オレはスキル【殺虫スプレー】で虫系モンスターを相手に無双する

竹井ゴールド

文字の大きさ
上 下
92 / 140
レコアーヌ公国掌握編

暗殺

しおりを挟む





 襲撃事件を聞いた老王が、

「申し訳なかった、英雄殿」

 別室でそう謝罪してきたが、

「ミラリンク殿下を手に掛けたのは事実ですから」

 オレはしおらしい事を言って好感度を更に上げておいた。





 ◇





 さ~て、夜になった。

 今夜は老王の頼みでギラドニール宮殿で一泊する事が決まっている。

 晩餐会で夕食を美味しくいただきました~。

 毒が入っていないのを。

 やっぱ美味いな、宮殿の料理はどこも。





 当然、本番はここからだ。

 まずは風呂。

 侍女に扮した貴族のお姉さんがオレの身体を洗ってくれたから~。

 いや、だって。

 髪を縦ロールにして、高級な香水をした侍女なんている訳ないし~。

 一瞬「お色気系の暗殺者か」と警戒したが、「オレとお近付きになりたい」だけの貴族のお姉さんでした~。

 伯爵令嬢のミリューネット・アーベさん。17歳。

 昼間の貴族の挨拶回りの時に居た事をオレも遅蒔きに思い出したが、礼儀として気付かないふりをして前も洗わせたら赤面してたから~。

 初々しくて実に良かった~。

 おっと、これだとセクハラオヤジだな。





 まあ、遊びはここまでとして。





 ◇





 客間のベッドに入ったら当然、襲われた。

 エッチ系のお姉さんじゃない。

 賊の方だ。

 銀陸王を倒せるくらい強いオレだ。

 そんな強者に挑むのだから相手も襲撃は万全を期しており、まずは昼間の内にオレが宿泊予定の客間のベッドの下の床に魔法陣を作成。

 LVを弱める魔法陣で「オレの力を弱めた」ところを襲撃だそうだ。

 ったく、オレは災害級のモンスターか何かかよ?

 まあ、オレはモンスターじゃなくて人間サマなのでね~。

 魔法陣を無効化したぞ、当然。

 とドヤ顔で言いたいところだけど、気付いたのはオレじゃなかった。

 勤勉なる我が透明分身が気付いて、棒を出して床に描かれた魔法陣を殴って、それで魔法陣を無効化。

 オレの方は分身のその行動を見て、

 何をやってるんだろ、もしかして狂った?

 そう呑気に思ったもんだが。

 いや~、さすがは我が分身。

 これからも頼りにしてるからね~。

 そんな訳で弱体化の魔法陣が発動してると思ってる賊が30人も押し寄せてきて、

「ミラリンク殿下の仇だ、掛かれえええええっ!」

 黒布で顔を隠しもしていないオッサンの号令で、

「うおおおおおっ!」

「ミラリンク様、冥府から見ていて下さいぃぃぃっ!」

 同じく顔も隠していない魔法騎士達が突っ込んできたが、

「鬱陶しいわっ!」

 オレはアースドラゴンの牙棒を振り回し、透明分身も活躍して、

「ぐああああ」

「何だ、今の攻撃は? 遠隔攻撃?」

「ーー強いっ! 弱体化させてこの強さかっ!」

「化け物めーーギャアアア」

 賊がナイスリアクションをしてたが、余裕で倒した。

 全員を撃破した直後に、

「大丈夫ですか、ザク様っ!」

 警備の魔法騎士達が現れた。

 ザク様って。

 家名で呼ばれると萎えるな~。

 そうだ、ザクだったんだ、オレ。

 気を引き締めないとな。

 一撃で倒されたら洒落にならないから。

 オレがそんな事を思ってると警備の魔法騎士達が賊の顔触れを見て、

「ベルエー隊長まで? どうして?」

「なんて恐れ多い事をーー」

「全員逮捕だっ!」

 倒れた侵入者達を捕縛して引っ立てていき、オレが興味本位で、

「どうして宮殿の一角ごと魔法で爆発とかさせなかったの?」

「そんな卑怯な事が出来るか」

 それがベルエー隊長と呼ばれたオッサンの言い分だったが、

「いやいや、寝込みを襲ってる時点で十分卑怯だから」

 オレのツッコミに賊の魔法騎士のオッサンはガックシと肩を落としたのだった。





 これで終わりではなく、また襲われた。

 どうやらあの公子(いや正確には公孫だが)は本当に外面だけは良かったらしい。

 襲撃の下準備として、まずはドアが薄く開けられて外から焚かれた「眠りこう」を室内に充満させて、眠らせたところを侵入する算段だったようだが、

 オレの勤勉なる透明分身の射程範囲内だったらしく、ドアの外で、

「グアアア」

「なっ、どこから攻撃をーーグオオ」

 戦闘を始めてしまい、

「クソ、こうなってはーー構うな、部屋に突撃だっ!」

 と室内に8人が侵入してきた。

 当然、負ける訳がなく、

「グベシャアア」

「ーー化け物めっ!」

 8人全員を倒して、今回は警備が眠らされててなかなか来なかったので、

「で? 後何人くらい居るのかな?」

「誰が喋るか。呪われろーー(ミシッ)グアアアアアア」

 オレが相手の手の甲を踏んで拷問した訳だが、なかなか年季が入ってて口を割らず、その間に警備の魔法騎士達が、

「ザク様、大丈夫ですか?」

 はあ~。

 このザク様って呼ばれるのには慣れないな~。

「ああ、頼むね」

「はっ」

 この8人の賊も逮捕されていった。





 ◇





 2回も襲撃があったのだ。

 こうなるとオレの部屋のドア前の廊下には警備が張り付き、窓の外側にも警備が立った訳だが、宮殿には御存知、隠し通路がある。

 ギラドニール宮殿にもあったらしく、オレの部屋の壁がガコッと前世の忍者屋敷の仕掛け扉のように動いた訳だが、その奥から現れたのは公太子妃のミラリー・レコアーヌだった。

 つまりはミラリンク公子の母君だ。40代の金髪の艶年増で色っぽい寝着だったが手には短剣を握っている。

 その短剣の刃には毒を連想させる魔法薬が塗られており、ベッドに近付いたミラリー様がベッドの中に眠っているオレに向かって刃を振り下ろしたのだった。

「グアアアアアアア・・・」

 と悲鳴を上げると同時に変化が解ける。

 オレから公太子のオズレンテ・レコアーヌ殿下に。

「へ? で、殿下?」

「ミ、ミラリー、お、おまえっ―――ゲボっ! 誰かっ!」

 次の瞬間、ドアや窓が開いて魔法騎士達が飛び込んできて、

「えっ、オズレンテ殿下? すぐに治療をっ! 宮廷治癒術師を呼べっ!」

「まさか、ミラリー妃殿下が?」

「なんて事を」

「乱心されたのか?」

「ち、違う――わたくしじゃないっ!」

 なんて大騒ぎになった。





 それを【遠視】の魔法のアクセサリーの片眼鏡を使ってオレは隣の部屋から目撃したのだった。

 プププ~。





 
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)

田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ? コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。 (あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw) 台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。 読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。 (カクヨムにも投稿しております)

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...