上 下
39 / 140
マチルダーズ連合爆釣編

ルイタフ・ブラバイズ

しおりを挟む





 オレはまだションドバーズの庁舎内に居た。

 襲われた後も違う応接室に通されて事情を聞かれるでもなく1人にされたので長ソファーに寝転びながら仮眠を取ってると身体を揺すられて起こされた。

 睡眠を邪魔されたのだ。

 そりゃあ不機嫌になるのが人情ってもので視線で不機嫌さを表しながら見れば、いつの間にか部屋に6人居た。

 オレの身体を揺らして起こしたのとは違う一番偉そうな爺さんが、

「やあ、キミがセンティピード・アラクネーを3匹も倒したアラン・ザク君かね?」

 と声を掛けてきた。

 おおっと~。

 この国一番の大物が釣りあがっちまったぞ。

 新聞の紙面や土産物店の姿絵で御馴染み、マチルダーズ連合の現代表、ルイタフ・ブラバイズ御本人様が登場とはね。

 65歳の白髪と白髭の老紳士。とはいえ、魔法騎士上がりなので線はまだまだ太い。権力者だが服の下は筋骨隆々だろう。

 室内に居るお付きの5人も雰囲気がある。強そうだ。

 ってか、その内の1人はバニラさんの2回目の表彰式の時に居た眼鏡エルフのビルデーナさんだった。

「まあ、偶然居合わせただけでーー」

 オレが長ソファーから起きようとすると、

「そのままで」

 ルイタフ代表がそうオレの行動を制した。

「? どうしてです?」

「そっちの方が部下達が警戒しなくて済むからね。ほら、キミ、我々よりも強いから」

「そんな事・・・」

「世の中には相手のLVが分かる便利な魔法のアクセサリーもあるんだよ」

 それは本当に便利だな。

 ってか何か警戒されてないか、オレ~?

 この国のトップに不興を買うのは拙いか。

 豊臣秀吉ならこんな出会いでも上手く立ち回れそうだけど、オレは平々凡々なので、

「御命令とあらば、お言葉通りに」

 ルイタフ代表の命令通りオレは長ソファーに寝転がった。

 不敬じゃないぞ、命令なんだから。

「それで結構。さて質問なのだが、どうやって人間に化けてるセンティピード・アラクネーの正体を見破ったのか教えて欲しい」

「お告げです」

「六柱神の? なるほど、それで・・・因みにどの女神様のお告げか教えて貰っても?」

 ルイタフ代表が盛大に勘違いしたので、

「いえいえ、女神様ではなくて精霊獣のお告げです」

 オレは慌てて言い直した。

「精霊獣と契約してるのかね?」

「ええ、それでそちらのビルデーナさんと喧嘩になりかけましたから」

「うちのビルデーナと? どうしてだね?」

「精霊獣の真名を聞くんですもん」

「えっ? 教えたらダメだよね?」

「ええ、なのに質問してくるんですから。もう敵認定ですよね~」

「それはーー部下の非礼を詫びさせて貰おう」

 本当にルイタフ代表が45度くらい頭を下げて謝罪した。長ソファーに寝転んでるオレの方がまだ顔の位置が低く見上げた格好だったが。

 それでもオレの方が恐縮して、

「いえいえ、『初対面の失礼な大人』程度の認識ですから。気にしてませんから頭をお上げ下さい」

「では詫びを受けて貰えたという事で話を戻すがーーキミの精霊獣がセンティピード・アラクネーだと教えてくれたのだね?」

「教える? う~ん、『不機嫌になる』でしょうか」

「なるほど、ともかく分かると」

「みたいです。精度はともかく」

「時にキミ、マチルダーズ連合に仕官する気はないかい?」

 おっと、マチルダーズ連合のトップ自らに勧誘されちまったぞ。

 正直ノータイムで受けたいんだが、

「えっと、数日前にノルメ閣下に称号に【神童】があるのを理由に16歳までお断りしたところでして、もし今ここで士官の話をお受けするとノルメ閣下のメンツが丸潰れになるというか」

「つまり本音は?」

「『代表の直属ならば喜んで』ですが『ノルメ閣下のメンツも潰すのも困る』です」

「八方美人って訳だね」

「いえ、オレが原因でノルメ閣下が代表から敵対派閥に寝返ったら拙いでしょう、って話をしています」

「ほう。さすがは貴族の子弟だね。14歳で十分情勢が見えてる」

「いえいえ」

「ならば当分は私の裏部隊としてクランで動いてくれたまえ」

「クラン長は別ですよ?」

「私の陣営に付くんだよね、キミのクラン長も?」

「だと思いますが、知り合ったばかりなので何とも」

 と話すオレに、

「まあ、その話はおいおいとして。マチルダーズ連合内にセンティピード・アラクネーが紛れ込んでるのはよろしくない。見かけたら遠慮なく正体を暴いて討伐してくれたまえ」

「畏まりました」

「ションドバーズには竜骨発掘場に巣食ったセンティピード退治で来てるんだよね?」

「はい、ノルメ閣下の命令で来ました」

「では、そちらも頼むね」

「分かりました」

「最後にアースドラゴンの素材なのだが全部こちらに渡して欲しいのだが」

「いやいや、オレの装備の分は渡しませんよ、さすがに」

「ああ、安心してくれたまえ。査定の為に一端全部預かるだけで後日ちゃんと必要な分は返すから。何だったらクラン員全員分でも」

「いえ、そこまでは必要ないでしょう」

「そうなのかい?」

「はい、実力で狩った素材じゃないと勘違いするでしょうから。代わりに素材解体用のノコギリもお願いしますね」

「アースドラゴンの牙で作るって意味かい? かなり豪勢だと思うが」

「それだけの大物をこれからも狩る予定ですので」

「ふむ。では交渉成立という事で」

 こうしてオレは別室にてルイタフ代表にアースドラゴンの素材を全部預けたのだった。





しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

寝て起きたら世界がおかしくなっていた

兎屋亀吉
ファンタジー
引きこもり気味で不健康な中年システムエンジニアの山田善次郎38歳独身はある日、寝て起きたら半年経っているという意味不明な状況に直面する。乙姫とヤった記憶も無ければ玉手箱も開けてもいないのに。すぐさまネットで情報収集を始める善次郎。するととんでもないことがわかった。なんと世界中にダンジョンが出現し、モンスターが溢れ出したというのだ。そして人類にはスキルという力が備わったと。変わってしまった世界で、強スキルを手に入れたおっさんが生きていく話。※この作品はカクヨムにも投稿しています。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 ***************************** ***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。*** ***************************** マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

処理中です...