上 下
101 / 140
ジオール王国炎蝗編

アラクネー神殺しの余波

しおりを挟む
 今日の寝起きは良かった~。

 トミナさんのナマ乳に顔をうずめてたから~。

 バニラさんのドレスはズレた事がないし~。

 ナマ乳。

 なんて良い響きだ~。

 スベスベだったし~、いい匂いだったし~。

 ナマ乳も良かったが、それ以上に良いのがトミナさんの今の様子なんだけどね~。

 オレが見れば、オレの視線に気付いて赤面して視線を逸らすリアクションだから~。

 昨晩、ライアナさんに夜這いされ掛けた時はどうなる事かと思ったけど。

 何かいい事が続いてるな~。

 ――いや、待てよ。

 何か幸運が続き過ぎてないか?

 どこかに落とし穴があるかも。

 でも、オレ、【天人の理】でバッドエンドが回避されるの確定だし~。

 ならーー

 えっ、もしかしてトミナさんの死亡フラグが立ってる?

 なら、この貰った【身代わり】の魔法のアクセサリーを渡しておこう。

「トミナさん、これを預けるね、持ってて」

「・・・これはアラン殿が貰ったはずでは?」

 ほら、キリッが売りのトミナさんがこの熱視線。

 完全にOKの顔だよね?

「トミナさんに死なれたらオレのテンションが下がるから。ローセファースに帰ったら返してくれていいから」

「・・・預かるだけですからね」

「うん」

 と軽いノリでオレは渡した訳だが・・・





 渡して良かった~。





 1時間後にはそう思う破目になった。





 ◇





 昨夜真っ裸で迫ったのにオレにフラれた事がショックだったのか、かなり不機嫌なライアナさんだった訳だが、





 それでもジオール王国の危機だ。

 それは本当だ。

 王都オングスが壊滅で住民は全員が死亡。

 王族の行方も分からない。

 では臣籍降下して王族の血の入った貴族を擁立するのかと言えばーー

 ないない。

 前世の戦国時代では太閤秀吉だって一応は三法師様を立てたが、結局は天下人になってたから~。

 強い者が総てを手に入れる。

 人間社会の常識だ。

 異世界ファンタジーでも当然、適用されており、ライアナさんはファイアグラスホッパーの大群に警戒しつつ、周辺貴族の支持集めに動いていた。

 もうライアナさんはだ。

 ジオール王国の後釜の国家の女王に。

 その為に、昨夜オレの獲得に動いた訳だけど。





 せめて女王になってからにしてよね、迫るの~。





 それがオレの言い分だった。





 そしてオレはそんな建国に付き合う義理はないのだが、こちらはこちらでファイアグラスホッパーの大群の駆除が残ってる。

 あのアラクネーしんが炎からあの数を出せたんだ。

 他の奴が出せたとしても不思議じゃない。

 そんな訳でジオール王国に留まり(本当は飛獣なら数分なのでローセファースの街に帰っても良かったんだが、飛獣の所有権がね~。ほら今、貰ったグリフォンに乗ってるし~)、今日はその付き添いがてら王国内を巡回していた訳だが、





 空をワイバーンやグリフォンで移動中にいきなりきやがった。





 右斜め前方から巨大なプレッシャーが。

 空なのでまた落ちたら大変なので手の上に居るピピーが撫でられて気持ち良さそうにしてたが、いきなりの激おこモードになった。

 ピピピッ。

 訳すれば「よこしまなる存在ものだよ」だったので、

「トミナさん、戦闘態勢」

「えっ?」

「来るよ、ライアナさんっ!」

「何が?」

 昨晩の件でまだ不貞腐れてますから~。

 ってか、気付いてないの?

 このプレッシャーを?

 いやいや、前世のアニメのニュータイプじゃなくても気付くでしょ、こんだけ強ければ?

 ドラゴンよりもヤバイのに?(0.1秒)

「ちょ、可愛くないよ、そのリアクションっ!」

「何ですって?」

「ってか、それよりもーー拙い、もう来たっ!」

 オレが睨んだ時にはその方角から2匹が凄い速度で飛来してきた。

 両方ともアラクネーだった。

 1匹は珍しい蝶の翅の雌型のアラクネー。

 もう1匹は蠅? っぽい翅のこっちも雌型のアラクネー。

 人間のふりなんてしてないから最初から完全にアラクネーだ。

 そして昨日のとは違う。

 炎じゃない。

 助かった~。

 と思った瞬間、

 パピヨン・アラクネーは闇。

 フライ・アラクネーは風。

 ーーに、なりやがった。

「はぁ~? 全員、逃げーー」

 背鞍から立ち上がったオレが、またもや右手で無印とcoldのスプレー2本を出して器用に握って噴射しながら、左手でピピーを隠した時には、





「おまえ、人間にしては強いな?」





 風になったフライ・アラクネーの方がオレの眼前に居やがった。

「ーーなっ!」

 だが、オレが驚いたのはソイツの接近速度が早過ぎたじゃない。

 ソイツの凄い速度の移動の余波の風で噴射したはずのスプレーが吹き飛んだトコだ。

 スプレー噴射後の残留3秒ルールを無効化しただと~?

 後、無駄に美人なのと男言葉なのが気に要らないぞっ!

「くそっ!」

 スプレー缶で殴り掛かるが、その時には間合いの外に高速で移動していた。

 何でだ?

 動きに付いていけないぞ?

 【アラクネー神殺し】があるのにっ!

 そうか、攻撃や防御だけで戦闘速度は上がってなかったんだった~。

 それでも効果はあったみたいで、ソイツが、

「おまえ、硬いんだな? そっちは【身代わり】かよ、製造法はもう全部抹消したはずなんだがな」

 何の事かと思えば首筋を負傷していた。

 前世のひげ剃りのCMばりに「切れてな~い」だけど~。

 トミナさんの方も、

「えっ、アラン殿に借りてた首飾りがーー」

 マジで?

 【身代わり】の魔法のアクセサリーが壊れたって事はトミナさん、致命傷を負ってたの?

 クソ。全く相手の動きが見えない。

 速度が違い過ぎる。

 さすがは蠅だわ~。

 蠅叩きがないと分が悪過ぎるだろ。

 だがね~。

 こっちも人間様なんだ~。

 虫ごときにやられたとあっちゃ~、前世の農家の皆様に申し訳が立たないんでね~。

 でも、どうやって倒せばいいんだ、これ?

 攻撃魔法も避けるだろう、あの速度だと?

 前世でも素手で蠅を倒すなんて無理だから~。

 達人の空手家が箸で蠅を捕まえたらしいけど、オレは普通の蜜柑農家だから~。

 せめて丸めた新聞紙でもないと。(0.1秒)

 オレがそう思った時、

「(ドクン)――な、何だ?」

 距離を取ったフライ・アラクネーが苦しみ出して動きを止めた。

「何か知らんがこのチャンスを逃すかっ!」

 【浮遊落下】の魔法の腕輪を外すと同時に、命綱を切って背鞍からジャンプして空中の20メートル先に浮いてるフライ・アラクネーに突進する。





「あら、私を忘れてるのね?」





 なんて余裕の言葉と共に、闇になったパピヨン・アラクネーが間に入ってくるが。

 その距離、3メートル。

 (昨日の炎の奴と同様で)気持ちの悪い闇を纏ってるどころか、全身がなってる。

 触りたくもなかったが。

 マヌケな虫にはこんな言葉を送ってやろう。

 愚かなり。

 バ~カ、最初からおまえが狙いだったんだよっ!

 と馬鹿正直には答えず、オレは、

「なっ、何だって~っ!」

 と名演技しながらも、右手で持ってる無印スプレーを1個投げた。

 空中で、それもピッチングフォームじゃないが、オレの今のLVは766だ。

 投げたスプレーの速度はピッチング投球じゃなくても早い。

 闇と激突した。

 無印スプレーがベゴッと破壊されて、スプレーの残数(26)の総てが周囲にボシューッと散布される。

 ナ~イス。

 避けずに破壊してくれて。

「ウプッ、何、これ、ーーゲボっ!」

 驚き、そして闇が3分の1まで減って闇から実体に戻り、紫色の吐血をするパピヨン・アラクネーの横を素通りして、

「おらああああ」

 フライ・アラクネーに迫った。

 最優先はコイツだ。

 調子が悪い今、倒しておかないと。

 フライ・アラクネーの方は移動しようとしたが、

「クソ、身体が――」

 マジで不調らしいな?

 理由は知らんが、このチャンスは逃さないぞっ!

「おらよ、男言葉っ!」

 もう1個の無印スプレーを投げた。

 本当に不調で避けれないらしい。

 その為、風の刃で撃ち落とすが、そんな事をすればスプレーが割れて中の残数をボシューッと噴射だ。

 それを浴びて、

「何だ? ゲブッーーまさか、毒? だが、アラクネー邪王のオレ達には効かないはずーー」

 その言葉と共に、風から実体に戻って浮力を失ってフライ・アラクネーは墜落していった。

 振り返れば、パピヨン・アラクネーの方も墜落している。

 オレはステータスを見て、ニヤリどころか、ハァーッハッハッハッと高笑いを上げながら【浮遊落下】の魔法のアクセサリーを再装備したのだった。





しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

処理中です...