上 下
46 / 140
マチルダーズ連合新星編

アースドラゴンの討伐情報公開

しおりを挟む





 ジャジャ~ン。

 ドルバンさんは5日と言ってたが4日後にはアースドラゴン(赤)シリーズの装備品が完成した。

 バットの長さサイズの牙棒(柄に魔石穴あり)。魔術師用の錫杖(宝玉なし)。

 戦士用のロングコート、ヘアバンド、グローブ、ズボン、ブーツ、ベルト、ベルトポーチ、リュック、剥ぎ用ナイフ。

 解体用ノコギリ。

「いいですね~」

 特に赤色なのがいい。

 専用カラーの赤色なのが。

「こっちはプール用の鱗と皮だ。ちゃんと保管しておけよ。足のサイズが変わったらブーツを新たに作るのに必要だからな」

 プール用どころか、もう一式作れそうな量の素材をオレに渡しながらドルバンさんはガハハッと笑った。

 アースドラゴンの素材が扱えたからか、ドルバンさんは御機嫌だ。

 そして、

「私のも完璧ね」

 ちゃんとバニラさんもアースドラゴンの装備をゲットしていた。

 セクシードレスとヒールブーツを。

 魔術師ローブはいつものを使ってるが、内側のセクシードレスは赤色だった。

 うん、エロイな、やっぱバニラさんって。

「だろだろ」

 と答えたドルバンさんが真顔になって、

「1時間後らしいぞ、討伐発表。覚悟するようにな、アラン」

「覚悟って何のです?」

「今マチルダーズ連合は次代の代表を決める最高権力闘争の真っ最中だと教えただろうが。最初は勧誘、仲間に引き入れられないと悟ったら敵対派閥と北の帝国から暗部部隊が飛んでくるぞ、確実に」

「対人戦か~。モンスターを相手にしてる方が楽なのに~」

 オレはそうぼやいたのだった。





 ◇





 アースドラゴンの討伐情報が公開された3時間後にはローセファースの街にあるクラン【氷の百合】の屋敷の表庭にグリフォンが3匹(それとも羽? グリフォンは今後、匹で統一ね)舞い降りたのでオレも窓から見る破目になった。

 マチルダーズ連合の30代の銀髪オールバックの立派な顔付きの男の魔法騎士の来訪で、本当にオレに会いに来て、

「私はカスボール様に仕える親衛隊のバスリョーだ。カスボール様が貴殿に会いたがってる、一緒に来てくれないか?」

 そう申し出てきた。

 おっと、敵対派閥のボスだろ、その名前。

 だが、それ以上に気になったのが、

「一緒にって、まさかグリフォンで?」

「ああ」

「無理無理無理。空を飛ぶなんて怖過ぎますって」

 この招待が罠で空からポイされてみろ。

 オレでも死ぬぞ。

 だが、オレのリアクションにバスリョーと名乗った魔法騎士は馬鹿にするように、

「いや、空を飛ぶのはそんなに怖くはないぞ」

 オレに説明した。

 ムカチン。

 でも我慢だ。

 前世でもあった。

 ムカつく農協の職員とか。

「いや、怖いですって」

「では、ソラーゼンまで陸路で――」

「ソラーゼン? ローセファースからだと狼で7日でしたっけ?」

「そうなるな」

「首都モスヘンバウワーにも行った事ないし、一回マチルダーズ連合の主要都市を旅するのもいいかもしれませんね」

 前向きなオレの発言に、

「では、すぐにでも・・・」 

 そう魔法騎士は誤解したが、オレが申し訳なさそうに、

「それがアースドラゴンの素材の売却の件でローセファースから出るなと庁舎の人に言われてまして」

「ああ、本当にキミがサハリード砂漠のアースドラゴンを?」

「ええ、まあ」

「ダークビッグイーグルが大量に死んでるのも?」

「ああ、アースドラゴンの解体中にやたらと絡んできた? ええ」

 オレの言葉に同席してるバニラさんが、

「アラン、後でその話を詳しく聞かせてね」

 そう口を挟んだ。

 それからも喋ったが、アースドラゴンの素材の売却でローセファースからいつ出れるかわからないのでソラーゼンへ出向く約束も出来ず、バスリョーさんは帰っていった。





 次に中庭に降り立った飛獣はワイバーン3匹だった。

 首都モスヘンバウワーから来訪のルイタフ代表の親衛隊、アレックス殿だった。

「よう、アラン。オレの事、覚えてるか?」

 40代の黒髪で右顎に縦傷のある屈強な魔法騎士だ。

 当然、覚えてる。

 ルイタフ代表の側近だったので。

「ええ。盗まれたアースドラゴンの素材、発見出来ましたか?」

「いいや。どうも、もう国内にないっぽい」

「北ですか?」

「ああ」

 運送の重量制限を取っ払う【アイテムボックス】の魔法のアクセサリーも考えものだな。

 クッソ~、3200億円を丸々損するとは~。

 額が大き過ぎて現実味がなく、どれだけの損失か分からないところが難点だが。

「それで盗まれた代わりにサハリード砂漠のアースドラゴンを討伐した訳か?」

「ええ」

「ノルメ殿に事情を聞いたが、討伐情報を黙ってるようにノルメ殿に頼んだ経緯は?」

「また盗まれたら堪りませんから」

「本音は?」

「? それが本音ですけど? また金貨320万枚をオジャンにされたらやってられませんし。何だと思ってるんですか?」

「代表選出選挙でジオール王国の息の掛かった第3候補の擁立」

 真顔でアレックス殿が言う中、

「はあ?」

 呆れたオレの声と、バニラさんの、ぷっ、と吹き出した声が重なった。

 コイツ、深読みし過ぎだろう。

「オレ、ジオール王国出身ですけど指令なんて受けてませんよ」

「分かってるさ。おまえは強過ぎるからな。だが陰謀論者は結構居るからな。ルイタフ代表に付くでいいんだよな?」

 オレに聞くなよ。

 オレはバニラさんを見て、

「って聞かれてますけど?」

「ローセファースの街に拠点を置くクラン【氷の百合】は執政官のノルメ閣下を支援するとお約束しますわ」

 嘘臭い笑顔でバニラさんは答えたのだった。

「つまり、ノルメ殿が敵陣営に寝返ればーー」

「さあ、それはないんじゃないでしょうか」

 バニラさんが答え、オレは真剣に、柴田勝家を見限って秀吉に付いた前田利家の事を考えたのだった。

 その後、アレックス殿はワイバーンで帰っていった。





しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

召喚魔法使いの旅

ゴロヒロ
ファンタジー
転生する事になった俺は転生の時の役目である瘴気溢れる大陸にある大神殿を目指して頼れる仲間の召喚獣たちと共に旅をする カクヨムでも投稿してます

追放シーフの成り上がり

白銀六花
ファンタジー
王都のギルドでSS級まで上り詰めた冒険者パーティー【オリオン】の一員として日々活躍するディーノ。 前衛のシーフとしてモンスターを翻弄し、回避しながらダメージを蓄積させていき、最後はパーティー全員でトドメを刺す。 これがディーノの所属するオリオンの戦い方だ。 ところが、SS級モンスター相手に命がけで戦うディーノに対し、ほぼ無傷で戦闘を終えるパーティーメンバー。 ディーノのスキル【ギフト】によってパーティーメンバーのステータスを上昇させ、パーティー内でも誰よりも戦闘に貢献していたはずなのに…… 「お前、俺達の実力についてこれなくなってるんじゃねぇの?」とパーティーを追放される。 ディーノを追放し、新たな仲間とパーティーを再結成した元仲間達。 新生パーティー【ブレイブ】でクエストに出るも、以前とは違い命がけの戦闘を繰り広げ、クエストには失敗を繰り返す。 理由もわからず怒りに震え、新入りを役立たずと怒鳴りちらす元仲間達。 そしてソロの冒険者として活動し始めるとディーノは、自分のスキルを見直す事となり、S級冒険者として活躍していく事となる。 ディーノもまさか、パーティーに所属していた事で弱くなっていたなどと気付く事もなかったのだ。 それと同じく、自分がパーティーに所属していた事で仲間を弱いままにしてしまった事にも気付いてしまう。 自由気ままなソロ冒険者生活を楽しむディーノ。 そこに元仲間が会いに来て「戻って来い」? 戻る気などさらさら無いディーノはあっさりと断り、一人自由な生活を……と、思えば何故かブレイブの新人が頼って来た。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

処理中です...