オレはスキル【殺虫スプレー】で虫系モンスターを相手に無双する

竹井ゴールド

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ジオール王国炎蝗編

格上の炎の蝗系アラクネー(仮)

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 この邂逅は偶然だったのか。

 それも必然だったのか。





 ◇





 王都オングスに到着したオレ達を待っていたのは陥落3日後の完全に燃え尽きた後の瓦礫の都市だった。

 もうファイアグラスホッパーは1匹も居ない。

 住民もだが。

 だが、人間は居た。

 救援に出向いた勇気ある地方の飛獣部隊がチラホラと。

 それが敵勢力と戦って燃やされてた訳だ。

 敵勢力は1人。

 火事跡泥棒の魔術師である。

 ライアナさんの判断は、

「アラン、お願い」

 だったが、ワイバーンの飛行中なのでオレの手の中に居るピピーはピピピッと警戒を示した。

 何となくピピーの言葉が分かるオレが理解したところによると「あれ、よこしまなる存在ものだよ、やっちゃえ」だった。

 邪なる存在レーダーを持つオレも何となく「そうだろうな」とは思ってたが、これで確信が持てた。

「降下はなしっ! この高度を保って、ラミナさん。魔法で遠距離から攻撃するからっ!」

 ワイバーンの背鞍に立ち上がったオレがラミナさんにそう指示すると、





 聖なる女神よ、光明よ。

 天空より地上の邪なる存在を討ち祓う聖なる剣を貸しあたえたまえ。

 我は聖なる女神に願う。地上に蔓延る悪しき存在ものへの断罪を。

 我は聖なる女神に願う。地上の闇の眷族達の駆逐を。





 との詠唱中に地上から攻撃がきた。

 ファイアグラスホッパーの大群100匹くらいが、魔術師が作った炎の中から放たれてくる。

 おいおい。

 自然現象じゃなかったのかよ?

 あっーークソ、集中が途切れた。

 もう一回最初からだ。





「アラン殿」

「逃げて、トミナさん。詠唱に集中させて。命綱があるからオレは大丈夫だから」

「ええ」

 トミナさんがワイバーンを操ってファイアグラスホッパーから逃げる中、





 聖なる女神よ、光明よ。

 天空より地上の邪なる存在を討ち祓う聖なる剣を貸しあたえたまえ。

 我は聖なる女神に願う。地上に蔓延る悪しき存在への断罪を。

 我は聖なる女神に願う。地上の闇の眷族達の駆逐を。

 我は聖なる女神に願う。聖なる剣の地上への降臨を。

 我は聖なる女神に願う。地上に楽園の構築を。

 聖なる女神よ、今ここに我が願いを聞きとどけたまえ。





「天空より大地に突き刺さる聖なる女神の裁きの剣」

 長々と詠唱してオレはどうにか今度は女神の裁き魔法を完成させた。

 そして、天空から巨大な聖なる剣が地上に飛来する。





 チュッッ、ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォンっ!





 地面に直撃したが、あの魔術師は炎の中を通る空間転移系の魔法で逃げていた。

 ってか、オレが乗るワイバーンの正面100メートルの上空に普通に浮いていた。

 フードを被った魔術師ローブを纏った地上に居た奴が。

 でも炎の姿と2重にダブって視える。

「女神の代行者だと? もしかしておまえか? ナダリーナを殺したの?」

 声が頭の中に直接響いた。

 ナダリーナ?

 ーー何だ、そりゃ?

 ってか、それよりも眼の前のコイツだ。

 もしかしてオレよりも強い?

 と思った時にはその魔術師が行動に移っていた。

 全身が燃え出した。

 2重に視えてた方の姿になる。

 人型の炎になった。

 こっちが本当の姿っぽい?

 そして眼が昭和ラ○ダーばりにデカかった。

 ーーあれ?

 コイツ、燃えてるけど、もしかして本当に種族、蝗系のアラクネーか?

 なら殺虫スプレーが効く?

 と思った時には空中なのにジャンプで一跳びで突っ込んできた。

 速度は光速。

 一瞬だった。

「ーー早っ!」

 ピピーを左手で持って身体の右側を前に出して、右手の中にcoldスプレーと無印スプレーの2本を器用に出して、人差指と中指で押して2本のスプレーを噴射する(本当に器用だろ?)。

 相手もオレの行動に気付いてたが、構わず突っ込んで、





 ドゴォォォォォォォォンっ!

 ボンっ!

 ボンっ!





 爆炎の攻撃をモロに喰らった。

 ーー熱っ!

 異世界ファンタジーの初の被弾がかよっ!

 LV566のオレじゃなきゃ死んでるだろ、これ?

 ってか、動きが早過ぎて、オレの分身も対応出来てないしっ!

 ワイバーンの背鞍から伸びた命綱なんて簡単に焼け切れて、吹き飛びながらオレは毒づく。

 ーーいや、それよりも今、検証すべきは、爆発したスプレー缶だっ!

 二つとも爆発して中身が噴き出したが、オレは無傷。

 さすがはスキル【殺虫スプレー】だぜ。

 そして爆発の勢いを殺す【浮遊落下】状態で吹き飛びながら敵を睨んだ。

 炎の出力が爆発したcoldスプレーの冷気で削れたのか、半分くらいに小さくなってた。

 更に、





「げふっ、何だーーこれはっ?」





 殺虫スプレー2つのダメージを喰らってる?

 ピヨピヨ。

 左手のピピーを頭の上に乗せて、オレは遠慮なく、

「聖なる矢」

 ピピーによる無詠唱で2本の聖矢を出した。

 新たに右手にcoldスプレー、左手に無印スプレーの2本を出して、コーティングして発射する。





「その程度の聖魔法攻撃がーーごふっ、何だ、さっきから?」





 ダメージを負わないと高を括って飛来する聖矢魔法を避けもしなかった炎の蝗系のアラクネーがオレの聖矢魔法を受けてダメージを更に追う。

 コイツはここで殺さないとダメだっ!

 本能的にそう理解してるオレは更に、

「竜を屠る聖なる槍」

 無詠唱で出現させた聖槍魔法を殺虫スプレー2本でコーティングして発射した。

「拙い・・・」

 炎の蝗系のアラクネーが炎を出してその炎を通って転移して逃げようとしたが、

「聖域」

 オレはしれっと無詠唱で魔法を使った。

 (上空だが)エリア一帯が浄化される。

 当然、敵ーーよこしまなる存在ものは魔法禁止の空間だ。

 転移用の炎も掻き消える。





「こ、この人間風情がぁぁぁぁぁぁぁっ!」





 と吠えた炎の蝗系のアラクネーに聖槍魔法が直撃し、





「グアアアアアアアアアアアアアアアアア」





 断末魔を上げてその蝗系のアラクネーの炎は霧散して消滅したのだった。





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