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ゾンビは既に死んでいる。ゴブリンどもを隠れ蓑にするも戦術的撤退を余儀なくされる

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 森と村跡を縄張りにしてるオレの日課は、冒険者狩りである。

 実は村跡に流れてきたゴブリン連中が住み付いてな。

 それの退治に冒険者が訪れる訳だが。

 ゴブリンが駆逐されたら、次には森のゾンビのオレなので出張サービスをしてる訳さ。

 冒険者連中はマニュアルでもあるのか、本当にワンパターンの連中でな。

 まず夜襲はしない。

 ゴブリンは夜目が利くから。

 なので、決まって村の一定の距離で夜営を張る。

 そこを襲うのだ。

 オレの新たな特殊能力で手を翳すと、黒い霧が出て、近距離5メートル圏内だったら気絶させる事が出来る。

 もうその周辺の地面の中には道が山ほどあるので、冒険者達が寝てる隙に地面から手だけを出して見張りを眠らせて、更には他の連中を眠らせれば戦闘など必要もない。

 男どもを美味しくいただいたのだった。

 冒険者の女どもは両手両足の骨を折ってゴブリンにくれてやった。





 ◇





 村跡のゴブリンだが、元々、女を数人所有していた。

 更にはオレが冒険者の女達を十数人くれてやっている。

 なので、エロ漫画と同様に本当に孕ませてゴブリンは数を増殖していた。

 流れてきた時は20匹くらいだったが、もう160匹まで増殖している

 大所帯だ。

 明らかに雑魚ゴブリンとは違う連中も居る。

 杖を持ったり、弓を持ったり、と。

 ゴブリンの事はオレは結構詳しいんだぜ。

 同人誌から元ネタを辿ってだが。

 確か、ゴブリン呪術師、ゴブリン狩人って奴だろう。

 ムキムキマッチョはチャッピオンって奴だ。

 まあ、それでも所詮はゴブリンだから、調べた元ネタの小説ではあっさりと負けてたがな。





 さて。

 他にも色々と妙な事が起こり始めた。

 森で食い散らかした冒険者の遺体の中からスケルトンが出現したのだ。

 スケルトンってのはガイコツの兵隊だ。

 8体も居た。

 どうなってるんだ?

 原理が一向に分からん。

 ゾンビは居ないみたいだが。

 まあ、ゾンビ仲間なんてオレは要らないがな。





 ◇





 村が落ちて何日が経過しただろうか。

 遂には兵隊がやってきた。

 200人規模だ。

 ゴブリンはこの時、230匹だった訳だが。

 妙な事が起こった。

 ゴブリンの中に軍師でも居たのか、結論から言えば兵隊達がゴブリン軍団に敗けたのだ。

 落とし穴。

 毒矢に毒刃。

 呪術師の睡魔魔法。

 狼に騎乗したゴブリンライダーなんてのも居て。

 兵士の数が30人となったところで、

「退け退けっ!」

 と撤退していった。

 ゴブリンは数を50匹まで減らしていたが、生き残ったゴブリン達は歓声を上げて勝利を喜んでおり、





 ゴブリンは死体なんかに興味がないので、オレが150人以上の死体を美味しくいただきました。





 ◇





 後々、考えてみれば、これが拙かった。





 何せ、僅か10日後には冒険者の精鋭300人が送り込まれてくるのだから。





 兵士達は魔法が使えないが、冒険者の中には魔法が使える奴が居た。

 それにゴブリンとの戦闘にも慣れてる。

 戦場で真正面から戦うような戦法は取らない。

 音も立てずに近付いて先制攻撃の一撃必殺。

 敗走して釣り出して開けた場所での矢や魔法の一斉攻撃。

 そもそもゴブリンは数を50匹まで減らしている。

 300人が相手では勝負にならなかった。

 生き残ったゴブリン10匹程が村跡から敗走。

 それで終わりだ。





 問題はゴブリンの巣で保護された女達だった。

「ゾンビよ、アイツがゴブリン達を操ってたわ」

「私もゾンビに両腕と両足を折られたのよ」

 なんて言いやがって、

「ゾンビ? ああ、『歩兵殺しポーン・キラー』か。そう言えばアイツも居たっけ?」

 冒険者どもも喋ってて、村跡の地面の道の中でその話を聞いていたオレは、住み慣れた縄張りからの戦術的撤退を余儀なくされたのだった。





 だがオレはゾンビだ。

 なので、歩くのが遅い。





 闇夜に紛れて山側に逃げたのだが、冒険者どもに発見された。

 どうやらゴブリン同様、オレも相当怨みを買っていたようだ。

 夜中なのに追撃してきやがった。

 それも1組じゃない。

 70人程が。

 先行してたので山の中腹までは何とか逃げれたが、その時に矢が肩に直撃した。

 先頭の奴はもう矢が届く距離まで接近してきたのかよ。

 他の連中に追い付かれるのも時間の問題だな。

 年貢の納め時って奴か。

 ・・・いや、まだ方法はある。





 必殺、潜水、川流れってね。





 森の泉で試したんだが、オレは息を吸わなくても大丈夫らしいからな。

 オレは覚悟を決めると、山の中を流れる川にドボンッと飛び込んで、川の流れに身を委ねて流されたのだった。

 死んでるから呼吸なんてしなくて済むし楽チンだぜ。

 こうしてオレは冒険者の追撃の手から逃れたのだった。
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