オレはスキル【殺虫スプレー】で虫系モンスターを相手に無双する

竹井ゴールド

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ジオール王国炎蝗編

トミナ・フラサーユ

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 オレは前世の記憶持ちである。

 その前世でのオレは貧乏蜜柑農家で、最終学歴は農業高校だ。

 農薬が開発される以前から日本ではいなごは無縁だが、蝗の事はそこそこ知ってる。

 お隣の中国では蝗災と言って大量発生すると田んぼは全滅した事とか。

 まあ、オレが最初に知ったのは三国志の漫画で、その後、三国志のシミュレーションゲームの季節始めに出る蝗災の表示で何か凄そうとの認識だったのだが。

 だってあれ、兵糧が減るんだもん。





 ◇





 それの異世界バージョン。

 2メートルサイズの燃えてる蝗、ファイアグラスホッパーが大量発生してジオール王国の王都オングスを襲撃。

 王都オングスは綺麗に燃えたそうだ。

 虫系とはいえ、モンスターなのだ。

 燃えてる虫の癖に人を喰らうらしいが。

「そんなのがマチルダーズ連合の領地に飛んできたら困るので、飛んでくる前にジオール王国に出向いて退治して来てくれ」

 それがオレを呼び戻したノルメ閣下の言い分だった。

「あのですね~、気軽に言ってくれてますけど、相手は空を飛んでてーー」

「飛獣で出向けばいいだろ? グリフォンを持ってるんだから」

「はあ? 領域侵犯ーー」

 おっと、これは前世の言葉だな。

「――コホン、国境を越えて飛んでもいいんですか?」

「非常時ならばな。救援なら『あり』って事になってる」

「ーー本当なんですよね、そのファイアグラスホッパーの大量発生の話? この前のラジカーンの時みたいに罠って事はないでしょうね?」

「アランをジオール王国に帰国させる為にか? これだけ大騒ぎになってるのにあり得んだろ、さすがに」

 ふむ。

 大量発生のファイアグラスホッパーね~。

「何者かが操ってるとかってのはないんですよね?」

「ファイアグラスホッパーが操られてるって事か? ないだろ、下位種ならともかく上位種の虫モンスターを操るなんて」

 ホントかよ?

 そういう楽観視が一番危険なのに~。

 ムカデの人型モンスター、センティピード・アラクネーが大ムカデを操ってたみたいに、バッタの人型モンスター、グラスホッパー・アラクネーなんてのが居たら洒落にならないから~。

 ーーん?

 待てよ。

 グラスホッパー・アラクネーって、もしかして日曜の朝の特撮の仮面ラーーいや、最後までは言わないけどさ~。

 もしかして居るのか?

 少し興味が湧いたな。

 居るなら見てみたいっていうか。(0.1秒)

 少しやる気が出たオレは、

「オレ、ワイバーンがいいな~」

 そうノルメ閣下におねだりをした。

 オレが持ってるのはグリフォンだ。

 つまり、貸せ、と言ってる訳で、ちゃんとノルメ閣下にも意味が通じて、

「このガキ、足下を見やがって」

「だってグリフォンって遅いし~」

「チッ、モスヘンバウワーの代表閣下に確認を取る。待ってろ」

 そうノルメ閣下は不機嫌そうに席を立ったのだった。





 あれれ?

 もしかしてノルメ閣下、忘れてな~い?

 オレに100億円借りてる事~。

 前世だったら借主にヘコヘコされるはずなんだけどな~。

 ホント、あり得ないわ、異世界ファンタジーって。

 ーーいや、もしかして身分差か?

 官の方が民よりも偉いっていう。

 それなら前世でもあったな~、親方日の丸って奴が~。





 ◇





 2時間待ってワイバーンに乗れる事になったのだけれど~。

「許可は降りたが操縦はダメだとさ」

「つまり監視を付けるって事?」

「そういう事だ。トミナ、頼んだぞ」

「はっ」

 オレ担当なので、オレのローセファースへの帰還に着いてきてたトミナさんが返事した。

 トミナさんは当然、マチルダーズ連合の魔法騎士の恰好だ。

 因みに(マチルダーズ連合の敵認定だった事から)アースセブンケルベロス討伐にも参加しており、経験値ブーストもしている。

「よろしくね、アラン殿」

「うん、トミナさん」

 その後、オレはワイバーン騎士から説明を受けた。

 ワイバーンの飛翔時間と休憩時間の関係性とか。

 夜間の飛行を嫌がるとか。

 空腹時に空地問わず餌となるモンスターを追い掛ける習性があるとか。

 ダメージを受けたら言う事を聞かない気性の荒さとか。

「ファイアグラスホッパーの規模は200匹との報告だったが、このテの報告には幅がある。多い場合もあれば少ない場合もだ。その辺を踏まえて臨機応変にな」

「? 少ない場合とかあるんですか?」

「王都オングスで魔法騎士団の精鋭に倒されて数が減った、または大袈裟に言っただけで最初から少ないとかな」

「へ~」

 と喋ってると、ノルメ閣下がワイバーンの確認をしてるトミナさんを見ながら小声で、

「アラン、おまえ、トミナの素性は知ってるか?」

「いいところのお嬢さんって事はうっすら本人から聞きましたけど詳しくは聞いてませんね」

「前代表トミロ・モネオの曾孫だ。絶対に殺すなよ」

「そんなに大切ならどうしてオレに付けてるんですか?」

「色々あるんだよ」

「どう色々あるんですか?」

「大人物だった前代表の息子はただのダメな2代目だったらまだマシだったんだが、悪知恵の働く嫌な奴でモロに怨みを買いまくっててな。昔、前代表に命を助けて貰った律儀な騎士が何とか2代目の怨みがその子孫にいかないように頑張って助けてる、みたいな」

「もしや律儀な騎士って?」

 オレがノルメ閣下を見ると、ドヤ顔で、

「そういう事だ」

「自分で言いますか、律儀とか」

「五月蠅い。任せたぞ」

「へ~い」

 そんな事を喋ってオレはトミナさんが操るワイバーンで出発したのだった。





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