上 下
110 / 140
エマリス、マチルダーズ二国傾国編

どうせやるなら恩に着せて

しおりを挟む





 エマリス帝国は滅亡の末期症状に突入したらしい。

 エマリス帝国の第3都市ショミーティから国境を越えてマチルダーズ連合のラジカーンの街に入ってきた難民の数が30万人を越えそうとかで。





 マチルダーズ連合としてはこの難民の人数は想定外で凄く慌てているのだとか。





 というか、エマリス帝国が選挙前のこの時期に崩壊されると正直困る、というのがマチルダーズ連合の両陣営のスタンスで、エマリス帝国内で暴れてるセンティピード・アラクネー集団とキラーアント軍団には御退場を願いたいらしい。





 ◇





 ローセファースの庁舎ではなく、首都のモスヘンバウワー宮殿に呼び出されて長々と説明を受けたオレは、

「で、どうして、その話をオレにされてるんですか?」

 そうルイタフ代表に尋ねると、ルイタフ代表が素知らぬ顔で、

「アラン、ちょろっとエマリス帝国に出向いて虫モンスターを倒してきてくれ」

 何を気軽に言ってるんですか?

 分かってるんですか、代表閣下?

 冒険者に『死んで来い』って言ってるんですよ?

 センティピード・アラクネー集団に支配されてるなんて何も知らないエマリス帝国兵が襲ってきたらどうするんですか?

 オレ、マチルダーズ連合でセンティピード・アラクネーを殺しまくってて恨まれまくってるのに?

 何も知らない帝国兵なんかを返り討ちにしたら『エマリス帝国の敵』の汚名を着せられるんですよ?

 冒険者としてのお先真っ暗じゃないですか?(0.1秒)

 そう長々と言い返してやろうとしたのだが、オレが口を開く前に頭の上のピピーがピヨピヨと返事し、そのやくが「面白そう、やろうよ」だったので、オレは考える破目になった。

 ふむ。

 LV566なら絶対にお断りだったが、今のオレはLV1668。

 殺虫スプレーの残数も、もうぶっちゃけ、困らない。

 だって一晩寝たら残数、全回復だから。

 まあ、多分だけど。

 全部を無駄撃ちして回復するか試した事、まだないし。

 回復するかはともかくとして。

 このスプレー数なら、やれるかもな。

 エマリス帝国でも名前を売るのはありか~。

 それに余り放置して虫モンスターが強くなるのも厄介だ。

 ジオール王国で遭遇したあのアラクネーしんクラスとはもう戦いたくない。

 それに数の問題もある。

 虫は放っておくとすぐに増えるからな。

 この際、叩くか。

 センティピード・アラクネーどもを。

 キラーアントの方は微妙だけど。

 巣穴に乗り込んで攻略とか待ち伏せの罠以外の何物でもないし~。

 巣穴の深部で生き埋め攻撃とかを喰らったらマジで洒落にならないから~。

 脱出不可能以前に「酸欠で御臨終」とかマジでカッコ悪いし~。

 よし、決めた。

 やろう。

「センティピード・アラクネー潰しならやりますよ」

「『スタンピードを起こしたキラーアントを倒してくれ』と言ったつもりだったんだがな」

「いやいや、エマリス帝国を裏から支配してるセンティピード・アラクネーを倒さないとこっちが大国に因縁を付けられてやられるじゃないですか? どれだけオレがセンティピード・アラクネーを倒してると思ってるんです?」

「ふむ。では、両方を――」

 何言ってるの、ルイタフ代表?

 もしかしてボケ始めた?

 それともセンティピード・アラクネー集団と取引した?

 さすがにそれはないか。

 もし取引なんてしてたらオレがブチギレて代表選出選挙が前倒しになっちゃうし~。

「先にセンティピード・アラクネーですからね」

「エマリス帝国の帝都シーンフェンテルの宮殿に乗り込んでセンティピード・アラクネーを殺して回るのとかはなしだぞ?」

「そんなのーー向こうがオレをムカつかせない限りやりませんよ」

「あのな~」

「で、どうします? やるんですか、オレ?」

「やってくれ、今すぐに。もしエマリス帝国が崩壊したらマチルダーズ連合もただでは済まんから」

「報酬の方も期待していいんですよね?」

「ったく、チャッカリしてーー分かった。任せろ」

「期待してますからね」

 ちゃんと念押ししてから、

「ワイバーンで出向いても?」

「エマリス帝国の第3都市ショミーティまでならワイバーンでも行ける。但し、そこからは自分の足だ。狼もなしだからな」

「そうなので?」

「ああ、今、エマリス帝国は体制だからな。狼や蜥蜴は民間のが接収されてる。国境を越えてくる難民も全員徒歩だぞ。【アイテムボックス】も禁止」

「エマリス帝国の緊急事態なので帝国政府も逃げるのまでは黙認するけど、財貨の持ち出しは認めない?」

「そういう事だ」

 そんな説明を受け、その後、オレはルイタフ代表から、

「そうそう、トミナに変わって新たな連絡係を付けるな。キーデリア・メリアスだ」

「よろしく、アラン殿」

 そう挨拶したのはどう見ても17歳前後で、黄緑髪ショートの女魔法騎士のお姉さんだった。

 正直に言おう。

 弱そう。

 それに女子力も低そう。

 眼鏡も掛けてないし、巨乳でもなさそうだから。

「ええっと、いつものトミナさんは?」

「トミナはもうダメだぞ。次の代表選の立候補者にするから。ノルメからも取り上げたし」

「ってか、付けないとダメなんですか、オレへの連絡係?」

「当然だろう。アランが帝国内で暴走してエマリス帝国に外交問題にされてマチルダーズ連合が何も知らずに後手に回って変な譲歩をいられたら敵わんからな。アランの行動はこちらでも把握しておきたい」

「ふ~ん。まあ、いいですけど」

 オレはそう納得し、





 ◇





 1時間後にはマチルダーズ連合の魔法騎士が操縦するワイバーンの送迎であっさりと第3都市ショミーティにやってきたのだった。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

全校転移!異能で異世界を巡る!?

小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。 目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。 周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。 取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。 「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」 取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。 そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

倒したモンスターをカード化!~二重取りスキルで報酬倍増! デミゴッドが行く異世界旅~

乃神レンガ
ファンタジー
 謎の白い空間で、神から異世界に送られることになった主人公。  二重取りの神授スキルを与えられ、その効果により追加でカード召喚術の神授スキルを手に入れる。  更にキャラクターメイキングのポイントも、二重取りによって他の人よりも倍手に入れることができた。  それにより主人公は、本来ポイント不足で選択できないデミゴッドの種族を選び、ジンという名前で異世界へと降り立つ。  異世界でジンは倒したモンスターをカード化して、最強の軍団を作ることを目標に、世界を放浪し始めた。  しかし次第に世界のルールを知り、争いへと巻き込まれていく。  国境門が数カ月に一度ランダムに他国と繋がる世界で、ジンは様々な選択を迫られるのであった。  果たしてジンの行きつく先は魔王か神か、それとも別の何かであろうか。  現在毎日更新中。  ※この作品は『カクヨム』『ノベルアップ+』にも投稿されています。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

処理中です...