オレはスキル【殺虫スプレー】で虫系モンスターを相手に無双する

竹井ゴールド

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マチルダーズ連合功名編

ゴーストエルフ(八天賢トロビーブラード)の消滅

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 シーバヤの街とローセファースの街の距離は狼だと1日(狼の休憩込みで約7時間)掛かるので、その日はシーバヤの街のホテルに宿泊中な訳だが。

 シーバヤの街は暗殺ギルドの支部のお膝元だ。

 当然、狩り零した連中も居る訳で、犯罪組織の論理から言えば当然の事ながら報復があった。





 ◇





 何せ、昼下がりに街中に出たパリ達が狙われたのだから。

 だが、御存知、パリ達はもう強い(オレの方が強いけどね~)。

 返り討ちで、毒なんかも余裕で魔法で解毒。

 クラン【氷の百合】所属の最弱あの3人でも余裕なのだから他も余裕で3人程が返り討ちにあってマチルダーズ連合の魔法騎士団の残留部隊に身柄を移されて首都モスヘンバウワーに追加で連行されたのだった。





 ◇





 そして夜だ。

 ホテルのロイヤルスイートに宿泊中のオレの部屋まで暗殺ギルドとは違う訪問者がやってきていた。

 さすがのオレも今夜はアースドラゴン(赤)シリーズの装備を纏いながら、いつものようにバニラさんの抱き枕になっていた訳だが、LV566のオレはピピーに起こされるまでもなく、眼を開けて側頭部で眠っていたピピーを手に取って起き上がった。

「・・・どうしたの?」

「妙なのがきたっぽいよ、バニラさん」

 オレが靴下とブーツを履いてベルトを巻いてコートを纏うと、窓ガラスを素通りしてソイツは現れた。

 半透明でゴーストっぽいのが。

 おどろおどろしい悪霊のたぐいではない。

 ちゃんと人だ。

 外見が20代の、幽霊なので色がなく金髪か銀髪か分からない長い髪のエルフの男の。

 オレが構える中、

「あら、久しぶり」

 そう声を掛けたのはバニラさんで、

『よう』

 相手のゴーストエルフも答えたがーー

 その会談を台無しにしたのが我が勤勉なる透明分身だった。

 ゴーストエルフにも視えていないのだろう。

 真横でルーティーンをカマした後にメジャーリーガー日本人初首位打者スイング(右)をして横っ面をフルスイングで分殴っていた。





『ひりゅあしゅばらあああああああああ』





 ゴーストエルフが雑魚っぽい悲鳴を上げてぶっ飛ぶ中、

「ーーなっ! アラン、待ちなさいっ! その男は敵じゃないからっ!」

「えっ、どうしてオレに言うの? オレじゃないでしょ、何もしてないんだから」

 との名演技はピピーのピヨピヨとの「やれやれコール」の前に無駄に終わった。

『ダメージだと? この無敵モードにどうやってダメージをーー』

 ゴーストエルフが驚き、バニラさんが必死に、

「嘘おっしゃい、アランの精霊獣が――」

 そう指摘する前に、ゴーストの癖に鼻血を流して倒れてるゴーストエルフの横に移動した我が勤勉なる透明分身が低めをすくいあげるバッティングスイングでカッキーンとソイツの顔面を打ち、





『どびしゅばああぐぅぅぅぅーーい、今のは拙い・・・嘘だろ、消え、消えるるるるるるぅぅぅぅぅぅ』





 そしてゴーストエルフは空気に溶けるように消滅したのだった。

 あれ、今のって・・・死んだ?

 オレが眼をパチクリして透明分身を見る。

 周囲にもう敵は居ないのかつまらなそうにしてるオレの分身が居た。

 シーン。

 唖然としていたバニラさんが、5秒後、

「嘘よね? ねえ? 笑えない冗談なだけで本当は居るんでしょ?」

 口を開いて恐る恐る尋ねた。

 だが、返事はない。

 更に2回呼び掛けてゴーストエルフが居なくなった(死んだとはさすがに思っていない)と認識してから、

「ア~ラ~ン~、今のは八天賢の1人、トロビーブラードよっ? それを攻撃するなんて~」

「八天賢? 何それ?」

 初耳情報だけど。

「八天賢ってのは世界の魔術師の最高峰8人の事で、今のエルフのゴーストはトラビーブラードだったのよっ!」

「へ~」

「どうして倒したのよ?」

「いやいや倒してないよ。見てたでしょ、オレ、何もしてないもん」

「センティピードの時にアランが遠隔で倒せる事はーー」

 バニラさんに最後まで言わせず、

「あれは虫系モンスターだけだから」

「嘘おっしゃいっ!」

 クソ~。

 決め付けられた。

 まあ、実際に嘘で、勤勉なる我が透明分身がフルスイングで倒してるんだが。

 その時、コンコンッとノックがされて、

「何かありましたか?」

 ロイヤルスイートの別の寝室で寝てたミスタナさんの声だ。

「入っていいわよ」

 バニラさんの声で、失礼します、と入室したミスタナさんは当然、ブカブカのショートタンクトップとパンツという訪問着で手には剣を握っていた。

「えっと、どこか出掛けるの、坊や?」

 オレがコートを纏ってるのを見て、ミスタナさんが尋ねた。

 オレを「坊や」呼びなのがミスタナさんの通常運転ね。

 セクシーお姉さんだからオレも許してる。

「こんな時間に抜け出そうとしてたから説教をしてただけよ。ミスタナも言ってやって」

「夜更かしはダメよ、坊や」

「は~い」

 ミスタナさんは納得して自分の部屋に戻っていったが、バニラさんの怒りは収まらず声のトーンを落として、

「アラン~、今のは笑えないわよ? 八天賢なんかに喧嘩を売ったらただじゃ済まないんたから~」

 その後も説教は長々と続いたのだった。





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