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カクリ・コンゼート樹海波紋編

カクリ・コンゼート樹海のエルフ族からの指名依頼

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 マチルダーズ連合の近隣の情報はというと、





 西はオレやバニラさんの出身国のジオール王国。まあ、王都オングスは陥落して王族も死んでるが。





 北はエマリス帝国。元々センティピード・アラクネー集団の巣窟だったがキラーアントのスタンピードまで起こり、第5都市ドルアービアと第2都市ビオフェンテルの住民が皆殺しというありさま。





 南はアポリス王国。ここは今のところ平和。





 では東は?





 東は権力の空白地、ーーカクリ・コンゼート樹海だった。

 樹海というのは、まあ、森だわな~。

 だが、異世界ファンタジーの森だ。

 つまりはモンスターの巣窟。

 更に言わせて貰えれば、エルフ族も住んでる。

 結界を張って、その中で安全に。

 他にも獣人も済んでるらしいが。

 森の近隣国は冒険者ギルドから冒険者を派遣して、薬草を採取させ、モンスターを狩ったりさせてるが、国としては干渉していない。

 相互不可侵。

 それが昔からの決まりなのだそうだ。

 何せ、エルフってのは強いから。





 そして、そのカクリ・コンゼート樹海のエルフ族のトップが(よこしまなる存在ものだけど、その事は皆知らなくて、世間的には徳の高い)八天賢の1人、【氷に5000年眠りしエルフ】トロビーブラードなんだってさ~。





 ◇





 何でこんな話をしているのかと言えば、





 ローセファースの冒険者ギルドのギルド長室に呼び出されたオレにギルド長が、

「アラン、おまえにカクリ・コンゼート樹海のエルフ族から指名でLV測定不能のアイスダブルヘッドタイガーの討伐依頼が来てるぞ」

 アイスダブルヘッドタイガー。

 ケルベロスの虎バージョンって事かな?

 それの氷タイプね~。

 LV測定不能なら500以上か~。

「ーー指名って何ですか?」

 あのゴーストエルフ。

 アイツはあの時に死んでるよな?

 それとも実はまだ生きてて、オレを罠に誘き寄せる為、とかだったら嫌だぞ、オレ~。

「そのままだ。おまえを名指しで依頼してるって奴さ」

「そんなのがあるんですか、4本のオレに?」

 オレが問うと、ギルド長が嫌そうに、

「言うな、ギルドの等級の話は。おまえが14歳なのが全部悪いんだろうが。さっさと15歳になりやがれ。一気に7本にしてやるから」

「いえ、今のは冗談です。4本の等級のままでいいですから~」

 そうか、そろそろ15歳な訳ね、オレも~。

 ローセファースに流れ着いて60日が経過してるんだから~。

 よし、オレの15歳の誕生日には盛大にーー

 まあ、冗談はともかく、今は指名依頼だ。

 正直言えば、トロビーブラードが絡んでる云々以前に、面倒めんどい。

 オレはもうお金には困ってないからな~。

 それに呼び出しの依頼自体が、あのゴーストエルフが生きてての報復、またはゴーストエルフを消滅させた事に対するお仲間達の報復かもしれないし~。

 罠だと分かっててあえて出向くーーのもカッコイイと言えばカッコイイんだけど~。

 ほら、オレって、もうLV1366だし~。

 極めたって言うかさ~。

 ・・・

 ?

 あれ?

 オレ、何か今凄い傲慢な事を言ってたぞ?

 いやいや、1366くらいで満足しちゃあ、ダメでしょ。

 LVに4桁があった事が判明したんだからさ~?

 なら最高は9999のはずなのに、1366くらいで満足するだなんて。

 危ない危ない。

 向上心が無くなったら死ぬぞ、この異世界ファンタジーでは。

 頂点を目指さないと。

 太閤まで上り詰めた豊臣秀吉を手本としないとダメでしょ。

 よし、受けよう、この依頼。

「クラン長のバニラさんの許可が下り次第、出向きますね」

「おお、そうか。なら、オレからも1つ言っておく事がある」

「?」

「アイスダブルヘッドタイガーの毛皮のバンダナがあると夏は涼しい」

「えっと、それって賄賂の要求をされてるんですか?」

「どうしてそうなる? アランが『要らん』と言ってるオレに無理矢理渡すんだろうが」

 やっぱり賄賂の要求じゃあねえか。

「あのですね~」

 変だな~。

 ギルド長って、海賊の身なりだが、もっとまともなタイプだと思ってたんだけど~。

 どうしてアポリス王国のお姫様みたいな事を言い出したんだ?

 もしかして人が変わった?

 操られてる?

 って、んな訳ないか。

「後、気を付けろよ、アラン」

「はい?」

「あの森のエルフどもは獣人はもちろん人間も下に見てる。それなのに人間のアランに指名依頼なんて絶対に裏があるに決まってるからな」

「御忠告どうも。では、アイスダブルヘッドタイガーの毛皮は無事に帰れたら、という事で」

 オレはギルド長の助言に真摯に耳を傾けたのだった。





 
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