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マチルダーズ連合黎明編

推定LV280のビッグホワイトスパイダー

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 パリ達と出会った日の夜、レストランにて、オレとバニラさんはパリ達と一緒に夕食を食べた。

 懇親会じゃないぞ。

 その手前の、まあ、採用面接だな。

 パリの仲間の2人は黒髪ショートのお姉さんがベリロア、男の眼鏡など重要はないが、長い緑髪の魔術師がジョニーと言った。

 くぅ~、ジョニーなんて羨ましい名前だぜ。

 オレ、前世ではハリウッドの海賊映画にドハマリしてたからさ~。

 コホン、この3人は全員、ローセファースの街の出身らしい。

 とは言っても幼馴染でも顔馴染でも何でもない。

 パリはマルチダーズ連合に仕官してる幹部魔術師のお坊ちゃんだが、魔法の才能がなくて剣士として冒険者をしている。

 ベリロアは貧民出身の孤児で冒険者になったクチ。

 ジョニーはパリの家に仕える下級魔術師の息子でパリの護衛。

「オレとバニラさんはジオール王国出身だから」

「どうしてマルチダーズ連合に?」

「オレは実家から養子に出されたのを機に脱走」

「脱走って何です、師匠?」

 パリが質問してくる。

 もうオレを師匠呼ばわり。

 こいつは分かってる。

 師匠って呼ばれるの何か凄く気分がいいな。

 ノってくるぜ。

「貧乏男爵家の三男だったのにスキルがダメとかで母方の商家に養子に出されてさ~。そっちがその気ならこっちも好き勝手やらせて貰いますから、って話だよ。ジオール王国に居たんじゃあ家に連れ戻されそうだったからマチルダーズ連合に来たって塩梅さ」

「師匠のスキルって何なんですか?」

「教える訳ないでしょ」

「ええ~、教えて下さいよ」

「教えないって。それよりもさ、パリ。真面目な話、どこまで強くなりたいの?」

「今、LV32なので50まで」

 パリが答えると訳知り顔のバニラさんが、

「魔術師になるのを諦めてない訳ね」

「何、それ?」

「魔法の才能がなくてもLV50前後で魔法の才能が後天的に目覚める場合が多いのよ。魔術師の間では後天開放と呼んでるわ。その正体はLVが上がって魔力が増えるのが原因なんだけどね」

「誰かの嫌がらせで儀式に細工をされて魔法の才能なしの烙印を捺された可能性はないの?」

 オレの指摘にバニラさんがパリを見ながら、

「それはないんじゃないかしら。魔力がないから」

 面倒臭いゴタゴタはなしか。

「バニラさん、パリのLV上げ、オレが手伝ってもいいよね?」

「クラン創設の為の私の等級上げが終わったらね。明日は濃霧エリア、明後日には谷エリアを攻略するんだから、その後でなら」

 ローセファース霧平原は3エリアに分かれてる。

 霧平原の一番外側の霧が薄いのが薄霧エリア。

 中心部の濃霧エリア。

 中心部の渓谷がある谷エリア。

 今日オレ達が居たのは薄霧エリアだ。

 そして一番ヤバイのが最深部の渓谷エリアだった。

「いやいや、今のままだとパリ、薄霧エリアは無理だよ」

「何言ってるの、アラン、連れて行かないわよ。どうせブラックスネークの素材の防具が出来るまではパリも身動きが取れないんだから。それまでは他の場所でモンスター寄せの香炉を使って戦わせてたらいいのよ。そっちのジョニーだっけ、治癒魔法は使えるのよね?」

「ええ」

 ジョニーが答える。

 くぅ~、ジョニーと言ったら、その下のハリウッド俳優のフルネームも続けて呼びたくなるぜ。

「なら、死ぬ事もないでしょ」

「う~ん。それでいい、パリ?」

「ええ」

 と喋ってると外が騒がしくなった。

 正確には冒険者や兵士達が走ってる。

 興味を覚えたバニラさんが小声で呪文を唱えてから、料理が半分以上残ってるのに席から立ち上がって、

「アラン、行くわよ」

「どうしたの?」

「霧平原から20メートル級のビッグホワイトスパイダーが出てきて、ローセファースの街の城壁まで顔を見せてるわ。倒すわよ。霧平原を潜る手間が省けたってものよ」

「了解」

 既に料金を支払ってるので、オレは肉を口に放り込みながら席から立ち上がったのだった。

 うま~、この肉~。肉汁が最高~。





 ◇





 ローセファースの街の南側の城壁は夜だがお祭り騒ぎだった。

 カンカンカンカンッと警鐘が鳴る中、魔法騎士達が走り回り、

「魔術師の城壁の上への移動を優先しろ」

「クソ、取り巻きの雑魚のホワイトスパイダーが壁に張り付きやがったっ!」

「倒せっ!」

「炎の矢っ!」

 おお、何やら大変そうだね~。

「アンタら魔術師か? 城壁の上に上がってくれ」

 マルチダーズ連合の兵士に魔術師ギルドのタグを見せたら、兵士の案内で城壁に備え付けの階段から城壁の上にあがれた。

「等級上げの為に、今回は私がやるわね」

 そう言ってモニョモニョとバニラさんが呪文を唱えると頭上に10メートル級の巨大な火炎球が出現した。

「焦土の炎魔球」

 バニラさんが20メートル級のビッグホワイトスパイダーに魔法を放つ。

 その魔法がビッグホワイトスパイダーに炸裂して、盛大に燃えた。

 周辺にも炎が広がって、従えてたちっこいホワイトスパイダー群を焼き払う。

 だが、まだ20メートル級のビッグホワイトスパイダーは生きており、背を向けて霧平原に逃げようとしたので、

「逃がすかっ! バニラさん、リュックをお願いね」

 リュックを下ろすとオレは城壁から飛び降りて、外側の大地に着地した。

 ざっと前世の10階の高さから飛び降りたが、オレは無事だ。

 落下中に【聖肉体強化】を無詠唱で使ったからな。

 オレのLVなら多分、大丈夫なはずだけど、飛び降りて足を骨折とか怖いから念の為にね。

 その後、オレは疾走して、バニラさんの魔法を食らって動きの遅いビッグホワイトスパイダーの口に蜘蛛専用スプレーをシューッと2回吹き掛けて倒したのだった。





 腹を夜空に向けてビッグホワイトスパイダーが死んだ後、城壁を攻めてた雑魚ホワイトスパイダー群が逃げようとしたが、オレが虫を逃がす訳がないだろうがっ!

 蜘蛛専用スプレーで20匹ほどホワイトスパイダーを倒したのだった。





 アラン・ザク。14歳。LV351→LV352。

 ジョブ:棒使い、精霊獣使い、聖天魔術師

 スキル:【殺虫スプレー】(30)(30)(30)(30)ノズルタイプ(30)(22)cold(30)(30)ムカデ専用(30)蜘蛛専用(12)蜂専用(30)蟻専用(30)

 称号:【貴族名鑑】【神童】【格上潰し】【英雄の雛】【精霊獣の契約者】【聖雛を連れて歩く者】【蜂殺し】【聖天を司る者】【女神の裁きの代行者】【古代種殺し】【白霧の狩人】【打の極みへの道】【無傷の強者】【弱きを貪る者】【剥ぎ職人】





 おっ、LVが1つ上がってる。

 ラッキー。





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