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マチルダーズ連合蟻軍編
ラジカーンの夜の無双
しおりを挟むラジカーンで一泊する事となった。
オレはただの冒険者なのだが軍基地から出しても貰えず、軍基地内に留め置かれた。
そして夜だ。
夕食が出る。
これを食べられるかと言えば、さすがに警戒心のないオレでも無理だった。
ピピーも反応していないので多分、何も入っていないとは思うが、アイテムボックスに入ってた食料を食べた。
いや、ほら、ドラゴン肉のジャーキーがあるからさ~。
後、蜜柑も。山ほど持ってる。7個も食べた。
分身のスキル残数回復の為に。でもスキルの回復量も20%なら蜜柑7個で回復出来てるかは微妙だけど。
迎え討つ準備は万端だ。
個室ではなく他の魔法騎士らと同室の中、寝転びながらオレは待ち構え・・・
◇
夜になると軍基地内が静かになった。
軍基地全域にうっすい紫色の香が立ち込めたと思ったら全員がバッタバタと倒れて。
さすがにオレもビビって同室の倒れた魔法騎士の様子を見れば、ただ寝てるだけだった。
ふ~、何から何まで用意して貰って痛み入るね~。
そして、
「出て来い、小僧ぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
との大声が軍基地の中庭から聞こえ、オレは部屋を出て1階の廊下の窓から中庭へと出たのだった。
中庭に出向くと月明かりの中、14人も魔法騎士や平民の恰好の連中が待ってた。
全員がやる気満々でオレを睨んでる。
おいおい、まさか、この全員が?
こんなに居るって凄いな。どうなってるんだ、このラジカーンの街?
「小僧、おまえがションドバーズとローセファースで我らが同胞を殺した、でいいんだな?」
「えっ、我らが同胞って? ボク達、同じ人間同士じゃないですか~」
別に残念な子供じゃないぞ。
わざとやって相手を煽ってるだけだから。
頭の上のピピーさんなんて、さっきからピピピッと激おこで大ハッスルして飛び跳ねてるし~。
やっぱ全員がそうなんだろうな~。
は~、マチルダーズ連合、マジでないわ~。
「とぼけーー」
代表者がキレて口を開こうとした時、
「ギャアアアアアアアア、顔が、顔がぁぁぁぁ」
「ヌアアアアアアアアアア」
そう悲鳴を上げたのは14人の中の2人だった。
どうして悲鳴が上げたのかと言えば、我が勤勉なる分身が透明で視えてないのをいい事に相手に近付いて殺虫スプレーを速攻で使っていたからだ。
それも一吹きのスライド殺法で2匹同時に。
当然、センティピード・アラクネーの正体を現す。
「貴様、何をやった?」
「見えたか?」
「いや、不審な動きは一切なかった」
「周囲の香も一切揺らいでなかったぞ」
などとナイスリアクションをしてる中、オレの透明分身が両手に無印スプレーを持って、
「グアアアアアアア」
「ギャアアアアア」
「ゲボケボ、これは新種の毒か?」
「グハアアアーー喉が焼けるぅぅぅぅ」
次々にセンティピード・アラクネーの正体を暴いていったので、
「貴様ぁぁぁぁぁっ!」
スプレーを浴びていない連中もセンティピード・アラクネーの姿になって戦闘となった。
はあ~、いきなし戦闘って。
ないわ~。
戦闘前のお喋りでセンティピード・アラクネー陣営の情報を少しは引き出したかったのに~。
そして戦闘になってオレは余裕で無双した。
スプレーをシューッで余裕だったから、センティピード・アラクネーなんて。
途中、狡いのが目敏く、
「貴様の手に持つ何かの攻撃範囲は2メートルと見たぞ」
得意げに指摘する横でオレの視えてない分身が別のセンティピード・アラクネーにスプレーで攻撃して、
「グアアアアアア」
「馬鹿な、5メートル? だが攻撃した動作が無かったぞーーど、どうなってる?」
ナイスリアクションを取ってたりとか、
圧倒的な戦力差の前に、
「ヒッ、ダメだ。逃げるぞ」
「馬鹿、おまえ、何を考えてーー」
「聖なる矢」
背中を見せたセンティピード・アラクネーをムカデ専用スプレーを塗した無詠唱の聖矢魔法で撃ち抜き、
「ギャアアアアアアア」
検証しながら倒したりとか、
「馬鹿め、死ねっ!」
ドゴォォォォォォォォンっ!
軍基地の地面から50メートル級のセンティピードが出現したが、
「なっ、避けただとっ?」
「最初からモロバレなんだよ、聖なる矢」
無詠唱魔法のムカデ専用スプレー塗しの聖矢20本でセンティピード共々ハチの巣にして、
「ば、馬鹿なっ!」
とかナイスリアクションをしてたけど。
ラスト1匹を、
「はい、終わりっ!」
「ギャアアアアアアアアアアアア」
と倒して呆気なくセンティピード・アラクネーを全滅させたのだった。
所詮は虫だな。
余裕だったし。
それにどうせステータスだって上がって、ーーおっ、1上がってLVが419になってる。
ラッキー。
称号は14匹殺したくらいでは何も付かないか。
(7+14)÷6は3余り3。
つまり、後3人居るっぽいんだが。
ピピーの満足げな様子だとこれで打ち止めっぽいんだよな~。
まあ、いいか。
もしまだ残ってたら、寝てたらきっと襲ってくるだろうし~。寝よっと。
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