オレはスキル【殺虫スプレー】で虫系モンスターを相手に無双する

竹井ゴールド

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マチルダーズ連合新星編

正義は身分差に屈し、罪は功績で帳消しとなる予定

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 前回からの続き。





 結論から言おう。

 本当に王族でした~。

 マチルダーズ連合の南の国、アポリス王国の第2王女、アンリ・イナ・アポリス。





 そんな訳で、オレは現在そのお姫様の護衛のお姉さん魔法騎士4人に剣先を向けられてる状態で、

「貴様、良くも余の顔を殴ってくれたな~」

 治癒魔法で復活したブチギレた馬鹿王女から説教を受けていた。

 この喋り方、やっぱり本物のお姫様なのか?

 オレは屋敷に侵入した賊を撃退したで何も悪くないのに~。

 クッソ~。

 正義が悪に屈するとは~。

 これが異世界ファンタジーの身分差って奴か。

 前世の地球でも中世まではこうだったらしいからな。

 幕末までは日本でも斬り捨て御免があったらしいし。

「いえいえ、誤解です。窓を蹴破って部屋に入ったはいいですが着地に失敗されて床に打たれてオレの眼の前で気絶されてたのですから」

「顎が砕けてたのにそんな器用にズッコケられる訳があるかっ!」

 お姫様が妥協案を断固拒否した。

 チッ、落とし所としてはいい線いってると思ってたのに~。

 ピヨピヨ。

 その上、ピピーがその馬鹿王女の頭の上で両翼で○って作ってるし~。

 マジかよ、ピピーさん。

 この女は多分、オレに面倒事しか押し付けないぞ。

「おまえを我が国に連れて帰って罪に処す、いいな」

「そんなの嫌に決まってるじゃないですか」

「黙れ、おまえに拒否権はないっ!」

 剣先を向けてるお姉さん騎士の1人が口を開いてオレに凄んだ。

 そればかりかオレの喉元を見たので何をされるのか気付いたオレが、

「それは止めた方がいい。手首をへし折るぞ」

 そうちゃんと警告したのに·······

 何を思ったのか、おバカなお姉さん騎士が更に剣先をオレの喉に近付けたので、オレは動いた。

 LV397のスピードで腹に十六文キックを喰らわす。(0.1秒)

 お姉さん騎士が吹き飛んでノーバンで壁に叩き付けられた。

 手首を折る前に蹴りが出ちゃった、テへ。

「なっ!」

「貴様っ!」

「止めろ止めろ。おまえらじゃあ無理だからっ!」

 オレがちゃんと教えてやったのに残る3人が斬りかかってきたので、

「十六文3連キック」

 1秒未満の間に3人のお姉さんを蹴って、オレに剣先を向けていたお姉さん3人を無力化した。

 傭兵団【狼牙三星】のモンさんが心配そうに、

「ちょ、いいんですか、アラン殿? こんな事をやって?」

 いい訳あるか。

 この後どうなるんだ、これ?

 一国の王族と揉めるって。

 その落とし所は?

 ダメだ。さっぱり分からん。

 オレ、男爵家の三男だけど雑用係だったからロクに教育も受けてないし、前世は高卒の蜜柑農家だから。

 内心ドキドキのオレはアンニュイな眼差しをお姫様に向けて、

「ねえ、なかった事にしません?」

「ここまでコケにされてなかった事に出来る訳が――」

 兜を被ってる状態でこめかみに血管を浮かび上がらせてブチギレてらっしゃるお姫様が不穏な言葉を吐こうとしたのでオレはそれを封じる為に、

「そうだ、アースドラゴンの素材を進呈するので」

 口が勝手にそう提案していた。

 買収作戦か・・・ありかも。

 いやいや、庶民なら通用するかもしれないが相手は王族だぞ。

 無理だな。

 そう思ったが信じられない事にお姫様が眼をパチクリしてから、

「あら、そうなの?」

 態度を露骨に軟化させた。

 マジで?

 買収が可能なの?

 王族なんだよな、買収なんて出来る訳がーーまさか、偽物?

 いや、王族の詐称は極刑だ。

 それにワイバーンを4匹も保有してる。

 さすがにかたりの偽物って事はないだろ。

 でも王族公認の影武者ならありか?

 ってか、そもそもどうして他国のこの街に来たんだ、このお姫様?

 ーーあっ。

 もしかしてオレが討伐して売り出された希少なアースドラゴンの素材を買いに来た?

 だからオレの口からデマカセのアースドラゴンの素材の話に喰い付いた?

 なら、この作戦、いけるかも。

 オレ、持ってるし。

「皮と鱗だけですが」

「牙は?」

「売れちゃいましたよ」

「ならダメだな」

 と言ったお姫様が、ふとオレを見て、

「そうだ、余の為にドラゴンを1匹討伐してくれたら忘れてやろう」

 えっ、そんな事でいいの?

「乗った、その話。正式な書面にして下さい、今の内容」

 オレはその話に乗ったのだった。





 すぐに書面は作成された。

 この部屋にあった紙とペンで。

 なので、別に魔法で制約されてる訳でもなく、破った罰則も何もない。

 だが、姫様直筆の書面だ。保険にはなる。

 書面を【アイテムボックス】の魔法の腕輪に入れたオレは表庭に居た。

 表庭にはワイバーンが4匹居て、屋敷の塀の外は野次馬だらけだった。

 だよな、ワイバーンなんて珍しいし。

 そしてオレはワイバーンの背鞍の後部席に座り、魔法騎士のお姉さんの1人に、

「このベルトを腰に巻いて」

 説明を受けていた。

「は~い」

 ってか、ワイバーンに乗る際の安全装置って背鞍から伸びたベルトだけなの?

 墜落したらどうするんだよ?

 オレが内心ドキドキの中、モンさんが、

「ちょ、本当に行くんですか、アラン殿?」

「仕方ないでしょ。こっちも失礼な事をしちゃったし~」

「ですが、今朝バニラ殿に大人しくしてるようにと言われたばかりですし、せめてバニラ殿の帰還を待ってから――」

「急いでらっしゃるようだから無理だって・・・バニラさんへの説明よろくね、モンさん」

「いやいや、どう説明するんですか、この状況?」

 と喋ってる間に出発準備が完了し、

「それじゃあ、みんな、いいわね? 行くわよっ!」

 お姫様の号令で(女言葉もちゃんと喋れるんだ~)4匹のワイバーンが空に羽ばたいたのだった。

 お~、本当に飛んだよ。





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