オレはスキル【殺虫スプレー】で虫系モンスターを相手に無双する

カクリ・コンゼート樹海波紋編

悪食のバルコニウス（八天賢、悪徳のバルコニウス）

　先手必勝。

「聖なる光よ、100本の矢となり我が敵を倒せ、聖なる矢」

　オレは聖矢魔法を使った。

　通常ならば、これで蜂の巣の瞬殺な訳だが、

「馬鹿め、オレに魔法なんかが効くかっ！」

　大口を開けて聖矢魔法100本を掃除機のように吸い込んで喰らいやがった。

　はあ？

　そんなのもありかよ？

　攻撃魔法を喰うって。

　アースドラゴンでもそんな事はしなかったぞ？

　蛇の特殊能力って奴か。

「ゲプっ、聖魔法か。なかなかに美味かったぞ」

　スネーク・ジェネラルリザードマンのボスが得意かってる左右で勤勉なる我が透明分身達がcoldスプレーをシューッと吹き掛ける。

「グアアアア、何だ、急に寒気が――」

　coldスプレーは効く訳ね。

　だが、シュララッと蛇の鳴き声が念話（？）で聞こえると、スネーク・ジェネラルリザードマンが眼の色を変えて、

「視えたぞ、チラッとだが――その精神体」

　おおっと。

　呑気に構えても居られないか。

　精神体の透明分身が視えた奴はこれまでアポリス王国の魔眼持ちのモスラドさんだけだったが。

　って、モンスターの癖に魔眼持ちなの？

　まあ、そうか。

　蛇なんだから。

「それがどうしたっ！　聖なる光よ、50本の矢となり我が敵を倒せ、聖なる矢」

「効かねえって言ってるだろうが、学習能力のない奴めっ！」

　大口を開けて聖矢魔法を吸い込んでる隙に、

「学習能力がないのはおまえだろうがっ！」

　ピッチャー第1球投げました～。

　オレは【アイテムボックス】から出した竜骨ボールをピッチングフォームで投げたのだった。

　もちろん顔面ストライクでも金的ストライクでもない。

　そもそもオレの狙いはボスではなかったのだから。

　エルフの住民の中に紛れて隠れてる、透明になってるっぽいけどオレからはうっすらと視えてる4匹目のスネーク・ジェネラルリザードマン、ーーコイツだ。

　馬鹿な奴め。

　ボスに勤勉なる我が透明分身は視えてなくて、おまえが視えてて教えた事は丸分かりなんだよ～。

　念話でシュララッと鳴かねば、おまえは無駄に綺麗なお姉さんだったから生け捕りで済んだかもしれなかったのにな～。

　（「雉も鳴かずば撃たれまい」の異世界バージョン）スネーク・ジェネラルリザードマンも念話を使わねば顔面ストライクを喰らうまいって奴だ。

　時速300キロ（適当）の剛速球を顔面ストライクで受けて、ボシュッと頭が吹き飛び、透明だったスネーク・ジェネラルリザードマンは簡単に死んだのだった。

「ぬあああああ、貴様ぁぁぁぁぁぁっ！　何て事をぉぉぉぉっ！」

「はあ？　おまえが呑気に魔法なんかを喰ってるからだろうが？」

　オレはそう得意がったがーー

　お気に入りの女が殺されて怒ったのかと思ったが、どうやら違ったようだ。

　ボスが突然、胸を抑えて苦しみ始めて、

「クソ、リーアミナに預けて眼に保管してた古代文明の変身の宝玉まで砕きやがってーー変身が解けるぅぅぅぅぅ。ぐあああああああああ」

　人型だったボスが見る見ると大きく膨らんで巨大な蛇になっていった。





　30秒後には樹上街エアロットスの広場に全長200メートルのとぐろを巻いた白色の蛇の出来上がりだ。

　霧平原の30メートル級のホワイトスネークのデカイバージョン？

　ーーいや、霧平原のとは全然違うな。

　何せ、面構えからして格段に違うし、蛇皮も魔力の模様が入ってて強そう。

　後、魔力の気配も。

　絶対にアースドラゴンよりも強いだろ、これ。

　サーペントって奴か。

　何かは分からないけど、属性も付いてるってか。

「おまえ、なんて事をっ！」

「これが都市サスペンダーの10万人を喰らった悪食のバルコニウス」

「もう、おしまいだ～」

「どうしてくれるんだ、これ？」

「責任を取れーーってか絶対に倒せよ、人間」

「そんな事言ってないで逃げるわよっ！」

　何も出来ない無力なエルフが逃げ惑いながらナイスリアクションでオレを非難してくる。

　ったく、自力でどうにかしろよ。

　エルフって強いんじゃないのか？

　このままオレも逃げて、あえてコイツを放置して暴れさせるのも面白そうだがーー

　いやいや、そんな誘惑に負けてたまるかっ！

　オレは成り上がるんだっ！

　ここでコイツを倒して経験値プラス、樹上街エアロットスのエルフの支持を得て、兵力を確保。

　うん、理想はこれね。

　太閤秀吉のように成り上がるにはカクリ・コンゼール樹海の支持も必要って事さ。

　秀吉が堺の商人を抱き込んだように。

　よし、頑張りますか。

「おら、スネーク野郎っ！」

　オレは声を掛けて挑発したが、もう自我が失われてるのか、





　シャアアアアアアアアアアア。





　勝手に暴れ始めた。

　逃げ惑うエルフを喰ってる。

　一口で200人以上。

　――あっ、バカっ！

　それ以上、街を壊すなっ！

　エルフを喰うなっ！

　後でオレがエルフに文句を言われるんだからな。

　とりあえず、攻略の検証開始。

　まずはこっちの姿でも魔法が喰えるのかのっ！

「聖なる光よ、100本の矢となり我が敵を倒せ、聖なる矢」

　ダメ元で聖矢魔法で攻撃したら、意外や意外、蛇皮に風穴が開いた。

　あれ、魔法が効くの？

　ってか、図体がデカイだけで実は弱い？

　オレは更に、

「聖なる光よ、500本の矢となり我が敵を倒せ、聖なる矢」

　500本を追加して、それで蜂の巣となり、





　シャアアアアアアアアアアアアアアア。





　断末魔を上げて死んだのだった。





　あれ？

　本当に死んだのか？

　思ってたのと何か違う。