20 / 39
ゾンビは既に死んでいる。リスカの悪魔はもう古い。時代はピパリスの銀雷だ
しおりを挟む
オレはあれだけ苦労して移動した道を戻るというマヌケな事をしてる訳だが。
何故かあれだけしつこく狙われた冒険者に一向に襲われなかった。
まさかのエンカウントなしの20日間。
その間に遭ったのは、街道を蜥蜴が引く車で進む行商人1人だけだった。
無論、美味しくいただいたがな。
先に行商人の車を発見して街道を塞ぐ形で倒れてたら、
「大丈夫ですか」
と降りて声を掛けてきてくれたから。
善意よりも通行の邪魔だから横に退けるのが目的だったと思うが。
後は、
「ヒィィ、ゾンビ、ギャアアアアア」
で終わりだ。
蜥蜴車には懲りてるので、その後、無人の蜥蜴車だけを進ませた。
運が良ければ行商人の物資を待つ集落まで到着するだろう。
別にオセンチなんかじゃない。
戦術的行動だ。
行商人が到着しなくて、調査の為に兵士や冒険者を放たれたら迷惑なだけだからな。
無理矢理、理由を付ければそうなった。
ゾンビだって善行を施す事もあるさ。
◇
安全に移動出来ると思ってたのも束の間。
前方から砂煙が上がってて、慌てて土を掘って地中に隠れれば、足音が長々と続いた。
会話も地中から確認。
「なあ、たったの2000人でピパリスの銀雷に勝てるのか?」
「喋るなって。上官に聞かれたら見せしめの鞭打ちだぞ」
「ピパリスの城を落とすなんてな」
「住民の1万人以上が3頭に喰われたんだろう?」
「聖郭の要塞も落としたらしい」
「2000人で勝てるのかよ?」
そんな会話が長々と続いた。
兵隊2000人らしき足音をやり過ごしたオレは土の中から身体を出した。
ピパリスがどこかは知らないが、1万人も喰らった魔物か。
相当、物騒だな。
オレへの追撃がないのはその為か。
オレは納得しながらゾンビポーズで移動したのだった。
◇
小さな村を発見した。
正確には跡だが。
外周を囲う煉瓦の塀の一部が崩れている。
村も人の気配がない。
オレは日中だったが構わずに崩れた塀から村に入った。
やはりもう遺棄された後で廃墟だった。
まだ潰れたてなのか真新しかったが。
他の魔物に先を越されたか。
早い者勝ちだから文句は言うまい。
オレは街を探索した。
欲しいのは地図だ。
最初に村を潰した時、愚かにも探さなかったからな。
兵の詰め所の中を探す。
壁にデカデカと貼られてあった。
手書きだったが、
ゾンビながらオレにも文字が読めた。
リスカは載ってなかったが、ピパリスの場所は分かった。
オレが燃やした森の横のデカイのがピパリスらしい。
なるほど。
あの街を落とした魔物か。
それは凶暴だな。
そして、もう1つ、新たな発見があった。
割れた鏡が床に落ちてたのだが、その割れた鏡に写ったオレの顔がゾンビ顔から少し人間臭くなっていたのだ。
禿げ散らかしてた金髪も少し増えてる。
何だ、これ?
人間を美味しくいただきまくってるから、人間の外見になってきた?
ふむ。
などと考えてると、外から、
「こっちこっち」
「待てよ、お兄ちゃん」
声が聞こえてきた。
子供が遊んでる?
逃げ遅れた?
・・・いや、この村にまだ隠れ住んでる人間が居るのか。
何人居るかは知らないが、なんていい連中だ。
オレに美味しくいただかれる為に残ってくれていたなんて。
子供達は兵舎の中までは探検に来なかった。
つまらん。
オレはこの村の人間を狩る事に決めた。
夜を待った。
村の中で明かりが灯った建物は3軒のみ。
遠慮なく片っ端から襲った。
窓の隙間から闇の手を発動。
おっ、黒い霧が時たま白い静電気を帯びてる。
何だ、これ?
暗闇で使用したら、モロ視認出来るだろ、これだと。
どうしてこんな仕様になったんだ?
前の方が断然、効率的だろ。
原因は何だ?
もしかしてあの白い翼持ちを一口美味しくいただいたからか?
まさかな。
逃げられないように3軒の人間を落としてトドメを刺して回ってから、計14人を美味しくいただき、村から旅立ったのだった。
◇
おっと、遂には冒険者達と遭遇した。
「野良の黒ボロを纏ったゾンビ? もしかして『リスカの悪魔』って奴か?」
「余裕だろ、こんなの。『ピパリスの銀雷』に比べたら?」
4人が襲い掛かってきた。
オレも随分と舐められたものだな。
斧男戦士に正面から肩を斬られ、爪攻撃で反撃して沈めた。
男僧侶が枕で顔を殴られ、爪攻撃で反撃して沈める。
2人を撃破。
残る女狩人と男魔術師が顔を見合せて驚くのに最後の時間を使ってくれたお陰で闇の手を放ち、2人を落として戦闘は呆気なく終了した。
何だ、新人か、コイツラ?
弱過ぎるな。
オレはその後、4人を美味しくいただいて移動を再開したのだった。
何故かあれだけしつこく狙われた冒険者に一向に襲われなかった。
まさかのエンカウントなしの20日間。
その間に遭ったのは、街道を蜥蜴が引く車で進む行商人1人だけだった。
無論、美味しくいただいたがな。
先に行商人の車を発見して街道を塞ぐ形で倒れてたら、
「大丈夫ですか」
と降りて声を掛けてきてくれたから。
善意よりも通行の邪魔だから横に退けるのが目的だったと思うが。
後は、
「ヒィィ、ゾンビ、ギャアアアアア」
で終わりだ。
蜥蜴車には懲りてるので、その後、無人の蜥蜴車だけを進ませた。
運が良ければ行商人の物資を待つ集落まで到着するだろう。
別にオセンチなんかじゃない。
戦術的行動だ。
行商人が到着しなくて、調査の為に兵士や冒険者を放たれたら迷惑なだけだからな。
無理矢理、理由を付ければそうなった。
ゾンビだって善行を施す事もあるさ。
◇
安全に移動出来ると思ってたのも束の間。
前方から砂煙が上がってて、慌てて土を掘って地中に隠れれば、足音が長々と続いた。
会話も地中から確認。
「なあ、たったの2000人でピパリスの銀雷に勝てるのか?」
「喋るなって。上官に聞かれたら見せしめの鞭打ちだぞ」
「ピパリスの城を落とすなんてな」
「住民の1万人以上が3頭に喰われたんだろう?」
「聖郭の要塞も落としたらしい」
「2000人で勝てるのかよ?」
そんな会話が長々と続いた。
兵隊2000人らしき足音をやり過ごしたオレは土の中から身体を出した。
ピパリスがどこかは知らないが、1万人も喰らった魔物か。
相当、物騒だな。
オレへの追撃がないのはその為か。
オレは納得しながらゾンビポーズで移動したのだった。
◇
小さな村を発見した。
正確には跡だが。
外周を囲う煉瓦の塀の一部が崩れている。
村も人の気配がない。
オレは日中だったが構わずに崩れた塀から村に入った。
やはりもう遺棄された後で廃墟だった。
まだ潰れたてなのか真新しかったが。
他の魔物に先を越されたか。
早い者勝ちだから文句は言うまい。
オレは街を探索した。
欲しいのは地図だ。
最初に村を潰した時、愚かにも探さなかったからな。
兵の詰め所の中を探す。
壁にデカデカと貼られてあった。
手書きだったが、
ゾンビながらオレにも文字が読めた。
リスカは載ってなかったが、ピパリスの場所は分かった。
オレが燃やした森の横のデカイのがピパリスらしい。
なるほど。
あの街を落とした魔物か。
それは凶暴だな。
そして、もう1つ、新たな発見があった。
割れた鏡が床に落ちてたのだが、その割れた鏡に写ったオレの顔がゾンビ顔から少し人間臭くなっていたのだ。
禿げ散らかしてた金髪も少し増えてる。
何だ、これ?
人間を美味しくいただきまくってるから、人間の外見になってきた?
ふむ。
などと考えてると、外から、
「こっちこっち」
「待てよ、お兄ちゃん」
声が聞こえてきた。
子供が遊んでる?
逃げ遅れた?
・・・いや、この村にまだ隠れ住んでる人間が居るのか。
何人居るかは知らないが、なんていい連中だ。
オレに美味しくいただかれる為に残ってくれていたなんて。
子供達は兵舎の中までは探検に来なかった。
つまらん。
オレはこの村の人間を狩る事に決めた。
夜を待った。
村の中で明かりが灯った建物は3軒のみ。
遠慮なく片っ端から襲った。
窓の隙間から闇の手を発動。
おっ、黒い霧が時たま白い静電気を帯びてる。
何だ、これ?
暗闇で使用したら、モロ視認出来るだろ、これだと。
どうしてこんな仕様になったんだ?
前の方が断然、効率的だろ。
原因は何だ?
もしかしてあの白い翼持ちを一口美味しくいただいたからか?
まさかな。
逃げられないように3軒の人間を落としてトドメを刺して回ってから、計14人を美味しくいただき、村から旅立ったのだった。
◇
おっと、遂には冒険者達と遭遇した。
「野良の黒ボロを纏ったゾンビ? もしかして『リスカの悪魔』って奴か?」
「余裕だろ、こんなの。『ピパリスの銀雷』に比べたら?」
4人が襲い掛かってきた。
オレも随分と舐められたものだな。
斧男戦士に正面から肩を斬られ、爪攻撃で反撃して沈めた。
男僧侶が枕で顔を殴られ、爪攻撃で反撃して沈める。
2人を撃破。
残る女狩人と男魔術師が顔を見合せて驚くのに最後の時間を使ってくれたお陰で闇の手を放ち、2人を落として戦闘は呆気なく終了した。
何だ、新人か、コイツラ?
弱過ぎるな。
オレはその後、4人を美味しくいただいて移動を再開したのだった。
0
お気に入りに追加
78
あなたにおすすめの小説
【北の果てのキトゥルセン】 ~辺境の王子に転生したので、まったり暮らそうと思ったのに、どんどん国が大きくなっていく件について~
次元謄一
ファンタジー
タイトル変更しました→旧タイトル 「デッドエンドキングダム ~十五歳の魔剣使いは辺境から異世界統一を目指します~」
前世の記憶を持って生まれたオスカーは国王の落とし子だった。父の死によって十五歳で北の辺境王国の統治者になったオスカーは、炎を操る魔剣、現代日本の記憶、そしてなぜか生まれながらに持っていた【千里眼】の能力を駆使し、魔物の森や有翼人の国などを攻略していく。国内では水車を利用した温泉システム、再現可能な前世の料理、温室による農業、畜産業の発展、透視能力で地下鉱脈を探したりして文明改革を進めていく。
軍を使って周辺国を併合して、大臣たちと国内を豊かにし、夜はメイド達とムフフな毎日。
しかし、大陸中央では至る所で戦争が起こり、戦火は北までゆっくりと、確実に伸びてきていた。加えて感染するとグールになってしまう魔物も至る所で発生し……!?
雷を操るツンデレ娘魔人、氷を操るクール系女魔人、古代文明の殺戮機械人(女)など、可愛いけど危険な仲間と共に、戦乱の世を駆け抜ける!
登場人物が多いので結構サクサク進みます。気軽に読んで頂ければ幸いです。
世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する
平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。
しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。
だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。
そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。
元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?
神様のミスで女に転生したようです
結城はる
ファンタジー
34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。
いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。
目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。
美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい
死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。
気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。
ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。
え……。
神様、私女になってるんですけどーーーー!!!
小説家になろうでも掲載しています。
URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」
序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた
砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。
彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。
そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。
死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。
その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。
しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、
主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。
自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、
寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。
結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、
自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……?
更新は昼頃になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる