異世界転生したら両腕を前に上げてノロノロ歩くゾンビだった

竹井ゴールド

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【閑話】リスカの村

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 エスカン王国の東部のリスカの村の雰囲気は最悪だった。

 理由はリスカの森にある。

 リスカの森とは比較的安全な森で冒険者ギルドの新人が薬草採取などのクエストを受けるのに適した場所だったのだが。

 いつ頃からかゾンビが住み付き、新人冒険者を殺しまくっていた。

 冒険者ギルドは当初は『変だな』『ゴブリンにでも負けたのか』程度の認識で、中堅の冒険者に依頼したら、1人だけが命辛々逃げてきて、

「メチャ強のゾンビが1匹いたぞ、あの森に? オレの仲間は全滅だ。オレはたまたま別に行動だったから隠れて見たが・・・洒落にならないぞ、あのゾンビ」

 と報告を受けて、そのゾンビに『新人殺しルーキー・キラー』の名前が付けられた。

 その後、数組の冒険者を雇うが全滅。

 一流冒険者も2人が死亡し、逃げ帰った2人が、

「オレ達では無理だ。討伐を領主に頼め」

 との報告で、遂には領主に頼んだのだが、1度目の討伐隊の遠征では『新人殺しルーキー・キラー』は居らず、

「移動したのだろう」

 との言葉を信じて、新人を森に出迎せたら、

「ゾンビが居た」

 泣きながら2人が帰ってきて、また領主に頼むも2度目の討伐隊は、

「おい、あれを見ろよ」

 リスカの村に討伐隊が逃げ帰ってきていた。

 30人以上居たはずなのに生還者は10人。

 つまりは負けたって事だ。

 その事実を住民が知り、リスカの村の雰囲気は最悪になってる訳だ。

 冒険者ギルドの長は本部に頼むも、ゾンビ1体の討伐に本気で出向く凄腕の冒険者は居ない。

 討伐隊の敗北で領主がやっと賞金を懸けてくれて、名前が『新人殺しルーキー・キラー』から『歩兵殺しポーン・キラー』になったのだった。

 それでも賞金の額は少額だ。

 この額では一流の冒険者が動く事はない。

 リスカの森に居付いたゾンビが退治されるのはいつになる事か。
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