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ゾンビは既に死んでいる。これまでの鬱憤を国境警備の要塞攻略で晴らす【前編】
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地中に潜み、地上で呑気に喋る連中の会話から集めた情報を日本人でも分かるようにアレンジすると、
キリスト教の総本山のローマ教皇が住むような国がファンタジーの世界にもあって、そんな国に汚らわしいゾンビなんかを侵入させたら、侵入させた側の国の恥なので何としても阻止したい。
となるらしい。
そんなにオレを仕留めたいのなら冒険者なんかに頼まず国が正規の兵士を派遣しろよな。
と内心で馬鹿にしてたら、
既に派遣されていた事が判明した。
どうやらオレが戦ってた連中は途中から冒険者に扮した騎士や宮廷魔術師の高弟達だったらしい。
ふざけるなよっ!
道理で強いはずだぜっ!
オレが一方的にやられてるんだからな。
何度、死に掛けたか。
首だってモゲてるんだぞ、こっちはっ!
ゾンビじゃなければ死んでるんだからなっ!
ゾンビは元々死んでるが、オレが言いたいのはそういう事じゃなくて。
ああ、もう。
悟れ。
滅茶苦茶ムカついてるって意味だよっ!
との怒髪天から、
よし、決めたっ!
聖マーケスト国なんて名前からしてゾンビのオレと相性が悪そうだから行くのを止めようと思ったが、嫌がらせであの国境を越えてやるっ!
こんな考えに至り、行動を開始したのだった。
オレも意外と知能指数が低いよな。
◇
日本の現代建築ではビルを建築する時、地下を掘って地盤を鉄筋コンクリートで固めるのが基本だが、
このファンタジー世界では地下まで固めない。
いきなり地面の上に城壁を建築している。
それはこれまでの村や街や修道院の塀から実証済みだ。
なので、余裕で越えれると地中を進んだが、敵もさるもの。
地中にまで煉瓦の壁があり、侵入を防いでいた。
チッ。
やるじゃないか。
煉瓦伝いに地中を更に掘り進めるが、結構深い。
途中で地中の煉瓦壁の更に下側を移動する方法は断念した。
土の重さで身動きが取れなくなる危険性を鑑みた為だ。
地中深くて身動きが取れずにジエンドとかはあり得ないからな。
だが、地中移動を諦めた訳じゃない。
城門の足元の地中までは固めてはないはずだ。
例え、石畳が敷かれていようともその下側を通過すれば楽々突破だ。
オレは地上から顔だけ出して城門の位置を探した。
んっ?
そして気付く。
城門がない事に。
そう言えば、遠めから白い城壁を見た時から門は無かったような。
えっ?
国境の城壁なのに門がない?
この場所からの通行は許さないって事か?
どれだけお高いんだ、聖マーケスト国って。
こうして無駄な戦闘を回避しての国境越えは断念したのだった。
と同時にオレは気を引き締めた。
この国境の白い城壁の上には兵士が1人も居なかったからだ。
城壁を建造したくらいなのだから、戦略的にもこの場所は意味があったはず。
なのに、誰も守っていない。
意味が分からない。
ーーいや、中国の万里の長城も有事の時以外は最小限の見張りだけだったろうし。
情報収集では無人な事を誰も話題にもしていなかった。
裏を返せば、誰も触れないくらいの常識って事か。
城門が無くて、兵士もゼロ。
逆に不気味だ。
ふむ。
警戒をするに越した事はないな。
◇
オレが次に眼を付けたのは白城壁の左右にある山だ。
夜になれば明かりが点る。
人が居る証拠だ。
明かりの数が多いのが左だったので、右に決めた。
この選択は、狡いからでも、逃げ腰だからでもない。
戦術的な観点からオレは選んでいた。
左側の山にはこの国、エスカン王国の赤旗が掲げられている。
対して右側の山が見知らぬ青旗が掲げられていた。
つまり、その青旗は塀の向こう側の聖マーケスト国の国旗だと簡単に予想出来た訳だ。
そりゃ、居るだろう。
国境なんだから。
向こう側の兵士も警備してるに決まってる。
そして、これまでのこの国の連中の必死さと情報収集の結果、どう考えても聖マーケスト国の方が格上だった。
その事実は、向こう側の兵士からしたら、この国境警備は左遷先という事を意味する。
左遷先に飛ばされて、やる気に満ちてる奴は居ない。
例え、最初はやる気を維持してても、すぐに無気力な奴の出来上がりだ。
士気が低い事が容易に予想出来た。
士気の低い兵士の相手なんて楽勝って事さ。
そう思って近付いた訳だが。
右の山は断崖絶壁の岩山だった。
いくらファンタジーでも素手で岩を掘る事など不可能だ。
いや、ゾンビだから出来るのか?
試しに岩山を素手で掘ってみた。
指先も通らない。
右手の中指の先が変な方向に折れただけだった。
やはり無理か。
どうして出来ると思ったんだか。
30秒前の自分に呆れて仕方がないな。
岩山を掘って移動する事を断念したオレは登れる場所を探したが、
驚くべき事に、この岩山には階段すらなかった。
断崖絶壁が続く。
グルッと確認した。
オレが居た南側の白い城壁から岩山の縁の地中を移動して、北側に更に存在した白い城壁まで、こちら側全部を。
本当に階段が1つもなかった。
『階段がない』という事実は、岩山の連中は『こちら側に降りる気が一切ない』というその意思表示だった。
こちらの国を見下してるのか?
気位が高過ぎるだろう。
どれだけお高くとまってるんだか。
となると、断崖絶壁の岩山を無理矢理登るしかない訳だが、そんな事、ロッククライミングの選手ならともかくゾンビには無理だ。
いや、可能か?
夜なので試してみたが、やはり無理だった。
どうしてオレはこんな無駄な事ばかりを試してしまうんだ?
もしやゾンビになってオレの知能指数が落ちてる?
いや、失敗する経験も大切だ。
無駄な事は1つもしてないと胸を張ろう。
以上の事から、
右の山側は、侵入が不可能な事だけが分かった。
他には何の収穫も得られなかったがな。
◇
仕方なく数日掛けて、地中の道を掘り進めて左側の山に移動した。
左側の山は土山だった。
この国の連中、可哀想にな。
良い方の山を取られるなんて、向こう側の連中に相当、侮られてるぞ
同時に、こちらの山は異常なまでに警備が厳重だった。
城壁は平地と山の境、山の中段、山の上段と3つもある。
施設は上段に3、中段に5、下段に7、平地の城壁の外側にも1。
はっきり言って山全体が要塞だった。
兵士の数は500人は居る。
何だ、この厳重さは?
意味が分かんぞ。
こんな通行者も来ない国境警備に500人も配置って。
ふん。
行き掛けの駄賃だ。
この要塞を落としていくか。
オレは地中を掘り進めて城塞へと進んだ。
キリスト教の総本山のローマ教皇が住むような国がファンタジーの世界にもあって、そんな国に汚らわしいゾンビなんかを侵入させたら、侵入させた側の国の恥なので何としても阻止したい。
となるらしい。
そんなにオレを仕留めたいのなら冒険者なんかに頼まず国が正規の兵士を派遣しろよな。
と内心で馬鹿にしてたら、
既に派遣されていた事が判明した。
どうやらオレが戦ってた連中は途中から冒険者に扮した騎士や宮廷魔術師の高弟達だったらしい。
ふざけるなよっ!
道理で強いはずだぜっ!
オレが一方的にやられてるんだからな。
何度、死に掛けたか。
首だってモゲてるんだぞ、こっちはっ!
ゾンビじゃなければ死んでるんだからなっ!
ゾンビは元々死んでるが、オレが言いたいのはそういう事じゃなくて。
ああ、もう。
悟れ。
滅茶苦茶ムカついてるって意味だよっ!
との怒髪天から、
よし、決めたっ!
聖マーケスト国なんて名前からしてゾンビのオレと相性が悪そうだから行くのを止めようと思ったが、嫌がらせであの国境を越えてやるっ!
こんな考えに至り、行動を開始したのだった。
オレも意外と知能指数が低いよな。
◇
日本の現代建築ではビルを建築する時、地下を掘って地盤を鉄筋コンクリートで固めるのが基本だが、
このファンタジー世界では地下まで固めない。
いきなり地面の上に城壁を建築している。
それはこれまでの村や街や修道院の塀から実証済みだ。
なので、余裕で越えれると地中を進んだが、敵もさるもの。
地中にまで煉瓦の壁があり、侵入を防いでいた。
チッ。
やるじゃないか。
煉瓦伝いに地中を更に掘り進めるが、結構深い。
途中で地中の煉瓦壁の更に下側を移動する方法は断念した。
土の重さで身動きが取れなくなる危険性を鑑みた為だ。
地中深くて身動きが取れずにジエンドとかはあり得ないからな。
だが、地中移動を諦めた訳じゃない。
城門の足元の地中までは固めてはないはずだ。
例え、石畳が敷かれていようともその下側を通過すれば楽々突破だ。
オレは地上から顔だけ出して城門の位置を探した。
んっ?
そして気付く。
城門がない事に。
そう言えば、遠めから白い城壁を見た時から門は無かったような。
えっ?
国境の城壁なのに門がない?
この場所からの通行は許さないって事か?
どれだけお高いんだ、聖マーケスト国って。
こうして無駄な戦闘を回避しての国境越えは断念したのだった。
と同時にオレは気を引き締めた。
この国境の白い城壁の上には兵士が1人も居なかったからだ。
城壁を建造したくらいなのだから、戦略的にもこの場所は意味があったはず。
なのに、誰も守っていない。
意味が分からない。
ーーいや、中国の万里の長城も有事の時以外は最小限の見張りだけだったろうし。
情報収集では無人な事を誰も話題にもしていなかった。
裏を返せば、誰も触れないくらいの常識って事か。
城門が無くて、兵士もゼロ。
逆に不気味だ。
ふむ。
警戒をするに越した事はないな。
◇
オレが次に眼を付けたのは白城壁の左右にある山だ。
夜になれば明かりが点る。
人が居る証拠だ。
明かりの数が多いのが左だったので、右に決めた。
この選択は、狡いからでも、逃げ腰だからでもない。
戦術的な観点からオレは選んでいた。
左側の山にはこの国、エスカン王国の赤旗が掲げられている。
対して右側の山が見知らぬ青旗が掲げられていた。
つまり、その青旗は塀の向こう側の聖マーケスト国の国旗だと簡単に予想出来た訳だ。
そりゃ、居るだろう。
国境なんだから。
向こう側の兵士も警備してるに決まってる。
そして、これまでのこの国の連中の必死さと情報収集の結果、どう考えても聖マーケスト国の方が格上だった。
その事実は、向こう側の兵士からしたら、この国境警備は左遷先という事を意味する。
左遷先に飛ばされて、やる気に満ちてる奴は居ない。
例え、最初はやる気を維持してても、すぐに無気力な奴の出来上がりだ。
士気が低い事が容易に予想出来た。
士気の低い兵士の相手なんて楽勝って事さ。
そう思って近付いた訳だが。
右の山は断崖絶壁の岩山だった。
いくらファンタジーでも素手で岩を掘る事など不可能だ。
いや、ゾンビだから出来るのか?
試しに岩山を素手で掘ってみた。
指先も通らない。
右手の中指の先が変な方向に折れただけだった。
やはり無理か。
どうして出来ると思ったんだか。
30秒前の自分に呆れて仕方がないな。
岩山を掘って移動する事を断念したオレは登れる場所を探したが、
驚くべき事に、この岩山には階段すらなかった。
断崖絶壁が続く。
グルッと確認した。
オレが居た南側の白い城壁から岩山の縁の地中を移動して、北側に更に存在した白い城壁まで、こちら側全部を。
本当に階段が1つもなかった。
『階段がない』という事実は、岩山の連中は『こちら側に降りる気が一切ない』というその意思表示だった。
こちらの国を見下してるのか?
気位が高過ぎるだろう。
どれだけお高くとまってるんだか。
となると、断崖絶壁の岩山を無理矢理登るしかない訳だが、そんな事、ロッククライミングの選手ならともかくゾンビには無理だ。
いや、可能か?
夜なので試してみたが、やはり無理だった。
どうしてオレはこんな無駄な事ばかりを試してしまうんだ?
もしやゾンビになってオレの知能指数が落ちてる?
いや、失敗する経験も大切だ。
無駄な事は1つもしてないと胸を張ろう。
以上の事から、
右の山側は、侵入が不可能な事だけが分かった。
他には何の収穫も得られなかったがな。
◇
仕方なく数日掛けて、地中の道を掘り進めて左側の山に移動した。
左側の山は土山だった。
この国の連中、可哀想にな。
良い方の山を取られるなんて、向こう側の連中に相当、侮られてるぞ
同時に、こちらの山は異常なまでに警備が厳重だった。
城壁は平地と山の境、山の中段、山の上段と3つもある。
施設は上段に3、中段に5、下段に7、平地の城壁の外側にも1。
はっきり言って山全体が要塞だった。
兵士の数は500人は居る。
何だ、この厳重さは?
意味が分かんぞ。
こんな通行者も来ない国境警備に500人も配置って。
ふん。
行き掛けの駄賃だ。
この要塞を落としていくか。
オレは地中を掘り進めて城塞へと進んだ。
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