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マチルダーズ連合奇縁編
議会招集3日前
しおりを挟むやってきました、マチルダーズ連合の首都モスヘンバウワー~。
空路の襲撃はこの異世界ファンタジーでは殆どないからありがたいよね~。
だって(一般人は飛獣が所有出来ないのだから)飛獣から素性が辿れて悪事がバレるから攻撃なんてしてこないし、センティピード・アラクネーも空中戦は(魔法のアクセサリーやアイテム以外の魔法が使えないから)得意じゃないから~。
飛翔系のモンスターもモンスター除けのアイテムがあるから寄ってこないし。
そんな訳で楽に着けて、前回来た時にセンティピード・アラクネーが41匹も死んだモスヘンバウワーにはもうセンティピード・アラクネーも居ないのか、頭の上のピピーも御機嫌だった。
そして(前回のオレの活躍を知ってる)宮殿勤務の皆さんのオレに対する敬意を払った視線。
何か気分がいいな、ハァーッハッハッハッ。
◇
早速、ルイタフ代表と面会した。
「よく来てくれた、アラン。護衛を頼むな」
何故かマジマジとオレを見ながら言ってくる。
「はあ。――ってか何ですか、マジマジと見られてますけど?」
「銀陸王を倒したと報告が上がってきたのでね」
「まあ、あれくらいは」
「その上、公子も決闘で殺したとか」
決闘で殺した?
何の事だ?
と一瞬思ったがアポリス王国の「公式回答だ」とすぐに思い出した。
なので、オレの返答も、
「名誉ある決闘で手加減は出来ませんから」
「本当は?」
間髪入れずにルイタフ代表に聞かれたので、
「内緒ですよ。ワイバーンでの帰路に覆面を被って襲撃してきた賊を返り討ちにしたら公子が混じってて大騒ぎ」
「やれやれだな~」
呆れたルイタフ代表が魔法騎士のお姉さんに視線を向けて、
「今回モスヘンバウワー滞在中のアランを担当するメリーだ。アランはメリーと行動を共にして指示に従うように」
そう紹介された。
年齢は22、3歳で、右耳を出した赤毛のワンサイドヘアのキリッタイプのお姉さんだった。
マチルダーズ連合の赤黒カラーの女魔法騎士用の装備で臨戦態勢だったが。
「あれ、アレクッスさんじゃないんですか?」
「アレックスにはマリソンの代わりにションドバーズで代理執政官をして貰っている」
マリソン?
誰、それ?
あっ、もしかしてセンティピード・アラクネーだったションドバーズの為政者?
「えっ、それって、そのまま後継者にーー」
「微妙な時期だ。余計な事は口にせんように」
「は~い」
「では、アラン殿、こちらへ」
「わかりました」
オレはメリーさんに言われて(メリーさん? あれ、何だっけ? 何か知ってるぞ。ああ『メリーさんの羊』か~)そんな事を思いながら廊下に出て、
その日は宮殿内の巡回をやらされた。
だが、本当にもうモスヘンバウワーにはセンティピード・アラクネーが居ないらしく、ピピーも透明分身も反応がない。
「えっと、多分ですけど、宮殿内にセンティピード・アラクネーは居ないと思いますよ」
「多分なら巡回をして下さい。万が一にも問題があったら大変ですので」
と真面目に答えるメリーさんの頭の上に暇なのか移動したピピーが首を振って、オレの頭に飛び移っていた。
ピピーの査定はダメな訳ね。
そもそも何の査定か分からないんだが。
ピピーも、ダメ、しか教えてくれないし~。
パリもされてたから「オレの彼女の査定」とかではなさそうなんだが。
そんな事を考えながら、(手の内を隠したくて)強くは断定出来ないオレは、
「は~い」
メリーさんとお喋りしながら宮殿内を歩いて地図を頭の中に叩き込んだ。
その移動の際に気付いた事がある。
中には敵対心を向けてくる連中も居ると。
なるほど、敵対派閥側の人間か。
面倒臭いな~。
◇
そして廊下を歩いてるとルイタフ代表陣営の人間に何度か呼び止められた。
今も、
「おお、アラン、御苦労さん」
ジョラサンさんに呼び止められてる。
巡回任務という散歩で暇なオレは、
「お久しぶりです、ジョラサンさん」
足を止めて礼儀正しく挨拶した。
ジョラサンさんが一緒に連れてる1人はリュアット・ロイドだっけ? 参謀の人だ。
もう1人は新顔の老人で、
「そうだ、紹介しておこう、アラン。こちらは魔術師学校の校長のキーン殿だ」
ジョラサンさんに紹介された。
オレは快活に、
「アラン・ザク、14歳です」
「キーンだ、よろしくな。それにしても・・・」
爺さんがオレの頭の上をマジマジと見た。
「その年で精霊獣と契約してるとは。噂通り凄いですな」
何だ、視えてる訳ね~。
ってか、バラすなよ、隠してるのに~。
でも透明の分身は視えてないっぽいな~。
「いえいえ」
「師は誰なのですかな?」
あれ、探られてる?
「同じクランのバニラさんですよ」
「魔法を習って何年なのですか?」
「1月かな?」
「――嘘ですよな?」
「いえ、本当です。オレのは高いLVでのゴリ押し魔法ですから」
「ふむ。因みにLVを聞いても?」
「20です」
「嘘ですよな、それは」
「ええ、まあ」
オレとキーンの爺さんが喋る中、ジョラサンさんが、
「ったく、真面目に聞いて損をしたわい。キーン、リュアット、行くぞ」
「はい、老師」
「畏まりました」
「老師?」
オレが聞き咎めてジョラサンさんを見ると、
「こう見えて引退した宮廷魔術師なのでな」
「へ~」
オレはそうジョラサンさんの事を見直したのだった。
夕方まで巡回した。
まあ、センティピード・アラクネーが見つかる訳もなく。
夕食はルイタフ代表に呼ばれて重鎮達と一緒に喰った。
オレが知ってるのは、ジョラサンさん、リュアットさん、キーンさん。
他にも2人居た。
マチルダーズ連合の重鎮らしい。
「アラン、くれぐれもよろしくな。倒さないように」
「代表閣下はボク(よそ行きの喋り方)を何だと思ってるんですか? やりませんよ」
あれ、自分で言ってて何だか、何かフラグっぽく聞こえたぞ、今。
そんな事を思いながらモスヘンバウワー宮殿の最高級料理の数々を堪能したのだった。
もちろん、毒なんて盛られてなかったぞ。
そしてその日の夜は、オレは宮殿の客室を与えられた訳だが。
襲撃はなかった。
エロイお誘いも。
ないのかよ~。
それはあってもいいんじゃないのかな~?
マチルダーズ連合、なってないわ。
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