64 / 140
マチルダーズ連合蟻軍編
カスボール不在情報
しおりを挟む翌朝の朝食は、同じくモスヘンバウワー宮殿の立派な食堂でマチルダーズ連合のルイタフ代表とその取り巻きと一緒に、とはならなかった。
何せ、朝食をすっ飛ばして出動だから。
「アラン、悪いが私と一緒に今からソラーゼンに行ってくれ」
ルイタフ代表からの御指名だ。
「何かあったんですか?」
「カスボールがソラーゼンから消えたらしい。ワイバーンで夜中に10人程の妙な人選で発ってまだ帰っていないそうだ。何があったのか確認したい」
「妙な人選?」
「メイドや豪商も混じってたそうだ」
「それって、昨日のモスヘンバウワーのセンティピード・アラクネートが化けてたーー」
オレが最後まで言い終える前に、
「そういう事だ」
ルイタフ代表はニヤリとしたのだった。
そんな訳で、空でサンドイッチの朝食というオツな体験をして、
発って12分後にはやってきました、ソラーゼンの街。
マチルダーズ連合の北東部に位置する最大の都市だ。
そしてその北側には国境でもあるジャブローレ火山地帯。
火山地帯というだけあって、火山は1つではない。
8つが連なってる。
さすがは異世界ファンタジーだぜ。
凄い迫力。
3つの火山が黒煙を吐き出してて、2つの火山がマグマなんかを流してる。
よってソラーゼンの街の名産は当然、ジャブローレ火山地帯で採れる鉱石と生息するモンスターの素材や魔石だった。
いやいや、馬鹿には出来ないぞ。
何せ、ソラーゼンはマチルダーズ連合最大の経済都市でもあるのだから。
それだけ潤っていた。
そこを地盤にしてルイタフ代表に逆らってたのがカスボールって次の代表候補だったのだが。
そいつが昨夜消えた、となるとーー
時期が時期だ。
考えられるパターンは3つに限られる。
1、カスボールも既にセンティピード・アラクネートで首都モスヘンバウワーの一斉摘発情報、またはエマリス帝国のキラーアントのスタンピードの情報を聞いて帰国した。
2、目撃情報は嘘。ルイタフ代表陣営が邪魔なカスボールを謀殺して死体を遺棄した。
3、カスボール不明の情報が嘘。ラジカーンの時みたいに罠を張って待ち構えてる。
まあ、多分3だな。
頭の上のピピーがピピピッと激おこモードになってるから。
そんな訳でソラーゼンの軍基地の発着場に着地した訳だけど~。
我が勤勉なる透明分身はマジで優秀というか場の空気を読まないというか、
「どうされました、代表自らソラーゼンにーーグアアアアアアアアア」
ルイタフ代表を出迎えた責任者の顔にスプレーを掛けて、人間に化けてるセンティピード・アラクネーの正体を炙り出していた。
こら、分身~っ!
オレに一言言えよな~っ!
タイミングってのがあるでしょうがっ!(ああ~、また北の国から口調に~)
着陸して背伸びのストレッチをしてたオレは慌ててムカデ専用スプレーでソイツを撃破したのだが、その時には透明分身が無印スプレーでシュー、シューッと、
「グアアアアアアアアアア」
「これが、昨日モスヘンバウワーで起こったというーー」
「ゲホゲホッ」
「許さんぞ、小僧ぉぉぉぉぉぉっ!」
4匹のセンティピード・アラクネートの正体を炙り出していた。
ああ、もうっ!
オレは渋々その4匹をムカデ専用スプレーで倒したんだけど~。
その頃には勤勉なる透明分身が、
「グゾォォォォォォォォォっ!」
「何だ、これは? 遠距離の何かか?」
「グハアアアアアアアアアアアアアアアっ!」
更に3匹の正体を暴いててオレは戦闘をする破目になった。
ピピーはピヨピヨと喜んでたが、
何だろうな?
何かが気に入らない。
オレ主導の戦闘じゃないからか?
ピピーが片翼で差す前に分身が正体を暴いてるから?
う~ん。
◇
「アラン、アレックスを付けるから悪いがソラーゼンを見て回ってくれ」
「グリフォンの件、忘れないで下さいよ、代表」
ルイタフ代表に頼まれたオレはソラーゼンでもセンティピード・アラクネー狩りをやる破目になった。
まあ、虫を駆除するの大好きなんだけどね、オレ~。
まずは庁舎。
頭の上のピピーの指示に従って移動し、オレが発見する前に勤勉なる透明分身が先回りしてセンティピード・アラクネーの正体を暴いてるので、部屋の中や上層階から、
「グアアアアアア」
「うわ、ライドがモンスターにーー」
「グアアアアアアアアアアア」
「えっ、人型モンスター? キャアアアアアアア、誰かぁぁぁぁっ!」
そんな大騒動がオレが出向く前に起き、その声で駆け付けたオレがセンティピード・アラクネーをムカデ専用スプレーで倒したのだった。
庁舎内の虫駆除が終わり(ピピーがもう居ないと判断)、オレはソラーゼンの街に出た。
ジャブローレ火山地帯の麓の街だ。
地熱の関係で暑いのか、皆さん薄着だった。
美女が薄着やスリットスカートなのはいいよね~。
野郎の半裸はむさ苦しいが。
そして判明した事がある。
ソラーゼンは本拠地のはずなのにモスヘンバウワーよりもセンティピード・アラクネーの数が少なかった。
庁舎と街で合計17匹を倒しておしまいだ。
昨日のモスヘンバウワーに大量に居たから残数の節約をどうするか考えてたオレが馬鹿みたいだから~。
何か拍子抜けだな。
302
お気に入りに追加
639
あなたにおすすめの小説
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる