居るアリスの母親が平良アイナだった事まで調べ上げた。
平良アイナは、モデルで芸能人だった。
若い頃は日本でも人気があった。
今はフランスのパリに住む。
大企業ゴンドーが集めたデータベースには、フランス最大の軍需企業ジュスティスのCEOで、フランスの名門モンテール家の嫡流、フィリップ・モンテールの愛人の1人に納まっており、フィリップとの間にシングルマザーながら第2子目(アリスの異父弟)を儲けた、とあった。
お陰でカネには困っていない。
それどころか、交渉が難航してモンテール家が出てきたら面倒臭い事になる相手だという事までが分かった。
何せ、アイナの別れたクズ夫(つまりはアリスの実父)がパリまで金を集りに行って、ホテルの一室で恋人(日本人)と一緒に麻薬の過剰摂取でショック死しているくらいなのだから。
フランスの警察発表がそうで、もしかしたら本当にそうなのかもしれないが、疑って見れば殺されたと見えなくもない。
軍需企業を経営しているだけに、きな臭い死である事この上なかった。
かと言って、委任状を持つ善一郎の交渉にゴンドーの顧問弁護士が出向いても相手にされず、結局は大企業コンドーの会長でショウの祖父にあたる権藤章三が一郎と会う事になった。
挨拶を交わして、一郎がアリスの委任状を持ってる事を知った後に章三が頭を垂れて、
「この度は孫がとんだ事をしてしまいまして。どうにか示談にしていただけないでしょうか?」
「では示談金は1億円で」
しれっと一郎が言ってきた。
「キス以上の事はしていませんよね?」
章三は『キスごときで何を吹っかけてるんだ?』と内心で思っていながら、その事を億尾にも出さずに確認した。
「『高く付いた』とお孫さんに思わせなければいけませんからなぁ~」
「いや、しかし、1億円はさすがに・・・」
「では、示談の話はなかったという事で。意外にゴンドーも渋チンでしたな」
「・・・お待ちを。分かりました。払いましょう、2億円」
損得勘定ではなく、『勘』で章三は一郎の顔色を読んで言い放った。
一郎が意外そうに、
「ほう、倍ですか? よろしいので?」
「ええ、被害に遭ったお嬢さんに迷惑を掛けましたので」
「では、贈与税分もお願いします」
「ええ」
こうして章三が勘と大人力を見せて、どうにか示談に持ち込んだのだった。
この章三の判断は結論から言えば正しかった。
翌日に過去にショウにキスされた13人(全員、大鳳学園の卒業生)が集団訴訟をショウとショウを指導出来なかった大鳳学園に起こし、
更にその日発売の週刊誌に、ショウの父親で、権藤家に婿入りしてるトウヤのセクハラと隠し子2人が素っ破抜かれたのだから。
お陰で権藤家の名声は地に落ち、株価も一気に下がり始めた。
因みに、ショウの両親は隠し子がバレた3日後には正式に離婚したのだった(そしてショウの父親は入り婿だったので専務の地位を追われて孫会社に左遷させられた)。
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