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マチルダーズ連合新星編
アースドラゴンの討伐情報公開
しおりを挟むジャジャ~ン。
ドルバンさんは5日と言ってたが4日後にはアースドラゴン(赤)シリーズの装備品が完成した。
バットの長さサイズの牙棒(柄に魔石穴あり)。魔術師用の錫杖(宝玉なし)。
戦士用のロングコート、ヘアバンド、グローブ、ズボン、ブーツ、ベルト、ベルトポーチ、リュック、剥ぎ用ナイフ。
解体用ノコギリ。
「いいですね~」
特に赤色なのがいい。
専用カラーの赤色なのが。
「こっちはプール用の鱗と皮だ。ちゃんと保管しておけよ。足のサイズが変わったらブーツを新たに作るのに必要だからな」
プール用どころか、もう一式作れそうな量の素材をオレに渡しながらドルバンさんはガハハッと笑った。
アースドラゴンの素材が扱えたからか、ドルバンさんは御機嫌だ。
そして、
「私のも完璧ね」
ちゃんとバニラさんもアースドラゴンの装備をゲットしていた。
セクシードレスとヒールブーツを。
魔術師ローブはいつものを使ってるが、内側のセクシードレスは赤色だった。
うん、エロイな、やっぱバニラさんって。
「だろだろ」
と答えたドルバンさんが真顔になって、
「1時間後らしいぞ、討伐発表。覚悟するようにな、アラン」
「覚悟って何のです?」
「今マチルダーズ連合は次代の代表を決める最高権力闘争の真っ最中だと教えただろうが。最初は勧誘、仲間に引き入れられないと悟ったら敵対派閥と北の帝国から暗部部隊が飛んでくるぞ、確実に」
「対人戦か~。モンスターを相手にしてる方が楽なのに~」
オレはそうぼやいたのだった。
◇
アースドラゴンの討伐情報が公開された3時間後にはローセファースの街にあるクラン【氷の百合】の屋敷の表庭にグリフォンが3匹(それとも羽? グリフォンは今後、匹で統一ね)舞い降りたのでオレも窓から見る破目になった。
マチルダーズ連合の30代の銀髪オールバックの立派な顔付きの男の魔法騎士の来訪で、本当にオレに会いに来て、
「私はカスボール様に仕える親衛隊のバスリョーだ。カスボール様が貴殿に会いたがってる、一緒に来てくれないか?」
そう申し出てきた。
おっと、敵対派閥のボスだろ、その名前。
だが、それ以上に気になったのが、
「一緒にって、まさかグリフォンで?」
「ああ」
「無理無理無理。空を飛ぶなんて怖過ぎますって」
この招待が罠で空からポイされてみろ。
オレでも死ぬぞ。
だが、オレのリアクションにバスリョーと名乗った魔法騎士は馬鹿にするように、
「いや、空を飛ぶのはそんなに怖くはないぞ」
オレに説明した。
ムカチン。
でも我慢だ。
前世でもあった。
ムカつく農協の職員とか。
「いや、怖いですって」
「では、ソラーゼンまで陸路で――」
「ソラーゼン? ローセファースからだと狼で7日でしたっけ?」
「そうなるな」
「首都モスヘンバウワーにも行った事ないし、一回マチルダーズ連合の主要都市を旅するのもいいかもしれませんね」
前向きなオレの発言に、
「では、すぐにでも・・・」
そう魔法騎士は誤解したが、オレが申し訳なさそうに、
「それがアースドラゴンの素材の売却の件でローセファースから出るなと庁舎の人に言われてまして」
「ああ、本当にキミがサハリード砂漠のアースドラゴンを?」
「ええ、まあ」
「ダークビッグイーグルが大量に死んでるのも?」
「ああ、アースドラゴンの解体中にやたらと絡んできた? ええ」
オレの言葉に同席してるバニラさんが、
「アラン、後でその話を詳しく聞かせてね」
そう口を挟んだ。
それからも喋ったが、アースドラゴンの素材の売却でローセファースからいつ出れるかわからないのでソラーゼンへ出向く約束も出来ず、バスリョーさんは帰っていった。
次に中庭に降り立った飛獣はワイバーン3匹だった。
首都モスヘンバウワーから来訪のルイタフ代表の親衛隊、アレックス殿だった。
「よう、アラン。オレの事、覚えてるか?」
40代の黒髪で右顎に縦傷のある屈強な魔法騎士だ。
当然、覚えてる。
ルイタフ代表の側近だったので。
「ええ。盗まれたアースドラゴンの素材、発見出来ましたか?」
「いいや。どうも、もう国内にないっぽい」
「北ですか?」
「ああ」
運送の重量制限を取っ払う【アイテムボックス】の魔法のアクセサリーも考えものだな。
クッソ~、3200億円を丸々損するとは~。
額が大き過ぎて現実味がなく、どれだけの損失か分からないところが難点だが。
「それで盗まれた代わりにサハリード砂漠のアースドラゴンを討伐した訳か?」
「ええ」
「ノルメ殿に事情を聞いたが、討伐情報を黙ってるようにノルメ殿に頼んだ経緯は?」
「また盗まれたら堪りませんから」
「本音は?」
「? それが本音ですけど? また金貨320万枚をオジャンにされたらやってられませんし。何だと思ってるんですか?」
「代表選出選挙でジオール王国の息の掛かった第3候補の擁立」
真顔でアレックス殿が言う中、
「はあ?」
呆れたオレの声と、バニラさんの、ぷっ、と吹き出した声が重なった。
コイツ、深読みし過ぎだろう。
「オレ、ジオール王国出身ですけど指令なんて受けてませんよ」
「分かってるさ。おまえは強過ぎるからな。だが陰謀論者は結構居るからな。ルイタフ代表に付くでいいんだよな?」
オレに聞くなよ。
オレはバニラさんを見て、
「って聞かれてますけど?」
「ローセファースの街に拠点を置くクラン【氷の百合】は執政官のノルメ閣下を支援するとお約束しますわ」
嘘臭い笑顔でバニラさんは答えたのだった。
「つまり、ノルメ殿が敵陣営に寝返ればーー」
「さあ、それはないんじゃないでしょうか」
バニラさんが答え、オレは真剣に、柴田勝家を見限って秀吉に付いた前田利家の事を考えたのだった。
その後、アレックス殿はワイバーンで帰っていった。
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