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エマリス、マチルダーズ二国傾国編

叡智の羽根

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 はい、やってきました~、モスヘンバウワー宮殿~。

 いや~、昨晩ルイタフ代表はさっさと帰っていった訳だが、

「翌日モスヘンバウワー宮殿に来るように」 

 って言われててさ~。

 もちろん断ろうとしたぞ~。

 いくら魅了で操られてたとはいえ、おっぱい貯金の邪魔をしたのには変わらないんだから~。

 でも、さすがは国家元首歴27年越えのルイタフ代表~。

「遠征の礼も用意して待ってるからちゃんと来るようにな」

 と言われてさ~。

 いや~、オレはもう億万長者だから金には困ってないんだけど~。

 相手が礼をしたというのに無碍むげに断るのはそれはそれで無粋ぶすいというか、人として間違ってるというか。

 ちゃんと受け取らないとバチが当たりそうだし。

 そう、これは損得ではなく人徳の話でもあるのだ。





 そんな訳でモスヘンバウワー宮殿に出向いたら、





 ◇





 執務室に通されたオレにぶすっとしたルイタフ代表が、

「アラン、おまえ、何か知らないか?」

「何がですか?」

「昨夜の内にあの3人に逃げられた」

 その初耳情報に、

「はあ?」

 昨日の今日で?

 何やってんの?

 もしかして上方お笑い系の新喜劇集団なのか、マチルダーズ連合って?

 そういやアースドラゴン(緑)の素材も盗まれてたっけ?

 いやいや、全く笑えないんだけど~。

 あの眼鏡のお姉さん、オレを操ろうとしたんだよ~?

 いくらオレが眼鏡のお姉さん好きでも、あのお姉さんだけは許すつもりはなかったのに~。

 なのに逃げられた~?

 もう1回言うけど、何やってんの~?(0.1秒)

「これだけエマリス帝国の難民が首都モスヘンバウワーに流入していれば、そりゃあね~、という意味ですか?」

「いや、逃がしたのはカスボール陣営の連中だ。怪しいのが10人ほどあの3人と一緒に昨晩の内に消えてるから」

「へ~」

 まだ居たのか、敵対派閥陣営?

 いい加減、退場しろよな~。

「魅了使いのお姉さんを使って代表選出選挙に介入すると?」

「いや、どう考えても使うのは旧帝族の少女の方だろ。その交渉カードを使ってエマリス帝国と裏取引。選挙での巻き返しを図るってところだろうな」

「つまり、もう国内には居ないと?」

「ああ、ラジカーンでもそれらしい飛獣が昨夜の未明にエマリス帝国に逃げたのを確認している。もう追跡は不可能だろう」

「へ~」

 ん? LVが1668になったから、かな?





 昨夜、ダークエルフの集団が牢屋から3人組を連れ出したビジョンが今、鮮明に視えたんだが?





 まあ、いいか。

 今はそんなの。

 それよりも、

「オレ、もうエマリス帝国から手配されてますからね~、大使館を襲撃した犯人として~」

 そう水を向けると、

「そうそう、アランの今回の件の褒美だが・・・」

 ルイタフ代表がオレを見て、

「マチルダーズ連合に仕官する気はないんだよな?」

「ええ、。【神童】はちゃんと使い切らないと」

「そして学校にも通う気はない?」
 
「ええ」

「そんなアランにはだ」

 そのドヤ顔と共に、テーブルの上に載せたのは装飾された箱だった。

 ルイタフ代表が蓋をパカッと開く。

 中には銀製の羽根のアイテムが入っていて、それを見せてきた。

「何でーー」

 すか、それ? とオレが尋ねる前に勤勉なる我が透明分身2体ともが左右からテーブルの上のそれを速攻でバキンッと出した棒で殴ったんですけど~。

 銀製だったがピキンッと割れて、付与されてた魔法が砕けたのも無駄に視えてた。

「ぬあああああああ、貴重なアイテムがあああああああ」

 ルイタフ代表が大袈裟に絶叫してる。

「ひとりでに壊れましたけど、骨董品か何かだったんですか?」

 オレの名演技を見よ。

 何と淀みのない質問をしてる事か。

 まあ、ルイタフ代表も同席の護衛の親衛隊も壊れたアイテムに視線を集中させてて誰もオレの名演技を見ていなかったんだけど。

「こ、これは4代前の代表が八天賢様より預けられた転移アイテムで、代表交代の際の引き継ぎ事項の1つにもなっていたんだが」

 八天賢。

 なら勤勉なる我が透明分身が潰したのも納得だな。

 多分、連中は8人全員が敵だし~。

「八天賢の内の誰からいただいたんですか?」

「『叡智のビッフェルスキー様』だと伝え聞いてる。実力者が現れたらこれで自分の元に送って欲しいと。叡智を授けてくれるらしい」

 叡智を授ける?

 赤の他人に?

 わざわざ?

 ないない。

 そんなお人好しな奴、居る訳ないでしょ。

 もしかして、このアイテムで人間の実力者を狩ってた?

 その八天賢もモンスターで、LV上げの経験値が目的?

 出向けば魔法結界の中で強制戦闘?

 それも結界に細工がされてて、敵に与えたダメージが自分に返るとか?

 高みの見物タイプで、闘う相手は八天賢でもない可能性すらある、とかありそう~。

「4代前なら120年以上のアイテムですし、代表閣下の所為ではありませんよ」

 オレはそんな慰めをしたが、内心では、

 ええ?

 もしかしてこれが褒美の品とかじゃないよね?

 こんな物の為に呼ばれたの、オレ?

 だとしたらオレ、キレちゃうかも?

 ーーんっ?

 待てよ、その前に。

「トミナさんには使わせたんですか?」

 気になったので質問すると、

「いや、アランの次に使わせるか考えてたが」

 もしかしてオレに毒味役をやらせようとした?

「へ~。それで他には何がいただけるのです?」

 気になったので聞いてみた。

「いや、実はがメインで・・・」

 はあ?

 と思ったが顔には出さず、

「なるほど。これがマチルダーズ連合が隠してた叡智の1つだったんですか~」

 そんな感想を言った訳だが、その後、雀の涙の金貨50枚で茶を濁らされたのだった。

 マジで?





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