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マチルダーズ、アポリス、レコアーヌ三国飛翔編

アポリス王国での陞爵

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 帰ってきました、アポリス王国のバジーナード宮殿~。

 本当はマチルダーズ連合のローセファースの街に帰りたかったんだけど、ワイバーンもその操縦者の魔法騎士もアポリス王国所属だからね~。

「ただいま帰りました~」

「どうして半日で帰ってきておるんじゃ?」

 出迎えたモスラドさんが驚いてるけど、

「えっ? 公王様が『帰っていい』って言ったからですけど?」

「何か言葉が抜け落ちておらんか?」

「ああ、『アースドラゴンを倒したら帰っていい』って言われたので倒して帰ってきました~」

「それ、のじゃよな?」

「ええ」

「倒したのか?」

「もちろん」

「・・・信じられん。銀陸王のLVは測定不能。つまりは推定LVは500オーバーでおまえさんよりも格上のはずじゃろうが」

 称号にも付いてて「聞いた事あるな~」とは思ってたけど、推定不能のLV500オーバーと聞いてようやく思い出したわ~。

 へ~、あれがアースドラゴン最強の~。

 あんなのがそうだったの?

 だからLVが147も一気に上がったのか~。(ニヤリ)

 それを魔法で余裕で倒すオレ。

 カッコイイ~。(0.1秒)

「そんな事言われたって倒せましたから~」

 髪の毛をいじるポーズを取ると頭の上に乗ってるピピーが嫌がるので、両手を腰に当てて胸を張ったポーズでオレは答えた。

「本当なのか?」

 オレではなく付き添いの魔法騎士に質問し、

「はっ、ちゃんと目撃しました」

「アースドラゴンの断末魔呪詛を喰らっておるのか?」

 モスラドさんの指摘で、オレを後部席に乗せてた魔法騎士のオッサンが、

「えっ、うわ、――ついてる」

 驚いてた。

 ああ、何かドラゴンを倒すと付くらしいね、マイナスの称号~。

 オレは付いた事ないけど~。

「それじゃあ、オレ、マチルダーズ連合に帰りますね」

「またんか。空を見よ」

 夕暮れだ。

「綺麗な夕焼けですね。それが?」

「飛獣の夜間飛行はどの国も緊急以外は禁止であろうが」

 あっ、その異世界ファンタジーの常識、グリフォンを貰う時にオレも聞いたな。

 確か、飛翔系のモンスターが追尾してくるかもしれないからで、夜の街でモンスター襲撃騒動になったら洒落にならないから禁止だっけ?

「今夜は泊ってゆけ」

「絶対に明日帰りますからね」

「一応、心に留めておこう」

 何が一応だよ。

 オレは絶対に帰るからな。

 オレはそう思いつつバジーナード宮殿に入ったのだった。





 そして速攻で絡まれた。

 お姫様に廊下で。

「本当に銀陸王を倒したのか?」

「ええ、聖槍魔法20発で」

「へ~」

 と感心してオレをマジマジと見た後、ねだるように、

「アラン、余は銀色の竜鱗が欲しいのだが?」

「ではレコアーヌ公国と交渉して下さい」

「倒したそのほうが要求すれば済む話ではないか。頼んだぞ」

「ははっ」

 どうせ断ってもオレにやらすに決まってたので無駄な問答を省き、速攻でそう答えたのだが、





 オレはまた命を狙われた。

 バジーナード宮殿内で。





 今度は露骨に夕食に毒を盛られてだが、オレのLVはもう566。

 ピピーが指摘するまでもなく嗅覚が敏感で微量の匂いを嗅ぎ分けて、

「この皿はチェンジで。毒が入ってるから」

 部屋に持ってこられた料理の一皿を指摘して、他の料理を食べたのだった。





 毒を盛られた話を聞いたのだろう。

 モスラドさんがやってきて、

「料理に毒を盛られたそうだな?」

「っぽいですね。食べてませんけど」

「今の王妃はレコアーヌ公国の公女でのう。犯人捜しはせんようにな」

「つまり、まだ公子を返り討ちにした件が長引いていると?」

「そうなるのう」

 と答えてから、

「因みに王妃とおまえさんが大好きな妃殿下とは血が繋がっておらんから安心するように」

 だろうな。

 あの雑魚公子が結婚を申し込んでたんだから。

 チラッと、近親それ権力の為に求婚したのかも、と疑ったけど。

 助かったな。あのお姫様にレコアーヌ公国の血が入ってなくて。

 血が繋がってたから、確実にまた迷惑を被ってたぞ。

 ーーって、ちょっと待て。

 何、その認識?

 どうしてそうなってる?

「大好きじゃありませんから」

 オレは真顔で答えたのだった。





 その夜は襲撃もエロイお誘いもなく、





 ◇





 翌日、バジーナード宮殿の謁見の間にて、

「レコアーヌ公国の銀陸王の二つ名を持つアースドラゴンを討伐した功績により、ザク家の爵位を男爵から伯爵に陞爵しょうしゃくする。受け取るように」

 ジェームズ国王が笑顔で言ったので、

「いえ、要りませんが」

「受け取るように」

「いえ、本当に要りませんので」

「分かった、では侯爵にーー」

「違いますよ。伯爵の位が低いと言ってるのではなく、本当に要らないのです」

「受け取れ」

「せめて子爵にしていただけませんか? 『伯爵はダメだ』とモスラド老に教えられたので」

 ジェームズ国王はチラリッとモスラドさんを見たが、

「銀陸王を倒した者を子爵にほうじたのではアポリス王国が器が小さいと思われるのでな。伯爵位を受け取るように」

 結構粘ったが固辞は無理で、結局は、

「ははっ!」

 オレは伯爵を受け取ったのだった。





 謁見の間を出た直後にモスラドさんがやってきてオレが口を開いて文句を言う前に、

「伯爵からはワイバーンの所有が認められるから羨ましいのう」

 そう告げてきた。

「えっ、そうなんですか?」

「そうじゃよ」

 なら貰ってもいいかな~。

「それにアポリス王国の冒険者ギルドのランクもいきなり虹色じゃぞ」

 アポリス王国の冒険省管轄の冒険者ギルドのランク分けは虹色だ。

 赤から始まり、橙、黄、黄緑、緑、青、紫の7段階を経て、虹色。

 つまりはトップ。

 悪くない。

「領地もないしのう。したくはなかろう、領地経営なんて?」

「ええ」

「じゃが伯爵としての年金は出る」

 そう聞くと伯爵の地位もありかも。

「でも伯爵だと・・・」

「ないない、まだおまえさんは14歳ではないか。それに他国出身のヨソ者。現実的に考えて妃殿下と結婚なんて出来る訳がなかろうが」

 んっ、何だ、この爺さん?

 この前はやたらとオレとお姫様の関係を警戒してたのに?

 言ってる事がこの前と違うだろうが。

 でも、まあ、普通は王女様との結婚なんてないか~。

「そんな訳だから、これからもよろしくのう、ザク伯爵」

 そうモスラドさんに改めて挨拶された後、オレはようやくマチルダーズ連合のローセファースの街へと旅立ったのだった。





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