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マチルダーズ、アポリス、レコアーヌ三国飛翔編
モンスター駆除依頼
しおりを挟むマチルダーズ連合に到着してそろそろ30日になる。
つまりは国境越えの際に倒したサンドワームの死骸の肉はそろそろ腐り始めてるって事だ。
元々肉は毒だったのだ。
腐った体液はそのまま毒沼を作り、(素材は99%以上が回収出来ずじまいで)毒沼に適合出来るモンスターが住み着いた結果、
マチルダーズ連合のローセファースの街とジオール王国のモルゼスの街の国境越えルートは断絶されたらしい。
◇
「アラン~、おまえな~」
ローセファースの庁舎にバニラさんと一緒に呼ばれたらノルメ閣下に嫌味を言われた。
「いやいや、あのサンドワームを倒したのはジオール王国の魔法騎士団ですから」
それがジオール王国の正式発表だ。
「ったく。そんな訳でローセファース~モルゼスの交易ルートが絶望的になったのを受け、新たな交易ルートを作る事となった。デモネーロス高山の北側に新たに街が建設される。当然、ジオール王国との外交を経てだ」
「それがどうかしたんですか?」
オレがキョトンとしてると、バニラさんが、
「議員席が増えるという訳ですね」
「そういう事だ。代表選出選挙前に議席を増やすような真似は本来なら御法度だが、今回は隣国ジオール王国と地上ルートを確保するという正当な理由がある。ジオール王国との交易ルートは必要だからな」
「えっ、そうなんですか?」
「ああ、互いに色々と交易してる。ポーションの原料の薬草とかもな。そんな訳でその街作りの失敗は許されない。『街作りの失敗=執政官が敵対派閥に交代』だからな」
なるほど。ようやく話が読めてきた。
「そこで前にローセファースの街の周辺でモンスターを狩り尽くした掃討をデモネーロス高山の北側でもやって欲しい」
「素材を捨て置いてもいいのなら」
「何を言ってるのよ、アラン。全部アイテムボックスに回収して換金よ」
バニラさんも大変だな~、クランの運営があるから。
「でも、オレ、駆け鳥だし」
「問題ないわ」
そんな正式依頼がノルメ閣下からあったので、
◇
デモネーロス高山の北側は森と平原だ。
森は嫌いなんだよね~、木々が障害物になって全速力で駆け鳥をかっ飛ばせないから~。
ブルーウルフ、21匹。
ブラウンウルフ、4匹。
ハリケーンウルフ、3匹。
ゴブリン、7匹
グリーンキャタピラー、12匹。
イエローキャタピラー、33匹。
ハニーキラー、8匹。
サンダーハニーキラー、1匹。
キラーレッドスコーピオン、2匹。
カブトムシ系のブロンズライノビートル、1匹。
スネイルスライム、24匹。
サンドワーム、2匹。
モグラのモンスターのブラウンモール、3匹。
ブラウンベアー、2匹。
キャロットトレント、4匹。
唐辛子のモンスターのレッドペッパートレント、1匹。
レッドクロウ、11羽。
鳥のモンスターのグレーアウル、3羽。
グレーファルコン、2羽。
この界隈を縄張りにしてるレッドリザード、64匹。
大型のビッグレッドリザード、13匹。
変異種のアースリザード、3匹。
それに明らかに陸鰐のクロコダイル、4匹。
依頼を受けた翌日には出向いて、それらを倒した。
(ハリケーンウルフ、サンダーハニーキラー、ブロンズライノビートル、アースリザード以外は)LVが40以下なので本当に倒しただけだ。
経験値の足しにもならない。
駆け鳥に乗ったオレが騎乗用武器の棍(槍サイズの長い棒ね)や魔法で倒した。
正直、駆除作業だ。
何の感慨もない。
倒した後にバニラさんに渡された笛を吹く。
クランの仲間に、ここに死骸があるよ、の合図だ。
それで後続のクラン員が狼でやってきて【アイテムボックス】に回収する。
1時間ほど駆け鳥で走り回り、どうしてノルメ閣下がクラン【氷の百合】にこの話を振ったのかその理由が分かった。
◇
「モンスターの討伐、御苦労さまです」
東の空からグリフォンの乗るマチルダーズ連合の魔法騎士の一団が飛んできてそのリーダーの男がオレに挨拶してきた。
30代の銀髪の男で、赤黒カラーの魔法騎士の鎧姿なので、まあ、軍人な訳だが。
「ええっと、そちらもモンスターの討伐ですか?」
「いえ、クラン【氷の百合】と懇意になれ、との代表の御命令でして。申し遅れました、スレイン・ブラバイズです」
おっと~。
オレでもブラバイズの家名が何なのかはさすがに分かるぞ。
ルイタフ代表と同じ家名だから。
「ええっと、代表閣下の御一族様で?」
「はい、系譜的には代表の弟の息子、甥になります。おそらくはこの地に出来る村の統治者にも。まあ、完全な縁故採用ですが」
「裏切り防止には血族はもってこいですからね」
「伯父の狙いはそれだけではなさそうですが。今後ともよろしくお願いしますね」
「ええ、クラン【氷の百合】として全面的にサポートしますよ。スレイン殿が代表選出選挙に立候補された際には」
「それはーー」
「あれ、さすがに深読みし過ぎましたか?」
「いえ、もしかしたらそうなるかもしれませんね」
その後、当たり障りのない会話でオレはおそらくはノルメ閣下の狙い通りにスレインさんとお近付きになったのだった。
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