オレはスキル【殺虫スプレー】で虫系モンスターを相手に無双する

竹井ゴールド

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マチルダーズ、アポリス、レコアーヌ三国飛翔編

バジーナード宮殿の夜

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 お客さん扱いというよりは囚人扱いだな~。

 室内のドアの横に魔法騎士が4人も並んでるんだから~。

 バジーナード宮殿のデカイ一室を与えられたけど視線があるから落ち付かないし~。

 オレのマイブームは食べれるモンスター図鑑の暗記なのでオレは自腹で購入した図鑑を読んで、時間を潰したのだった。





 さて夜だ。

 オレは当然のように黒布で顔を隠した馬鹿に襲われた。

 ピピーに起こされるまでもない。

 部屋の暖炉がガコッとか小さく音を立ててスライドして、そこから入ってきたのだから。

 賊は1人だった。

 オレは当然のようにベッドの上で薄眼を開けて寝転んで賊が近付くのを待ったのだが、オレには勤勉なる透明分身が付いてる。

 制御不能なので、賊がベッドに近付く前に分身がバットスイングでぶっ飛ばして、

「キャア」

 とか悲鳴を上げたので、おいおい、もしかして、とオレが近付いたら、分身のLVは80ちょっとだからその攻撃で気絶していなかった賊が覆面を取って顔を晒した。

 やはりお姫様だった。

 名前は確か、アンリ・イナ・アポリス。

「何か御用ですか?」

「どっちが強いかはっきりさせておこうと思って」

 今、殴られたダメージをアイテムボックスから出したポーションを飲んで回復してるし~。

「へ~」

 何言ってるんだ、このお姫様?

 あの初対面のオレの華麗な高速アッパーカットで序列はもうはっきりしてるのに~。

「で、今の、どうやったの?」

「もちろん秘密です」

「教えなさいよ。さもないと大声を出すわよ」

「?」

 意味が分からない。

 この状況で人を呼んで困るのは賊の格好をしたお姫様のはずだが?

「だ~か~ら~、夜の寝室で2人っきりのこの現場を他の者達が見たら、ソチは余と逢い引きをしていた事になりーーあっ、もしかして余と結婚したいの?」

「全然」

「よね。なら教えなさい」

 魔法で分身を出しただけですよ、って適当をぶっここうとしてーー

 このお姫様は性格がぶっ飛んでる。

 嘘だとバレたら報復されそうだな~。

 そう考えを改めたオレは正直に、

「LV400越えの報酬の称号ですよ」

「何それ、詳しく教えなさい」

「ーー他言はなしですよ?」

「ええ」

「分身が出るらしいです、透明の。制御も不能ですけど」

 喋り過ぎたか?

 いや、このお姫様は扱いがかなり厄介だ。

 教えても問題ないだろう。

「透明の? もしかして、あの時の謁見の間でモンスターが正体を現したのってーー」

 あれ、馬鹿だと思ってたけど、意外に頭がキレる?

「内緒ですよ」

「本当に誰も視えてないの?」

「いえ、魔眼持ちのモスラドさんが――」

「ああ、ジイには視えてた訳ね」

「そういう事なのでお帰り――」

 オレは窓の外を見た。

「何?」

「――しっ」

「(もしかして敵?)」

「(っぽいです)」

「(どこ?)」

「(ほら、あの遠くにある低木の付近ーー)」

「(まだ全然遠いじゃないの。でもホントに居るわね。ベッドに入って待ち構えるわよ)」

「(えっ、帰って欲しいんですけど)」

 わがままお姫様が帰る訳もなく、オレ達が一緒にベッドインして待ち構える事2分。

 ようやく(静かに窓を割って)施錠を外して窓を開けた馬鹿が部屋に入ってきた。

 今度は8人も。

 訪問着は当然、賊の正装の黒尽くめだ。

「余が倒すから手を出すんじゃないわよっ!」

 何故か黒布で顔を隠し直したお姫様がベッドから飛び出してそんな事を言ってたが、オレには制御不能の勤勉なる透明分身クンが居るんでね~。

 オレが何もしなくてもフルスイングで1人を吹き飛ばした。

「グアアアア」

「何だ?」

「何をやった、今?」

「遠隔? 気を付けろーー」

 黒尽くめ達が警戒する中、

「気を付けるも何も、そのほうらはここで余に倒される運命さだめなのよっ!」

 そう言ってお姫様が剣を抜いて切り掛かってた。

 デカイ魔法玉が剣の刀身に3個も嵌り、柄に1個追加の凄い剣で。

「グアアアアアア」

 一刀で敵の剣を真っ二つに折りながら黒尽くめの1人を斬り伏せる。

 お姫様じゃなくて、あの剣が凄過ぎるな~。

「その剣ーーまさか、姫将軍だと?」

 ああ。らしいね、お姫様の役職。

 確か国王直属の独立部隊だっけ?

 まあ、配下は女魔法騎士100人らしいけど。

 でも隊長じゃなくて将軍。

 さすがは身分社会の異世界ファンタジーだよね~。

 16歳で将軍って。(0.1秒)

「どうして、ここに?」

「男爵と恋仲だという噂は本当だったのか?」

 ちょっと待て~い。

 その噂は困るぞ。

「誰が恋仲だっ!」

 そんな訳でお姫様が4人を斬り伏せ、オレの分身が2人を殴り飛ばした時には、残る2人が脱出しようとしたが、

「聖なる矢」

 無詠唱の聖矢魔法で足を貫通させて(学習しただろ?)生け捕りにしたのだった。





 その後は大騒ぎだった。

 賊に襲われた事よりもお姫様が暗殺者の格好でオレの部屋に居た事がバレて。

「夜中にコヤツの部屋で何をやっておられるんですか、妃殿下?」

 モスラドさんがまた怒ってる。

 その内、頭の血管が切れて卒中で死ぬんじゃないか?

「うるさいわね~。賊を倒したんだから結果オーライでしょ、ジイ」

「結果オーライな訳がないでしょっ! 一つ間違えば妃殿下が死んでいたんですよっ! 分かってるんですかっ?」

「余がこの程度の賊に負ける訳がなかろうが」

「そういう事ではなくてですな~」

 いやいや、お姫様に説教をする前にオレに別の部屋を用意してくれよな~。

 オレ、お子様だから眠いのに~。

 そんな事を思いながら2人の言い合いを見る破目になった。





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