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アポリス王国鮫覇編
3日目は巨大マーマン
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その日の夜だ。
またドアがノックされた。
新婚なのに三夜連続でベッドインの最中にドアの外から、
「陛下、王配殿下、起きて下さい。10メートル級の二足歩行のマーマンが西部地方のジムーズ海沿岸のジェジェンに出たとの報告です」
その報告を受けても、
「もう無視よ、無視。いいわね、アラン」
「そうだね」
チュッチュを続行してたら、不意にドアが開き、
「失礼します」
親衛隊長のルナレシアさんが1人寝室に入ってきた。
それには、
「嘘だろ」
「――ちょ、ルナ。部屋から出なさい。今すぐに」
オレとアンリが驚く中、ルナレシアさんも礼儀としてベッドに居るオレ達には視線を向けず、
「緊急事態なので服を着て下さいますように」
そう一礼して部屋から出たのだった。
「室内は暗かったけど、こっちが視えたと思う?」
「凄く赤面してたからね。視えてたね、あれは」
「信じられない。見られるなんて」
「同感」
ってか、勤勉なる我が透明分身2体が一切排除に動かなかったし~。
害意がなかったからか?
意外と使えないな、透明分身も。
ってか、見られたから~。
ああ~、マジか~。
何か大切な物を失った気がする~。
オレとアンリはゲンナリしながら、仕方なくイチャイチャを止めて着替えると、重臣達が集まってる部屋へと出向いたのだった。
痴態を見られてテンションがダダ下がり、今回は外出する元気のないアンリが、
「兵を派遣してそのモンスターを倒しなさい」
「はっ」
「では頼んだわよ」
「今夜は遠征されないのですか、陛下?」
「気分が乗らないからいいわ」
アンリが答え、
「王配殿下も?」
「うん。アンリを連れ戻す為に追い掛けてただけだから」
オレもテンションだだ下がりなので外出する気分じゃなかったから、そう元気なく答えた。
「そうですか」
何、そのリアクション?
バジーナード宮殿を勝手に抜け出したら怒る癖に戦力としては期待してた?
勘弁してくれ。
こうしてアンリとオレは出撃せずーー
2日前のスタンピードを持ち越えた城塞都市ジェジェンはその巨大なマーマンに敗北して陥落したのだった。
◇
翌日の評議で、アンリが、
「飛獣部隊300輪が全滅ってっ! 余とアランが出撃しなければこの結果か? 何がマチルダーズ連合を攻めるだっ! こんな弱兵のアポリス王国が大国エマリス帝国と隣接するなんて冗談じゃないっ! マチルダーズ連合への遠征は白紙とするっ! まずはジェジェンを陥落させてジムーズ海に逃げたとかいう巨大マーマンを倒せっ! いいなっ!」
憤怒と共に男言葉で命令していた。
オレも同感だ。
逃げられたじゃなくて敗北って~。
弱過ぎでしょ~。
その後もしばらくの間アンリの激怒は続いたのだった。
廊下を移動中にメーズ宰相がオレだけを呼び止めて、
「少しよろしいでしょうか、王配殿下?」
別室で2人っきりになった後、
「どうして昨夜は抜け出されなかったのでしょうか?」
あれ、どうしてオレに聞くんだ?
アンリに聞けよ。
そもそも昨夜の事を一部始終ペラペラ喋ったらオレがアンリに怒られる案件だよな、あれって?
なので、オレも、
「さあ? アンリ様の決定に従ったまでですから。昨日は昼間が空振りでしたし、疲れてたのかも」
すっとぼけておいた。
「昨日だけで2000人以上が死んでるのですが?」
「ええ、報告を読みました。もし本当にアポリス王国が弱兵ならばマチルダーズ連合の侵攻は止めた方がいいと思いますよ」
「いえ、そうではなく緊急時の出動の事なのですが」
「アンリ様に直接お聞きください、それは。アンリ様の内面に関わる事ですので」
「畏まりました。呼び止めて申し訳ございませんでした」
オレに話しても無駄だと判断したのかメーズ宰相はそう話を切り上げて部屋を出ていったのだった。
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