オレはスキル【殺虫スプレー】で虫系モンスターを相手に無双する

竹井ゴールド

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マチルダーズ連合黎明編

連合内の情勢

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 アースビッグタートルを南門前に放置した翌日、オレはドルバンさんの鍛治屋でドルバンさんを相手に、

「あのレッドボアの牙棒、気に入ってたのにホント最悪だよ~」

「いやいや、アースビッグタートルを相手にレッドボアの牙製なんてランクの低い武器で挑んだおまえさんが悪いんだろうが。1撃で折れなかったのは奇跡だぞ」

「そうなの?」

「ああ、アースビッグタートルは皮膚も硬いからな」

「そう言えば、解体作業を出来る職人が居ないとかで、ビッグホワイトスパイダーの後とかになるって言ってたっけ」

「で、どれにする?」

 ドルバンさんが質問してきた。

 オレは現在、3本のバットの長さの棒を確認してる。

 棒なんて武器を好むのは刃物が禁止の宗教系だけだ。

 なので、この鍛冶屋には剣サイズの長さの棒の作り置きは3本しかなかった。

 どれも似たり寄ったりなので、ピピーがピヨピヨと選んだのを出して、

「じゃあ、これで」

「イエロークロコダイルの牙棒ね、金貨250枚だよ」

 つまりは2500万円?

 このバットの長さの棒が?

「たっかっ!」

「アースビッグタートルを倒した奴が何を言ってる。頭部を破損してるとはいえ、あれだけあれば魔石を別にして素材だけで金貨1万枚は楽にあろうに」

 えっ、10億円なの、あれ1匹で?

 苦労して持って帰ってきた甲斐があったな~。

 そして魔石は別料金。

 いいね、乗ってるね。

「でも所属クランに取られてオレの手元には少ししかーー」

「嘘つけ、女魔術師は傀儡でおまえさんのクランだろうが」

「いえいえ、クラン経営なんて正直面倒臭いので丸投げです」

「ったく」

「そうだ、ミストジャイアントマンティスってどんなモンスターなんですか?」

 パリ達との雑談で知ってるが確認の為に質問した。

「明後日に出発するとかいう遠征部隊に参加して、霧平原のぬしを狩るつもりか?」

「狩るのはここの閣下ですよ、明後日に出発する遠征部隊にはオレも参加しますけど」

 ビッグホワイトスパイダー、アースビッグタートルと立て続けに倒して遠征の日程が早まったとかバニラさんが言ってたんだよね~。

 ここの閣下のクラン【氷の百合】が使えるとの判断だろうけど。

「功績をくれてやる訳だな」

 顎の髭を撫でながら理解を示すドルバンさんに、

「らしいです。何かバニラさんが裏取引していて。ここの閣下に肩入れして大丈夫だと思いますか?」

「大丈夫な訳がなかろうが。マチルダーズ連合の次の代表決めに絡む事になるのだから」

「何ですか、それ?」

「何も知らんとは。本当に強いだけの子供じゃな、おまえさんは。いいか」

 その後の説明を要約すると。

 マチルダーズ連合の国家元首の地位名は代表。

 議会の議員権を持ってる奴なら誰でも立候補して議会内の代表選出選挙に勝てば代表になれる。

 そしてその代表選出選挙は30年に一度の一発勝負で、代表の任期は30年。

 今の代表の任期が28年目に突入しており、次代の代表選出選挙が既に水面下で始まっている。

 大まかな候補は2人。

 現代表の息の掛かった後継者。

 現代表の敵対派閥の首魁。

 ここのノルメ閣下は現代表派閥で後継者を後援する一人。

 そんなノルメ閣下に肩入れすれば敵対派閥から睨まれる。

 そう言う事らしい。

「大変ですね。どっちが優勢なんですか?」

「それが意外や敵対派閥の方だ」

「理由を聞いても?」

「北の大国、エマリス帝国が支援してるって噂だが、はてさて」

「他国の支援を受けて代表になっていいんですか?」

「よっぽどの馬鹿をしない限りはな。馬鹿をしたら暗殺や謀殺もありうる」

「へ~」

 負けそうな方に肩入れして権力者に食い込むのも悪くないか。

 このマチルダーズ連合で立身出世出来るかも。

 でも地位がな。

 30年限定で世襲じゃないって。

 そっちの方が優秀な奴が頭角を現せていいんだろうけどさ~。

 でも、他国が付け入る隙もありそうだし。

 マチルダーズ連合はなしかもな。(0.1秒)

「はい、どうぞ」

 オレは革袋から金貨を出した。

 100枚ずつに分けてある袋を2つ渡して、もう1つから50枚だけ数えて渡した。

「毎度」

 受け取ったドルバンさんが思い出したように、

「谷エリアに向かうなら本当は濃霧エリアのホワイトスネークの素材で装備を作ってからにした方がいいんだが日程的にもう無理だな」

「確かに。因みにホワイトスネークの推定LVは?」

「220。おまえさんなら余裕だろう」

「サイズは?」

「30メートル以上じゃな」

「剥ぐのも一苦労ですね。遭遇しない事を祈りましょう」

「それは無理だろう。蛇は熱センサーで獲物を探るからな。モンスターなら生命探知もある」

「やれやれですね。武器ありがとうございました」

 こうしてオレはドルバンさんの鍛冶屋で新たにイエロークロコダイルの牙棒を手に入れたのだった。





 ◇





 オレが居るこの異世界ファンタジーにおいてクランとは冒険者の大規模パーティーの事である。

 つまり。

 冒険者とは戦闘力が高い。

 それが徒党を組むと悪さなんかもして兵士では手が付けられない場合もある。

 そこで定員の上限が設定されており、このマチルダーズ連合の場合は、





 パーティーは最大6人まで。

 クランは最大500人まで。





 となっていた。

 まあ、まだお試し期間なのでクラン【氷の百合】は上限20人までだったが。





 屋敷に戻ってきたオレは屋敷から下がる垂れ幕を感慨深けに見上げた。

 青地に、金色刺繍で盾の形の2重枠。

 そしてその内側に二輪の水色の氷の百合。

 これがクラン【氷の百合】の紋章だった。

 二輪なのはバニラさんとオレの二枚看板を意味するらしい。下の百合の方がオレね。

 クラン創設か。

 マジで成り上がり始めたな。

 屋敷に戻るとバニラさんが呼んでるとメイドさんに案内されてリビングに通された。

「バニラさん、何?」

 と部屋に入室すればパリ達3人が居た。

「おっ、どうだったの、パリ? 属性の確認?」

「お陰さまでこの度、雷属性の中級を開眼しました」

 鼻高々にパリは答えた。

「それは良かったね。そのクリスタルスタッグビートルシリーズの装備の代金は後でいいから」

「返済もそうですが、実は師匠、クラン【氷の百合】に参加したいのですが入れて貰えないでしょうか」

「って、お父様に言われたらしいわよ」

 バニラさんがそう付け足した。

「現代表派なの、パリのお父さん?」

「はい、なので派閥的には問題ありません」

「ふ~ん。バニラさんの考えは?」

「アランが決めていいわよ」

 そう言われたのでオレは弟子を思う親切心で、

「パリ、多分だけどやめといた方がいいぞ。クランに所属すると組織運営費の徴収で10%取られるから。金貨1000枚なら金貨100枚を徴収だぞ?」

「もうそれ以上の見返りを貰ってるので構いません」

「ーー他の2人も入るの?」

「ええ、魔法を教えて貰ったし」

「ボクはパリ様に従うだけです」

 との了承があったので、

「魔術師3人がクランに加わったら、バニラさんを入れて魔術師が4人で、前衛の担当はオレ1人になる訳か」

「いやいや師匠も魔術師でしょ。あんな凄い魔法が使えて」

「オレは魔法が使えないって事でよろしくね、パリ」

「何故、隠すんですか?」

「奥の手は隠さないとね。それに今、戦闘系の称号集めをやってるから」

「なるほど。それでクランなんですが、師匠、入れて貰えますか?」

「いいんじゃない。但し、オレに食事のマナーを教えてね」

「マナーって師匠って貴族なんですよね?」

「ド貧乏のね。使用人同然の扱いでブルーウルフの肉を有り難がって食べてたし。まあ、もう贅沢を覚えてブルーウルフの肉は食べられないけど。そんな訳でマナーも知らなくて」

「分かりました」

「じゃあ、バニラさん、パリ達をお願いね」

「わかったわ。とは言ってもアランと私は明後日から始まるここの閣下が行う霧平原の遠征部隊に参加するから。その間パリとベリロアの2人は攻撃魔法の実践練習ね。北の荒野で2本級のモンスターを魔法のみで倒す事。武器は接近されたら使っていいわ。ジョニーは2人の援護ね」

「わかりました」

「詠唱の練習と、詠唱時間とモンスターとの戦闘距離の確認と、称号が出るまでだから、それぞれ100匹はモンスターを倒すように。モンスター寄せの香炉は使わない事。最初だから魔法のアクセサリーを付けて補強してもいいわ。それと他のクランがちょっかいを掛けて来ても相手にしないようにね」

「他のクランのちょっかいって、そんなのもあるの?」

 オレが興味を示すと、

「そりゃあ、あるわよ。敵対派閥に付いてるクラン【赤の暴風】の支部がこの街にはあるんだから。当然、明後日から始まる遠征の妨害もね」

「へ~」

 オレは少し身を引き締めたのだった。





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