83 / 140
マチルダーズ連合功名編
モイタルダート月桂花5026輪、納品
しおりを挟む何もモンスターを討伐する事だけが冒険者の功績ではない。
冒険者ギルドにはポーションの原料になる薬草摘みなんて依頼も当然ある。
それは駆け出しの冒険者の依頼内容だったが。
では、ハイポーションやマナポーションの原料の上級薬草摘みだったら?
十分な功績となった。
とはいえ、飛獣がある今世の異世界ファンタジーだ。
普通の場所に群生しているのならば例え難所であろうとも国の魔法騎士が飛獣でサッとこなしてしまう。
との論法から、飛獣や陸獣が出向くのを嫌う場所に生息するマナポーションの製造に使う薬草、正式名称、モイタルダート月桂花(1000年以上前の賢人モイタルダートがそう命名した)を求めて、我らがクラン【氷の百合】はマチルダーズ連合が誇る最大の難所にして不思議エリアの1つ、マチルダーズ連合とアポリス王国の国境でもあるリックディーストロ闇渓谷に来ていた。
その名の通り、年がら年中、闇に覆われた渓谷な訳だが。
オレの周囲50メートルはオレが使った聖光魔法の光源が闇を掃って真昼並みに明るかった。
闇に潜むスケルトンウルフなんかも一望出来て、余裕で撃退だ
「凄いですね、師匠の聖光魔法は?」
弟子のパリがヨイショしてくる。
「まあ、属性ばかりは運だからね~。パリだって、もう上級雷魔法が使えるんだろ?」
「はい。LV100になった時に魔術師ギルドで調べたら階位が上がってて。他にも炎と治癒も」
「おお、それは凄い~」
オレも久しぶりに調べてみるかな?
でもオレの場合、ピピーとの契約の関係で聖属性だけっぽいんだけどね~。
オレはピピピッと不機嫌な頭の上のピピーを確認しながら何と無くそう思った。
さて、今回もクラン【氷の百合】総出だ。
と言うか、アースセブンケルベロスの撃破に続いて、ローセファースの街に帰る事なくマチルダーズ連合の南東側のリックディーストロ闇渓谷に来ていた。
当然、狼で陸路をトロトロと移動だ。
駆け鳥ならピューッと30分なのに丸1日って~。
さすがのオレもキレそうだったけど。
レストランで酔っ払った妖艶のダークエルフハーフのベルさんが寝るまでの3時間、オレを離さなくて、結構なおっぱい貯金の利用者になってくれたから我慢したけどね。
実に良かった~。
ピピーは時々怒ってたけど。
そして、このリックディーストロ闇渓谷のモンスターは完全に死霊系だ。
スケルトンウルフ。
スケルトン。
スケルトンキメラ。
スケルトンスネーク。
ゴースト。
レイス。
つまりは動く骨格標本や怨霊ばかりだ。
おっと、グールなんていうゾンビっぽいのも居たっけ。
それらがリックディーストロ闇渓谷の闇に紛れてゼロ距離でエンカウントするから危険なのであって、こうして見渡す事が出来て接近が分かればオレ抜きの他のクラン員でも余裕で遠距離から攻撃魔法で倒せ、オレはと言えば、
「他のクラン員に手柄を分けてあげなさい」
とのバニラさんの厳命で照明係と聖属性付与係に徹したのだった。
まあ、別にいいんだけどね~。
でも、スケルトン系だけでも250匹は居たか。
もしかして称号が取れた?
う~ん。
後、分かった事がある。
ピピーはスケルトン系やゴースト系が嫌いらしい。
虫系モンスター以上にずっと激おこだった。
それとオレの透明分身。
ゴースト系にも視えないらしい。
真正面から透明分身が近付いても気付かず、棒で殴られて消滅してたから。
◇
このリックディーストロ闇渓谷は陸獣が侵入を嫌がるのでオレ達クラ員は徒歩で移動してる訳だが。
この徒歩移動中に新たな出会いがあった。
最初に気付いたのは当然、オレの頭の上に居るピピーだったが。
ピヨピヨ。
ピピーの、あっち、との鳴き声でオレは20メートル右斜め前側にちょこんと紺色の小さな兎が姿を見せてるのに気付いた。
小兎の精霊獣だった。
へ~。
(精霊獣の森以外で)契約されていない野良の精霊獣を見るのは初めてだな~。
バニラさんも後発でオレやピピーの視線に気付き、
あらら、と苦笑した後、
「全員、あっちに注目~」
クラン員全員に精霊獣を指差して教えた。
「何ですか、師匠?」
今やバニラさんをそう呼ぶ弟子のベリロアさんがバニラさんに質問し、
「見える人~」
「何の事ですか?」
「あの小さい紺色の兎の事じゃないのか、ベリ」
視えないベリロアさんにそう教えたのは意外な事にパリだった。
「えっ、どこだ?」
「見えるか?」
「いえ」
なんてクラン員がナイスリアクションをしてる。
あれ、ベルさん、ダークエルフハーフなのに視えないんだ~。
そう言えば、オレの精霊獣も視えてなかったな~。
暗殺者もどきのエクレスさんでさえ、視えてるのに視えてないふりをしてるのに~。
オレの中でベルさんの評価が下がる中、バニラさんが、
「あら、パリだけなの? なら、パリ、契約出来るか試してらっしゃい」
「契約? ーーえっ、あの紺色の兎って、まさか」
「ええ、精霊獣よ」
「・・・ええっと、師匠はいいんですか?」
どうしてオレに話を振る。
オレにはもうピピーが居るんだよ。
「うん」
「どうしてです?」
ああ、もう。
空気を読めよ、パリ。
オレは精霊獣と契約してる事を言いたくないんだよ~。
「弟子のパリに譲るよ」
「いいんですか? 精霊獣ですよ?」
なんて言葉のラリーを数回した後、パリが近付いて恋人にプロポーズするみたいに、
「契約して下さい。お願いします」
と声を掛けて、契約していた。
右肩に精霊獣を乗せたパリが、
「ニヒヒヒヒ」
と戻ってきた訳だが、オレの頭の上のピピーを視て、
「師匠、それ」
「ああ、視えるようになったんだ~。そういう事だから。後、内緒ね」
「最初から教えておいて下さいよ~」
そんな会話をしたが、その後、パリはずっと精霊獣と契約出来た事が嬉しかったのか、ニヒヒヒヒ、と喜んでた。
パリ、おまえ、いいところの子だろ?
ニヒヒヒヒって笑い方は止めた方がいいぞ。
◇
そんなこんなで、我ら捜索隊はリックディーストロ闇渓谷の最深部の地下洞窟の泉の前まで進み、一面の花畑に出食わした。
全部が同じ白色の花。
目的のモイタルダート月桂花だ。
「嘘でしょ、まさか、これ全部がーー」
「大当たりだな」
「これだけあったらマナポーションが20万本以上作れーー」
クラン【氷の百合】の冒険者全員がナイスリアクションをしていた。
オレがバニラさんに、
「根こそぎ持って帰るの?」
「いいえ、等間隔に1本残すわ。来年も採れるように。みんなもそのつもりでね~」
あれ、このやり方、知ってるぞ。
何だっけ?
そうだ、前世の山菜摘みの時のルールだ。
来年もその場所で採れますように、って奴ね。
こうしてオレは薬草摘みをしまくって、称号【月花摘み】をゲットしたのだった。
リックディーストロ闇渓谷を見張る監視砦にモイタルダート月桂花を5000輪以上納品したら大騒ぎになったけどね。
289
お気に入りに追加
635
あなたにおすすめの小説

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます
海夏世もみじ
ファンタジー
月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。
だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。
彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる