96 / 140
ジオール王国炎蝗編
ライアナ・ブルーレジン、再び
しおりを挟むそんな訳でやってきました、マチルダーズ連合のローセファースの街から国境を越えたすぐ隣のジオール王国の辺境の街、モルゼス~。
ワイバーンでジオール王国の国境に侵入すると同時に、警戒してたワイバーンに乗るジオール王国の魔法騎士にいきなし呼び止められてモルゼスの街まで誘導されて~。
「この非常時にマチルダーズ連合が何の用だ?」
20代の好青年の魔法騎士が質問し、トミナさんが対応してる。
ジオール王国のこの魔法騎士が仕事熱心なのも分かる。
王都オングスの陥落情報が流れてるんだ。
国境を守る魔法騎士としては正しい行動だろう。
そうでなくてもサンドワームの死骸が毒沼化してる国境だ。
地上の交易ルートが毒沼で寸断されて、迂回する為の街を作らないとダメと何かと物騒なんだからな。
でもさ。
オレの身にもなってくれよ~。
せっかくやる気を出してジオール王国に乗り込んできたのにさ~。
秒で邪魔されたんだよ~。
今のオレのテンションは、当然、『やってられるか』だった。
はい、もうやる気なくした~。
カエルが鳴くから帰~えろっと♪
トミナさんが説明する事5分、遂には奥から上役が出てきた。
「おまえ達か? ジオール王国の窮地に嘴を突っ込んできたマチルダーズ連合ってのはーーあれ、アンタ、確か?」
褐色肌の獣人のお姉さんがオレを見て言い、オレも、
「あっ、シックスパックの腹筋のお姉さん」
鮮明に覚えてる。
今世で初めての裸のお姉さんで、初めての裸の獣人のお姉さんだったから~。
これで腹筋がシックスパックじゃなかったらな~。
「変な覚え方をしてるんじゃないわよ。私の名前はライアナ・ブルーレジン。ブルーレジン辺境伯家の次の当主で、王都に行ったお父様の安否が不明な状態の現在は全権代理よ。ってか、やっぱりあの時のよね?」
「ええ、どうも。自称マチルダーズ連合出身のお姉さん」
そう嫌味を言ってやったら、
「何の事?」
キョトンとされた。
あのね~。
「もしかして覚えてないの? 自分で言ったのに?」
「――えっ、私が言ったの?」
「うん。オレが『マチルダーズ連合に向かう』と言ったら」
「ふ~ん。まあいいわ。どうしてマチルダーズ連合の魔法騎士と一緒なの?」
「ジオール王国出身なのにマチルダーズ連合で冒険者のクランを結成して監視されてるとしか」
「なんてクラン名なの?」
「【氷の百合】ですよ」
オレがそう名乗ると、シックスパックのお姉さん、いや、ライアナさんが、
「えっ、もしかしてーーアラン・ザクってアナタなの?」
「はいな。良く知ってましたね、オレの事~」
「有名だからね、その名前。ってか、そう、アナタが。へ~、道理で強い訳だわ~」
何か色々と勝手に納得された後に、
「『帰国を嫌がって魂までマチルダーズ連合の人間になった』と聞いてたけど、来訪の目的は何?」
はあ?
何、それ?
ああ、あの外交官がある事ない事言ってる訳か。
まあ、どうでもいいけど。
ーーいや、良くない。
どうせ、あの馬鹿息子さん、死んでるっぽいし、ここは、
「帰国しなかったのは『帰国するな』と使節の人に言われたからですよ。『自分が即位する時に呼ぶから』と。直後にこの騒ぎでしょ? 『本気だったんだ~』ってビックリしちゃって」
適当な事をぶっこき返しておいた。
「それってーー今はそっちはいいわ。来訪の目的は何なの?」
「『ファイアグラスホッパーの大群がマチルダーズ連合に来たら面倒なので、ジオール王国内で退治して来てくれ』との依頼を受けまして」
「待って。退治出来るの?」
「ええ、多分。ファイアキラーアントなら退治した事がありますし」
「ならすぐに退治してちょうだい」
「そうしたいのは山々なんですが、モルゼスの街で足止めされておりまして」
今この状態の事ね~。
今回は嫌味が通用したらしくライアナさんが、
「何、嫌味かしら? これからは足止めはなしよ。私も一緒に出陣するから」
「倒した後、カッコ良く立ち去りますから。それでいいならどうぞ」
「ええ、それでいいわ」
言った事、忘れてそう~。
それがオレのライアナさんの印象なのだが。
◇
ワイバーン。
飛行する騎獣ーー人間に従う飛獣の中で最高速度の騎獣である。
まあ、今世の異世界ファンタジーにもペガサスは居てそっちの方が速いらしいが、ペガサスはレア中のレアで購入出来ないので。
「購入出来る飛獣の中で」って意味で。
そんな訳でモルゼスの街から王都オングスを目指していた。
隊列はオレとトミナさんが乗るワイバーンと、ライアナさんが1人で乗るワイバーン。
それにライアナさんの部下のワイバーンが30匹。
さすがは国境を守る辺境伯家。
ワイバーンだけでこんなに所有してるとはね~。
この隊列でオレ達は王都オングスを目指したが、そこまで出向くまでもなかった。
真っ昼間に空が文字通り燃えており、見ればファイアグラスホッパーの大群だった。
その数、およそ500匹。
報告よりも300匹も多い。
まあ、問題ないけどね~。
ゼロ距離ならともかく5キロ以上先を飛んでるのを発見したのだから。
スプレーを使うまでもない。
「聖なる光よ、600本の矢となり我が敵を倒せ、聖なる矢」
ワイバーンの背鞍の上から呪文を詠唱して、聖矢600本を放った。
殺虫スプレーで塗せる量ではないので通常の魔法攻撃だ。
聖なる矢が前方に飛んでいき、次々にファイアグラスホッパーを撃ち落としたのだった。
「相変わらず凄いですね、アラン殿の魔法は」
操縦席に居るトミナさんがナイスリアクションを取る中、
「まあね~」
でもまだ20匹程が空中に残ってる。
「聖なる光よ、30本の矢となり我が敵を倒せ、聖なる矢」
オレは第2射を発射した。
それで全部を撃墜する。
正確には、墜落の途中で燃え尽きて全部消えた、だが。
「じゃあ、退治したので帰りますね」
隣で唖然としてるライアナさんにオレが声を掛けると、
「ーーま、待て、アラン。全部倒して貰わないと困るわ」
「だから今のでーー」
「報告では2000匹でしょ」
「はい?」
258
お気に入りに追加
639
あなたにおすすめの小説
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる