オレはスキル【殺虫スプレー】で虫系モンスターを相手に無双する

竹井ゴールド

文字の大きさ
上 下
123 / 140
アポリス王国真道編

アラン・ザク、15歳

しおりを挟む
 王族の葬儀ともなると国葬となる。

 そして翌日すぐには国葬は行われない。

 すぐに葬儀が行われないのはアポリス王国の各地に散ってる重要人物を葬儀に参加させる為の日数を稼ぐ為である。

 この配慮をしないと「軽く見られた」等々で人間関係がこじれるんだとか。

 そんな訳で葬儀は3日後となったが、何の因果かその日はオレの15歳の誕生日だった。





 国中が喪に服してるので誕生日を祝う事も出来ず、オレはザク伯爵家に客分扱いで居るトミナさんからささやかな誕生祝いのおっぱい貯金をして貰っていた。

 トミナさんは分かってて、本日はオレの誕生日。

 特別な日なので、アラン・ザクおっぱい銀行も特別利用で、布地越しではなくナマで御利用だった。

 ナマ。

 いい言葉だ。

 いい匂いでスベスベを堪能する中、トミナさんが、

「ようやく15歳なのね、アランは」

「まだまだ子供って事?」

「いえ、よくよく考えたら7歳年下だと痛感させられたというか・・・それで私に手を出さないの?」

「ううん。契約してる精霊獣がトミナさんを嫌ってて手が出せないの。契約が解除されたら洒落にならないから。今、トミナさんが聖属性になる方法を模索中」

「早くしてね」

「うん」

 たっぷりとオレはトミナさんにおっぱい貯金をされたのだった。





 ◇





 オレはアポリス王国に知り合いなど王族と重鎮以外殆どいない。

 そのはずだが、バジーナード宮殿に出仕すれば玄関ホールで見ず知らずの重鎮に囲まれた。

 用向きは分かってる。

「ザク伯爵、お願いですからアンリ妃殿下を説得して下され」

「アンリ妃殿下のLVは300を越えています。アポリス王国では王族で最も優れた者が王座に継ぐのは当然の事なのですから」

 そうなのだ。

 貴族達の殆どがあのわがままお姫様を次期国王に推していた。

 理由は単純にして明快。

 オレは死んだのはジェームズ国王と2代目の王妃、最初の王妃の息子の王太子の3人だけだと思っていたが、実は八天賢のネームバリューの所為で知己を得させようと王太子のシャーロス殿下の家族全員(王太子妃と王孫3人)があの場に参加しており、直系の王太子家族も巻き添えで全員が死んでいた。

 お陰で、ジェームズ国王の直系は第2王子のリオン殿下と第2王女のお姫様しか残っていないありさま。

 そして、その第2王子のリオン殿下を産んだ母親、つまりはジェーム国王と一緒に死んだ2代目王妃はレコアーヌ公国の公女。

 リオン殿下にも当然、レコアーヌ公室の血が流れている。

 なので、レコアーヌ公国贔屓のまつりごとをされたらアポリス王国にとってもよろしくない。

 というのは表向きの理由。

 誰もが口にこそしていないが。

 ぶっちゃければ、リオン殿下にアポリス王族の血が入ってるかが疑われていた。

 つまりは不義の子。

 不倫って奴だ。

 2代目王妃が輿入れして出産した当時、そんな悪意のある噂が立ってたって話だ。

 髪の色も同じで、オレから言わせれば、リオン殿下とお姫様はどう見ても兄妹なのだが。

 そもそも前世のエロゲーの世界ならともかく実際の異世界ファンタジーでは無理だろ、不倫なんて。

 どれだけ王族連中が付き人を連れて宮殿を歩いてると思ってるんだ?

 というのがオレの持論だったが。

 異世界ファンタジーで御馴染みの親子関係を証明する技術が今世の異世界ファンタジーではないとかで潔白が証明出来ずーー

 結果、現在オレの周りに大物貴族達が集まって「説得してくれ」と頼んでる訳だった。

「どうしてオレが?」

 あのわがままお姫様がアポリス王国の女王?

 それこそ冗談だろ。

 国が滅びるぞ、それだと?

「アンリ妃殿下と懇意ではありませんか?」

「我々の進言では一蹴されますので」

「無論、礼はします、ザク伯爵にも」

 ほう。

 それはそれは。

 一応、幾らくらい貰えるのか聞いておこう。

「礼とは?」

「王配になられる際にはお力添えを」

 待て。

 どうして、そうなる?

 呆れたオレが反論の言葉を放つ前に、廊下の前方からお姫様の行列がやってきた。

 将軍の役職も持ってるので、本日は男装を思わす将軍服とズボンだ。

 肩に喪章を付けてたがね。

「ーーおっ、アラン、いつの間に宰相達と仲良くなったのだ?」

「どう見たら仲が良いように見えるんですか? お姫様に女王になるように説得してくれとまずはオレが説得されてるところですのに」

「またその話か? お兄様が居るのに何を言っている。ならんぞ、余は。まつりごとなど面倒臭い」

 最後のが本音だろう。

 国の経営なんて面倒臭いだけだもんね~。

 太閤秀吉は天下を統一した後、どうやってたんだろうな?

 やっぱり奉行衆に丸投げ?

 多分、それだな。

 百姓出身の秀吉に政治が出来たとは思えない。

 つまり、オレも「成り上がって」建国する為には使える政治集団が必要な訳か~。

「ですよね~」

 オレは納得したが、公爵達は、

「アンリ妃殿下、アポリス王国の事も考えて下され」

「一番優秀な王族が王位を継ぐのはアポリス王国では自然な事です」

 どうにか取り縋ろうとしたが、

「今日は陛下達の葬儀だ。喪に服せ」

 わがままお姫様が面倒臭そうにそう返事して、

「アラン、付いて来い」

「はっ」

 ようやくまとわり付いてた貴族達とお別れ出来たのだった。





 廊下を歩きながら、お姫様が、

「アラン、あのトミナという女とどういう関係だ?」

「恋人にしたいですが、オレが契約してる精霊獣が嫌がってて、ナマ殺し状態の関係です」

「そういう比喩的な事ではない。どこまで進んでるのかと聞いている」

 ーーああ、なるほど。

「もしかして屋敷の中を盗み見されてました? 御趣味がよろしいようで」

 お姫様は否定をせずに、

「いつもあのような事をしているのか?」

「いえ、今日だけですよ。オレ、今日が15歳の誕生日なので」

「陛下の葬儀の日に誕生日とは――この不忠義者め」

「いやいや、言い掛かりですから、それ。15年前に生まれた事を咎められるなんて」

「陛下を殺した八天賢に化けてたドラゴン・リザードマンの事だが、どうもずっと前に八天賢を殺して入れ替わっていたらしい」

 ほう。

 そんな結論になった訳ね~。

 いや、案外が真相かもな?

 世間で尊敬されてる善玉の八天賢がモンスターに殺されて入れ替わった?

「ーー八天賢って弱いんですか?」

「遭った事がないから何とも言えんが、ドラゴン・リザードマンに負けたところを見ると頭がいいだけで弱いのだろうよ。お陰で陛下と大お兄様、それに大お兄様の家族が死んで大変だ」

「確かにそのようですね、あの大物貴族達の様子を見ると」

「そちは余が女王になった方がいいと思うか?」

 何故そんな重要な事をオレに聞く。

 お姫様が見てくる。オレの返事待ちだ。

 ったく、仕方ない。

「ええ」

「何故そう思う?」

「ここまで大物貴族達が一致団結してリオン殿下を推さないのが異常だからです。嫌われてるんですか、リオン殿下って貴族達に?」

 不義の子の噂は「嘘」と断定してるので当然、無視ね。

「前に領民から税をピンハネしてる貴族の処罰を断行したからな、お兄様は」

「えっ、もしかして真面目過ぎて嫌われてる?」

「そうだ。その点、余ならぎょしやすいという訳だ」

「お姫様が御しやすい? 冗談でしょ」

「まったくだ――そうだ、そのほう、個人の意見を聞きたいのだが」

「個人の意見? 何が聞きたいので?」

「女王と女将軍、どっちを妻にしたい?」

「そんなの両方に決まって――コホン、今のはなしで」

 反射的に答えたオレは慌てて否定した。

「その方は」

 お姫様は呆れてるが、

 いやいや。

 だって、そうだろ。

 男なら女狂いの太閤秀吉じゃなくても両方って言うさ。

 異世界ファンタジーのハーレムルートは男の夢と希望が詰まってるんだから~。

 ーーん?

「その女王と女将軍ってーーもしかしてお姫様の事なんですか?」

「どうしてそうなる。一般論を聞いたまでだ」

「ですよね~」

 そんな事を喋りながら葬儀の式典へと向かったのだった。





しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...