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エマリス、マチルダーズ二国傾国編

5日もあれば歴史は動く

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 エマリス帝国の地図は、

 南北2、東西6で12等分にしたとして、

 北側の東から1番目が旧帝都にして第2都市のビオフェンテル。

 北側の東から2番目が帝都シーンフェンテル。

 北側の東から4番目が第5都市ドルアービア。

 南側の東から3番目が第3都市ショミーティ。

 南側の東から6番目が第4都市クロハッペン。

 これらがあった。





 ◇





 オレは本当に第3都市ショミーティからマチルダーズ連合に戻る事にしたのだが、南側のマチルダーズ連合へと続く主街道は難民の行列で牛歩の速度だった。

 正直トロイ。

 ウンザリだ。

 なので、主街道の横側の森の中を進んだのだが、キーデシアさんが、

「森に連れ込んで変な事しないで下さいね」

「ええ~、そういう事はもう少しナイスバディーになってから言ってよ、キーデシアさん」

「それ、セクハラですよ、アランさん」

「自分から振っといてセクハラ指摘返しはズルくない?」

 ったく、ジョークも気軽に口に出来ないとは窮屈な世の中になったものだね~。

 冗談はともかくとして移動を急いだ。

 どういう訳か、キーデシアさんが強くなってて、その上、森を進む中、ピヨピヨとのピピーの指摘で視線を向けたら手乗り猿サイズのピンク色の精霊獣が居て、

「あれ、これって精霊獣ですか?」

「っぽいね。契約したければどうぞ」

「アランさんはされないんですか?」

「ん? 聞いてないんなら内緒って事で。契約したければどうぞ」

 なんて喋ってキーデシアさんが精霊獣と契約し、その後も先を進んだのだった。





 ◇





 第3都市ショミーティから国境までは徒歩で4日だ。

 その主街道には移動する避難民を相手に商売をする出店なんかも出来てて食料には一切困らなかった。

 キーデシアさんも疲れなかったので、森移動だったが4日の距離を1日短縮の3日でマチルダーズ連合に入国したほどだ。

 だが、そこからの方が問題が発生した。

 国境を越えて徒歩で半日の場所にあるラジカーンの街はカスボールを首魁に戴く敵対派閥の陣営だったので兵舎に出向いて、いくらキーデシアさんが説明したところで冒険者の身なりなのだから無理で(または本物だと気付いてて故意に妨害)ワイバーンどころかグリフォンも借りられず(まあ、今、ラジカーンは難民で大変だからね)、結局は乗合狼車に乗って首都モスヘンバウワーまで移動したのだった。

 狼車なので更に陸移動を1日だ。





 それでようやく首都に到着し、





 モスヘンバウワー宮殿にて、ルイタフ代表の執政室に呼ばれて、

「もう戻ってきたのか、アラン?」

「ええ、何やら大使館でキラーアントのスタンピードを倒すとか妙な事を言われて」

「いや、妙ではないだろ」

「妙ですよ。センティピード・アラクネーならともかく」

「ーー何匹か倒したのか、センティピード・アラクネーの方は?」

「オレは1匹も。でも何か騒動にはなってたみたいですけど」

「そうか」

 と答えたルイタフ代表が、

「――アラン、エマリス帝国潜入の件は忘れてくれ」

「はい?」

「エマリス帝国の第3都市ショミーティにあったマチルダーズ連合の大使館が昨夜何者かに燃やされて、犯人が早々に手配された。このようにな」

 そう言ってルイタフ代表がオレに手配書を見せてきた。

 その手配書には何とお笑いな事にオレが凶悪な人相で描かれていた。

 まあ、アースドラゴン(赤)シリーズで装備は少し古かったが。

「? 昨夜はラジカーンの街はつの狼車の中に一晩中居ましたが?」

「陸路で移動したならそうだろうな。ともかくこれ以上の騒ぎは外交上まずい。いいな」

 おいおい。

 まさか、蜥蜴の尻尾切りとかはないだろうな。

「代表閣下のお指図で動いたと記憶してますが?」

 確認すると、ルイタフ代表は、

「分かってるよ。礼はするさ」

「本当ですね? 期待してますよ」

 こうして往復5日を要したつまらないエマリス帝国への遠征は何も得る物もなく終了したのだった。





 ◇





 これでこの話は終了ーー





 とはならなかった。





 どういう経緯かは全くの不明だが、エマリス帝国の旧帝族のディアーナ・ブイ・エマリスが数名の御供と共にマチルダーズ連合の首都モスヘンバウワーに亡命してきたのだから。





 ◇





 旧帝族ってのは。





 ほら、前世の三国志でもあっただろう。

 曹操の後継者の曹丕が漢の最後の皇帝から帝位を譲り受けたの?

 禅譲ぜんじょうだっけ?

 まあ、帝位簒奪だけど。





 実はエマリス帝国の歴史は400年と長いが、建国序盤の50年くらいでその禅譲が行われていた。

 その帝位を奪われたのがエマリス帝国の旧帝族という奴で、まだ生き残ってて、捨て扶持をエマリス帝国から貰って(誰にも利用されないように)囲われてた訳だが。





 それが逃げてきたらしい。





 ◇





 オレがエマリス帝国から帰国してワイバーンでローセファースの街のクラン【氷の百合】の豪邸に帰還した後に、首都モスヘンバウワーでそんな事が起こってるとは神ならざる身のオレが知る訳もなく、クラン【氷の百合】のを片付けて、昼風呂に入って、久しぶりにクランの料理長が作る夕食を堪能してたところに、またルイタフ代表からの呼び出しがあった。

 当然、オレは、

 夜の飛獣移動は禁止だろうが。

 そもそもオレは何か?

 呼ばれたら、すぐに尻尾を振って出向く都合の良い女か何かなのかな~?

 もしかして、そう勘違いしてる?

 ここはガツンと言っておく必要があるな。

 なので、呼びに来たキーデシアさんに、

「今日はもう外出はしませんよ。帰国した今日ぐらい休ませて下さいよ、ったく」

 わがままぶりを発揮したのだが、





 これが拙かった。





 向こうから来やがったからな。

 それも朝まで待てずに、その日の夜に。

 くそったら~。





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