オレはスキル【殺虫スプレー】で虫系モンスターを相手に無双する

竹井ゴールド

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アポリス王国婚姻編

女王の結婚は色々とあって大変

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 結婚が終わるとオレと女王様は白毛の狼2匹が引く屋根のない車に乗せられて、宮殿から王都バジーナードの表通りをパレードする事となった。

 民衆達がオレ達の結婚を祝福している。

 まあ、オレじゃなくて女王様に、なのだが。

 オレも歓声に手を振って応えた。

「どう、皆に祝福されてる感想は?」

「全員アンリ様を見てるな~と」

「当然でしょ。結婚式の主役は花嫁なのだから」

「確かに」

「ちゃんと尽くすのよ」

「無論、今まで通りに」

「今まで以上よ」

「は~い」

 などと喋りながら、手を振って応えていたら、周囲の護衛が少々慌ただしくなった。

 少し真面目な顔で緊張してて、オレはすぐに気付いたが、女王様も遅蒔きに気付いて、

「ルナ、何かあったの?」

 第1親衛隊長のルナレシアさんに質問すると、

「・・・いえ、陛下が気にされるような事では」

 それだと隠してるとモロバレで、

「言え、ルナ」

 女王様の不機嫌な男言葉に観念して、

「ハーピーが2匹、王都バジーナードに接近中との事でーー」

「ふん、余の結婚式に乱入とは。必ず血祭りにあげよ。よいな」

「それが苦戦してるようでして」

「あれの事?」

 オレが空を指差すと、本当にハーピーが2匹接近していた。

 飛獣に乗った魔法騎士達が迎え撃ってるが勝負にならない。

 というか、身体を炎化と雷化してたし。

 またかよっ!

「アラン、夫としての最初の務めだ。倒せ」

「あんなのが最初の務め?」

「口答えしない」

「はっ、アンリ様」

 女王様の指図で、

「聖なる光よ、4本の矢となり我が敵を倒せ、聖なる矢」

 coldスプレーでコーティングした聖矢魔法を上空に放った。

 距離は5キロ以上。

 距離があり過ぎたのか、雷化してたハーピーには直撃したが、炎化の方は何とか回避して、そのまま魔法を放って仲間を倒した地上の術者、つまりはオレに突進してきた。

 愚かなり。

 1射目を避けれた幸運を逃亡に使わないなんて。

「聖なる光よ、40本の矢となり我が敵を倒せ、聖なる矢」

 第2射を発射する。

 コーティングは一吹きで最大5本ってところか。

 それを紛れ込まして発射すると、今度は直撃して、纏っていた炎を消して墜落したのだった。

 パレードの観衆達が、

「おお、さすがは女王様の王配になるだけある」

「天才魔術師って話だからな」

「カッコイイ」

「キャー、アラン・ザク様~」

 ナイスリアクションを取ってる。

 なるほど。

 声援を受けるのって気分がいいな。

 オレが満更でもない顔をしてる横で女王様が、

「ったく、余達の結婚式に無粋なモンスターめ」

「オレに活躍させる仕込みじゃなかったの?」

「そんな事ある訳ないでしょ」

「確かに。結構強かったもんね」

 そんな事を喋りながらパレードは続いた。





 ◇





 その後は初夜じゃないぞ。

 昼なので晩餐会ならぬ昼餐会だ。

 アポリス王国の幹部職、貴族の当主が全員参加の。

 当然、オレは警戒マックスで昼食に臨んだ。

 オレを暗殺するにはしかないのだから。

 オレは確かにスカイドラゴンや銀陸王を倒す実力者だが、出身はジオール王国の男爵家の三男だ。

 ギリ貴族家の出自だが、他国者。

 それだけでも文句が出る。

 その上、15歳。

 婚約期間もすっ飛ばして、いきなりの結婚だ。

 わがまま女王様の決定とはいえ、これはかなりの反感が予想されたが、何故か全員が好意的だった。

「あれ、どうして好意的なんだろう? てっきり、もっと嫌われてると思ったけど?」

 オレが疑問を口にすると、

「アポリス王国が亡国の危機だからでしょ」

「えっ、亡国ってどうして? 平和でしょ、このアポリス王国って?」

「国はね。でも王族は死にまくりで、その上、従兄弟の大公家が食中毒で全滅。もう担げる王族が殆どいないから。余に子を最低3人は産んで欲しいというのが貴族達の願いでしょうからね」

「それでこの特例尽くしの結婚が貴族達にも歓迎された?」

「そういう事」

「ふ~ん」

 オレはその後も警戒はしつつ、盛大な昼餐会は続いたのだった。





 食事の後は謁見の間で貴族達との面談だ。

 アポリス王国に貴族が何家あると思う?

 252家だ。

 これは本当だ。

 オレのザク伯爵家(まあ、今は大公家らしいが)のような領地なしの宮廷貴族も居るのだから。

 まあ、複数の爵位を持ってる大物貴族も居るらしい。

 最大で4個。さすが大物貴族は違うね。

 そして、大物貴族は当主だけの挨拶ではない。

 格上ともなれば当主だけではなく夫人や後継も連れてくる。

 1家と1分挨拶しただけでも252分。

 つまりは60分で1時間だから4時間チョイだ。

 入室退室の移動時間も加味すれば2分は必要。

 倍なら8時間になる。

 家族連れなら更に長くなる。

 それに面談は貴族だけではない。

 軍部や政府の要職に就く者達とも面談する。

 とてもじゃないが全員との面談は現実的ではない。

 なので、木っ端の宮廷貴族などは昼餐会の出席だけとなった。

 まあ、向こうも女王との謁見は困るだろうからな。

 それでも伯爵家以上は全家参加だ。

 その挨拶を女王様の隣の席で見てるのが、本日の主役の1人である王配になったオレだった。





 ホンマ、アホらしいでっせ。(コテコテの関西弁)





 そう思いながら結婚式当日の謁見を続けたのだった。





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