オレはスキル【殺虫スプレー】で虫系モンスターを相手に無双する

竹井ゴールド

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マチルダーズ連合爆釣編

推定LV150のアーマービッグピルバグ

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 このオレが住む異世界ファンタジーでの田畑や果樹園はどうなっているかと言うと、前世とは少し様相が違う。

 ぶっちゃけると田畑や果樹園は城壁に囲まれた内側に存在した。

 だって、そうだろう。

 いくら【モンスター除け】のアイテムを使おうと、複数のモンスターの出入りが自由な場所に田畑などを構え、もし手違いでモンスター除けが発動しなかったら一夜で農作物が喰われてしまうんだから。

 オレの実家の貧乏男爵領でさえ、木材の塀で囲っていたからな。

 レッドボアの突進で簡単に潰れてたけど。

 それでも音が鳴って異変を知らせ、モンスターの侵入には気付く。

 気付かずに翌朝になって喰い荒されて全滅なんてのは最悪だからな。





 このローセファースの街では街の北側に農業区が存在した。

 街と同等の大きさのエリアが3つ。

 全部が城壁に囲まれてる。

 水路もバッチリだ。

 農業区はローセファースの街の生命線でもあり、城壁には兵士達が立って周囲を警戒していた。

 農業区を3区画に区切ってるのはモンスターに突破された際にリスク分散の為だとか。

 全部が縦長な訳ではない。

 大まかに説明すれば、街の北側に1個、そこから北側と西側に1個ずつ、となった。

 そのローセファースの街と農業区の城壁に最近悪さをするのがダンゴムシの虫モンスター、アーマーピルバグだった。

 どうも西の国境のオレが倒したサンドワームの死骸を目指しているらしいのだが、横断するのに城壁を迂回せずに直進して城壁を破壊しようと突進しているらしい。





 そしてその駆除依頼がクラン【氷の百合】に回ってきたのだった。

 アホらし。

 オレは素直にそう思ったがバニラさんが、

「断れないわよ、アラン。それがクランの責務って奴だから」

 ああ、社会貢献って奴ね。

 ったく、面倒臭い。

 戦国時代の秀吉もそんな事はしてなかったのに。

 いや、貰った領地の治水工事なんかがもしかしてそうか?

「分かったよ、バニラさん」

「という訳で、トミナ殿と一緒によろしくね」

 さらっとバニラさんがノルメ閣下からクラン【氷の百合】への連絡係として表向き派遣されてきた女騎士のトミナさんをオレに押し付けてきた。

 トミナさんは22歳の人間で、銀髪ミディアムの女魔法騎士のお姉さん。

 一言で言えば、キリッとした堅物キャラだった。

 マチルダーズ連合の女魔法騎士用の甲冑を纏っている。

 マチルダーズ連合の国旗が赤地に黒蜥蜴の図柄な事から、魔法騎士のカラーは赤色と黒色だった。

 魔法騎士が送り込まれてくるって。

 裏の目的がオレ達の監視なのだから狩り場にまで付いてきそうだな。

「よろしくな、アラン殿」

 子供の監視をやらされてるんだ。

 内心ではかなり御立腹の様子だったが。

「こちらこそよろしくお願いしますね、トミナさん」

 オレはトミナさんの内面の欝憤など知らぬ顔でそう好意的に声を掛けたのだった。





 それにしてもダンゴムシか~。

 前世のTVでやたらと再放送される2時間アニメ映画を思い出すんだが。





 ◇





 ローセファースの農業区の東側の城壁の外側までトミナさんと狼に乗ってきたのだが。

 1匹の狼に2人乗りしていた。それもトミナさんが何故か前で。

 オレ、狼騎乗の称号が欲しいのに~。

 それにトミナさんが鎧を纏ってるから腰に抱き付いても硬い鎧の感触しかないし。

 何かが間違ってる。

 そう思わずには要られなかった。

 2人乗りの狼で巡回してると本当に、ドゴン、ドゴンッと丸まって城壁に突進してるモンスターを発見した。

「あれですか?」 

「あれだ。本当にアラン殿が1人でやるのか?」

「ええ、クラン【氷の百合】の仕事ですから」

「アーマーピルバグの推定LVは60。怪我だけはしないように」

「わかりました」

 オレは狼から降りると2メートルサイズで色は鼠色のアーマーピルバグの横側からシュー、シューッと無印の殺虫スプレーを使って仕留めたのだった。

 オレが倒したのは5匹。

「なっ、なっ? いったい何を?」

 トミナさんがナイスリアクションを取ってる。

 いいね、そういうの。少し可愛いかも。

 後、殺虫スプレーは隠してない。

 隠して戦うなんて不可能だからな。

 さっさとこんな雑用は済ませて帰ろう。

 冒険者ギルドがクラン【氷の百合】に押し付けた討伐数は12匹。

 残り7匹な訳か。

 オレがアイテムボックスにアーマーピルバグの死骸を入れてると、

「そのアイテムボックスはどのような経緯で入手したので?」

 貴重品だからな。質問された。

「アースビッグタートルの売却金全部で購入しました」

「あの南門のアースビッグタートルもアラン殿が?」

 何やらオレヘリスペクトの眼差しを向けながらトミナさんが尋ねる。

「ええ、内緒ですよ」

 オレはアーマーピルバグの死骸を入れ終わると、狼の背鞍に乗ったのだった。





 残りの目標数の7匹も余裕で倒した。

 だって殺虫スプレーがあるから。

 一吹きで余裕で倒せるし。

 ってか、それ以上の数、アーマーピルバグが居て倒しまくった。

 合計で22匹。

「凄いな」

「いえいえ」

 トミナさんの男言葉に謙遜するオレ。

 本音は当然、オレってすげえ、最高~、なんだが。

 功績をひけらかす子供って嫌われそうだからさ~。

 空気を読んだ訳だよ。

 でもLV60を22匹倒したところでオレのLVは1つも上がらないんだけどね~。

 何か時間を無駄にしてるな~。

 マチルダーズ連合に入国する前のオレのイメージでは虫系の巨大モンスターを倒す旅をしてるイメージだったんだが。

 クラン【氷の百合】に所属しながら、オレだけ旅を続けるって出来ないかな?

 そしてクラン【氷の百合】が成り上がったら、合流してちゃっかり美味しいとこ取り。

 無理か。

 秀吉もひっどい織田信長にゴマをすってゴマをすって仕えてたもんな~。

 サルとか言われてもヘラヘラして。

 オレに出来るのか、それが?

 無理かも。目標とする路線を変えるか?

 竹中半兵衛とか黒田官兵衛の軍師ポジションを狙う?

 いや、高卒で知将とかはさすがにないわ~。

 なら、石川五右衛門を捕まえた仙石秀久?

 いやいや、お馬鹿過ぎるでしょ、九州攻めで大失態を演じて失脚してるし。

 となると、四国ならやっぱり蜂須賀小六や藤堂高虎?

 う~ん。どれも無理っぽいな。

 気ままな流れ者なのにリスペクトされる武将って誰かいないのか?

 そうか、戦国時代で考えるからダメなんだ。

 思考を切り替えてファンタジーゲームで考えよう。

 勇者とか主人公とかで。

 そんな事を考えながら、オレはアーマーピルバグの死骸全部をアイテムボックスに回収して、

「それじゃあ、帰りましょうか」

 と言った時だった。





 ブオオオオオオオオオオっ!





 との鳴き声がして見れば、でっかいアーマーピルバグが居た。

 とは言っても2時間アニメ映画のサイズじゃない。

 全長10メートル級、高さ2メートルオーバーってところか。

「なっ、アーマービッグビルバグ? それも3匹も?」

「その場に居合わせて何もせず城壁が潰されると後で何を言われるか分らないので倒しますね」

「待った。倒せる訳がーー」

 トミナさんの制止など無視して、オレはLV372のスピードで突進し、

「早いっ!」

 トミナさんがナイスリアクションをする頃にはノズルタイプを出してシューッと顔に吹き掛けて1匹目を撃破。

 続いて2匹目、3匹目と簡単に無双して倒したのだった。





 やっぱ虫はいいぜ。

 殺虫スプレーで一撃で簡単に倒せるから。

 ハァーッハッハッハッ。





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