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マチルダーズ連合功名編

切り込み隊長、青雷のパリオーズ

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 これで遠征は終わり、帰路に就いた訳だが。

 移動4日目。

 騒動に発展した。

 徒党を組んだ冒険者120人がクラン【氷の百合】のオレ達を待ち伏せるという騒動が。





 狼での移動中、森沿いの主街道を120人が完全封鎖しており、

「おら、ペテン師野郎のアランって奴はどいつだっ!」

「出て来いっ!」

「オレ達が直々にその実力を確認してやんよっ!」

 なんて喚いてて、バニラさんが呆れながら、

「あらら、おバカはどこにでも居るのね~」

 オレが御指名だったので、

「殴ってきていい?」

「アランはダメよ。前に人質になった5人。蹴散らしてきて」

 なんてバニラさんが許可を出すから、パリはいいとこの子なのにチンピラな性格なので、

「おらぁぁぁっ! 雑魚ども、さっさと道を開けろっ! 邪魔なんだよっ!」

 同じく低次元なチンピラ口調で返して、

「誰だ、おまえ?」

「覚えておけ、雑魚どもっ! クラン【氷の百合】の切り込み隊長、青雷のパリオーズとはオレの事だっ!」

 なんて勝手に名乗って、

「何それ? もしかしてバニラさんーー」

「付けてないわよ、私、そんな役職」

「だよね~」

 とか後方で喋ってる間に、狼を降りたパリが1人で、

「雑魚どもなんかオレ1人で十分だぜっ! いくぞ、おらぁぁぁっ!」

 と殴りかかって、小兎の精霊獣を得た事で鋼鉄魔法が使えるようになったパリが鋼鉄魔法で身体を強化してーー

「調子に乗りやがってっ!」

「喰らえっ!」

「ぐええ、強ええええっ!」

「何してる、1人相手にっ!」

「見ろ、奴のギルド証を。4本等級じゃねえかっ!」

「ぐあああ」

「背中がガラ空きなんだよ、馬鹿がっ! ーー硬ってえ、ぐえええ」

「嘘だろ、もう20人も」

「武器を使え」

「でも、それだと殺しにーー」

「そんな事言ってられるか、ここで負けた方が赤っ恥だろうが」

 そんな訳で武器を使い始めたが、

「なっ、剣を素肌で弾くって、どういう身体をーーひぶしゃあ」

「おらおらおら、雑魚どもがっ!」

 その後もパリが素手で暴れて、その様子を後方から見てる訳だが、

「魔法を使いたいって理由だけでアランの弟子になったパリも強くなったわね~」

「ってか、いいの、バニラさん? このままだと勝っちゃうよ、パリの奴、1人で?」

「いいんじゃない、クラン【氷の百合】の名前が轟くなら」

 遂には冒険者達は攻撃魔法を使い出したが、

「直撃だろうが、どうして無傷なんだ、おまーーうびしゃあっ!」

「喧嘩に攻撃魔法を使ってくるんじゃねえよ」

 その後も殴り続けて、

「ひっ、冗談じゃねえーー」

「化け物だ」

「逃げろっ!」

 喧嘩の開始から10分程で、残った30人くらいが森に逃げ出して、

「逃がすかぁぁぁぁっ!」

 テンションマックスのパリが森の中へ追い掛けようとしたところで、バニラさんが、

「そこまでよ、パリ。旅路を急ぐんだからっ!」

「ですが――」

「パリ、早く帰ろ」

 オレも待ってられなかったのでそう言うと、

「は~い、師匠。ーーってか見てました?」

 褒めて欲しそうな顔で尋ねてきた。

 仕方のない奴め。

 まあ、これも師匠の務めだ。

「ああ、見てたよ。93人を潰したの。強くなったね~。ってか、もうこれだけの実力があればオレの弟子、正式に卒業だね」

「いえいえ、まだまだ師匠に付いていきますから」

「そう? ってか、銀髪なのにどうして青雷なの?」

「英雄、青雷のリューンベルから譲り受けました」

「いやいや、パリは使えないでしょ、青色の雷なんて」

「その内、使えるようになりたいな~って意味も込めまして」

 なんて喋りながら、移動を再開したが、





 それ以降、クラン【氷の百合】の切り込み隊長、青雷のパリオーズの100人ボコ殴りの噂がまことしやかに広まったのだった。





 ◇





 帰路だからだろうか?

 リックディーストロ闇渓谷から7日目の主街道(前日の宿泊地がションドバーズの街)でまた喧嘩を売られた。

 今度は冒険者じゃない。

 20メートルサイズのセンティピード(大ムカデ)5匹にだ。

 5匹が同時なんてどう考えても不自然過ぎる。

 ほらほら、一直線にこっちを向かってくるところなんて~。

 完全にセンティピード・アラクネーが操ってるはずだが。

「使い魔持ちは周囲を確認っ! 術者を探してっ! 絶対に居るからっ!」

 攻撃されてバニラさんがそう指示を出してる頃には、オレは、

「聖なる光よ、矢となり我が敵を倒せ、聖なる矢」

 森の中300メートル先に隠れてるセンティピード・アラクネーに向かってムカデ専用スプレーをまぶした聖矢魔法を放ったのだった。

 いや~、どうしてかは知らないけど居るのが分かったからさ~。

 攻撃するよね?

 聖矢魔法が命中して、

「ギャアアアアアアアアアアアア」

 との断末魔が遠くから聞こえた後、5匹のセンティピードが統制を失ったが、オレには仕事の速い透明分身が居る。

 オレの透明分身が2匹のセンティピードをムカデ専用スプレーの二刀流で倒し、

「アラン、待ちなさいっ! センティピードは他のクラン員のLV上げの為にーー」

 いやいや、無理だから~。

 オレの透明分身はこっちの指図なんて聞かないし~。

 透明分身が3匹目を倒したところで、センティピードの1匹が地中に逃げようとするが、

「逃がすかっ! 聖なる矢」

 オレが無詠唱でムカデ専用スプレーをまぶした聖矢魔法を放って、地中に逃げようとしたセンティピードを倒した。

 その時には5匹目を透明分身が倒してあっという間に決着し、

「アラン~」

「いやいや、これには深い訳が――」

「ってか、どうやって4匹を倒したのよ?」

 バニラさんが声を出して質問したけど、他のクラン所属の全員がオレの方に注目していた。

 ですよね~。

 透明分身が視えない人間には勝手にセンティピードが死んでるようにしか見えないから。

「どう説明したらいいか。なんか色々あって虫系モンスターが周囲で死んでいく、みたいな~?」

「そんな説明で分かる訳ないでしょ? もっと分かりやすく説明しなさい」

「それが説明の仕方が分からなくて~」

 これは本当だ。

 透明分身が視えていない以上は。

 それに透明分身の事を教える気なんてないし~。

 その後、オレは質問攻めをどうにかハグらかして、バニラさんのおっぱい貯金接待でもハグらかして、バニラさんが志願者を募ってベルさんもおっぱい貯金接待をしてきたが、それもハグらかして、透明分身の秘密を守ったのだった。

 ほら、手の内は隠すのがオレだから。

 太閤秀吉だってオレの立場だったら隠ーーいや、陽気に自慢しそうだけど。

 ともかくオレは透明分身の事を隠し抜いたのだった。





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