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マチルダーズ連合黎明編

ローセファースの街

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 ジオール王国のモルゼスの街から岩山を越えたマチルダーズ連合側の最初の拠点はローセファースの街だった。

 あんなサンドワームが国境の岩山に住んでいたのだ。

 ローセファースの街も立派な城塞都市だった。

 城門を潜るのは簡単だったが。

 偽物の身分証を持っているので。

 蜥蜴の背には背鞍に乗るオレとバニラさんの他にブルーベアーの毛皮よりも貴重なファイアウルフの毛皮4つが積まれていた。

 ただの色じゃない。名前に魔法の四大元素が付いたモンスターだ。

 そっちの方が格上に決まってる。

 全部を剥いで蜥蜴に積んでいた。

 炎が収まった後の毛皮が赤色なのもいい。

 ザクと言えばイメージカラーは赤だからな。

 前世の地元の友達は緑もいいとか言ってたが、オレは断然、赤派だ。





 ◇





 ローセファースの街で最初にした事は騎獣屋に騎獣を預ける事だった。

 前世でいうところの駐車場だな。

 街の中を騎獣で歩くには更なる手続きが必要らしいから。

 次が宿屋の確保。金があるので簡単だ。

 続いて、鍛冶屋。

 の毛皮を持ち込んで、オレ用の一式の装備の依頼だ。

「おお、冒険者ギルドで噂になってたファイアウルフ4匹を討伐してきたか。そっちの坊主が倒したのかな?」

 バニラさんに交渉を任せたがドワーフが目敏くバニラさんの後方で付き添いのフリをしてるオレを見た。

 どうして分かったんだ?

 ファイアウルフの傷跡は全部、石のピッチングだ。

 オレだとバレる理由にはならない。

 いや、なるか?

 バニラさんが投げたとは考えられないから。

 でも岩魔法ならバニラさんだとも考えられるからやっぱりならないか。(0.1秒)

「どうして分かったのか後学の為に聞いても?」

 すれ違った事はあるが、会話は初ドワーフだ、と思いながらそのドワーフに問うと、

「おまえさん、自分が強い自覚がないのか?」

「ありますけど」

「隠せてないぞ。見る奴が見たら分かるからバレたくなかったらちゃんと精進しろよ」

「は~い。後、内緒でお願いしますね」

「んっ、功名心がないのか? どうしてだ?」

「冒険者ギルドに加盟してませんから」

「ああ、年齢制限か」

「ええ、まあ」

 15歳の年齢制限って。お約束過ぎだろ、冒険者ギルド。

 まあ、確かに14歳で冒険者なんかを許可したら死にまくるのは目に見えてるけどさ。

「ならどうするつもりだ、傭兵ギルドや魔術師ギルドならその年でも入れたはずだが?」

「こちらのお姉さんの弟子として活動するつもりですので魔術師ギルドですかね」

「弟子ね~。それだと魔石売却とか師匠同伴でないと売れなくなるぞ?」

「問題ありませんよ。それよりもオレの防具、少し大きめ、いやフリーサイズで作って下さいね。オレ、成長期ですので背が伸びると思うんで」

「ふむ。まあ、良かろう。ブーツはどうする? ブカブカだと大変だろ」

「ブーツはちゃんとしたサイズでお願いします。それと剥ぎ用ナイフも」

「ファイアハイウルフの牙でか。豪勢だな」

「武器はいりませんので」

 そう答えてから、ん?

「ファイアウルフって? ファイアウルフとは違うんですか?」

「呆れたな。知らんで討伐したのか? 燃えてるだけじゃなくて、魔法陣を展開して魔法を使ってきたろ?」

 ドワーフの鍛冶師にそう指摘されたが、接近される前に顔面ストライクで無双したので攻撃を1回も受けてない。

「ああ、そうでしたね」

 なので、オレは適当に話を合わせた。

「ったく。その武器、レッドボアの牙棒だよな? そのままでいいのか?」

「ファイアハイウルフの牙だと小さ過ぎて棒を作れませんから。その内、武器用のを狩ってきますのでその時にでも」

「ふむ。剥ぎもおまえさんだよな? 剥ぎの仕方は独学か?」

「はい。何か問題でも?」

「腕は三流と二流の間ってところだが、それ以上に剥ぐ場所に問題ありだ。せっかくの腹の毛皮を裂いてダメにしてるからな。それに魔石の次に値の張る火袋も剥ぎ取ってきてないし。冒険者ギルドで剥ぎの上手い奴に習うといい」

「助言ありがとうございます」

「それとーーおまえさんならワシが直々に武具を作ってやろう、ワシはドルバンだ」

「オレはアランです。これからもよろしくお願いします、ドルバンさん」

 との知己を得て、オレとバニラさんはドルバンさんの鍛冶屋から出たのだった。





 続いて向かったのが本命の冒険者ギルドだ。

 バニラさんがメイン。オレは荷物持ち役。

 冒険者ギルドってのはファンタジーのゲームではお約束の場所だ。噂や情報の交換場所として。

 今も昼間っから冒険者が集まってる。

 但し、オレの居るこの異世界ファンタジーでは国別に統括されていた。

 つまり、ジオール王国出身のバニラさんはマルチダーズ連合の冒険者ギルドに加盟していないはずなのだが。

 何故か、バニラさんはマルチダーズ連合の冒険者ギルドの資格を持っていた。

 さすがはジオール王国のもと魔法騎士団。色々と暗躍してる。

「3本のバニラよ」

 この3本ってのはギルド証に刻まれた剣のマークの本数だ。

 マルチダーズ連合の冒険者ギルドの等級は色やアルファベットじゃなくて、剣マークの本数で分別されてる。

 1本が一番弱くて、7本が最高。

 3本なら中の下。そこそこってところか。

 どうしてそんなに詳しいのかと言えば、バニラさんに教わったからだが。

「どうされました?」

「ドルバンの鍛冶屋のファイアハイウルフ4匹の討伐証明書よ。ファイアハイウルフ討伐の報奨金をちょうだい」

 バニラさんが受付嬢に告げたその言葉で冒険者ギルド内がざわついた。

「嘘だろ? LV80のファイアハイウルフの4匹の群れを倒したって」

「魔術師なら出来るんじゃないのか?」

「ってか、初顔だよな?」

「何者なんだ?」

 おお、何か冒険者達から反応が。

 注目されてる。

 気分いいな、これ。

 オレもいつかやってみたい。

 ってか、LV50じゃなくてLV80だったのか。

 まあ、オレのLVが1つも上がってないから、どっちでもいいが。

「お待ち下さい。鍛冶屋に確認しますので、明日もう一度来ていただけますか?」

「ええ、いいわ。それとクラン結成の申請を出すわね」

「クランですか? クランは等級5本からとなってましてまだ――」

「だ~か~ら~、ファイアハイウルフ4匹を倒した私のランクも5本に上がるんでしょ?」

 おお、バニラさんが何やら強気な交渉術を見せてる。

「いえ、まぐれの可能性もありますので、2ランクの等級昇格はございません」

「あら、そうなの? まあ、いいわ。すぐに5本になるから」

 バニラさんはそう強気発言をして冒険者ギルドの建物から出ていき、オレも後に続いたのだった。





 冒険者ギルドを出た直後に、

「やり過ぎなんじゃないの?」

「いいのよ、あれくらい強気で。顔をちゃんと売っておかないとね。さあ、次、行くわよ」

 バニラさんは歩き出した。





 そんな訳でやってきたのは魔術師ギルド。

 魔術師ギルドとは魔術師が集うギルドなのだが、4人に1人がバニラさんとオレをチラ見していた。

「(バニラさん、何か見られてない?)」

「(精霊獣が視えてるからでしょ。ほら、あの魔術師の肩にも)」

 バニラさんの言葉でオレは魔術師の肩に乗ってる水色のオコジョの精霊獣に気付いた。

 なるほど。精霊獣持ちの魔術師はオレやバニラさん以外にも居るのか。

 敵対したくないな。

「それで魔術師ギルドへの来訪の目的は?」

「顔を売るのとアランが持ってるレッドハイウルフの魔石4個の売却、魔術師ギルドが発行してるローセファース近辺の狩り場の地図の購入、それにアランの魔術師ギルドの所属証の獲得ね」

「えっと。1つずつ質問するけど、まず地図って冒険者ギルドのと違うの?」

「ええ、冒険者は真剣に薬草なんて摘まないからね。地図が雑なのよ」

「へ~」

 と納得したオレは、

「オレの魔術師ギルドの所属証ってのは?」

「身分証がないといざという時、拙いでしょ?」

「まあ、バニラさんに任せますけど。でもーー」

「大丈夫よ」

 オレが言う前にバニラさんがそう請け合った。

 魔術師ギルドが売ってる地図を買って、ついでに魔術師ギルドの所属証発行用の書類を貰う。

「名前はステータスに記された通りにね。嘘はダメよ」

「そうなの?」

「ええ。これだけはどうしようもないから」

 そんな訳でオレはアラン・ザクと記した。

 ステータスにまだザクの家名が付いてたので。さっさと籍を抜いてくれよな、ったく。

 出身地の記載欄はない。助かる。

 その代わりに師の記載欄があった。

「当然、私だからね」

 との事でバニラさんと書く。

 最後が属性だが、

「自己申告だから嘘でもOKよ。こっちは魔術師ギルド側も黙認してて確認なんてしないわ。真剣に追求すると手の内を晒したくない魔術師達がギルドの加盟を嫌って数が減っちゃうから。ってか、馬鹿正直に自分の属性を書く方が少ないから」

 なるほど。

 オレも治癒とだけ書いておいた。

 そして銀貨1枚を支払い、魔術師ギルド発行の身分証タグをゲット。

 これで魔術師ギルド管理の施設が使えるようになるらしい。

 図書館やレンタル錬金がま室はもちろん、魔道具ショップなども。

 ふむ。色々とあるんだな~。





 その後、魔術師ギルド所属の魔道具ショップでオレがレッドハイウルフの剥ぎの時にバニラさんに教えて貰って心臓から剥ぎ取った魔石4個を売ったら、何と、

「金貨2000枚? マジで?」

 嘘、金貨2000枚って2億円の事だよね?

 億万長者だ~、オレ~。

「金貨と金塊インゴット、どちらでお支払いしましょうか?」

 女性の店員にそう当たり前の顔で質問された。

 こ、こ、答えられるか~。

「ちょ、バニラさん、どうしよう?」

「魔法のアクセサリーを買いなさい。金貨だろうと金塊インゴットだろうと持ってたら邪魔な上にコソドロに狙われるから」

 それで魔石買取所じゃなくて魔道具ショップで魔石を売った訳か。

「いや、でもオレ、もう魔法のアクセサリーを持ってて、これ以上は付ける場所が――」

「だから、それも売っていいのにバージョンアップするのよ」

「な、なるほど~」

 オレはその後、バニラさんに言われるがままに【中級耐火】の魔法の指輪を金貨500枚、【防御力上昇】魔法の腕輪を金貨800枚で売却して、

「攻撃力、防御力、敏捷が上昇する魔法の腕輪、金貨2000枚、中級耐火と中級耐氷の効果がある魔法の指輪、金貨800枚、そしてこちらが差し引いた代金の金貨500枚となります。こちらの指輪のサイズ交換は今回はサービスとさせていただきます」

「あ、ありがとうございます」

 オレは魔法の腕輪を左手首に嵌めて、魔法の指輪を新たに人差指に嵌めて、サイズを変えて貰った【モンスター除け】の指輪を薬指に嵌めて、金貨500枚を受け取って魔道具ショップを出たのだった。





 億越えの買い物なんて前世を含めて今回が初だから~。

 あ~、緊張した~。





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