上 下
13 / 140
ジオール王国脱出編

国境の街、モルゼス

しおりを挟む
 夕方にジオール王国の東国境の街の1つ、モルゼスに到着した。

 国境だけあって城塞都市風だ。

 中に別区画で砦があるらしい。

 そのモルゼスの城門を潜った訳だが、オレはとっくにモリエーネさん、ベアリスさん、リィナさんの3人と仲良くなっていたので、一緒に鍛冶屋さんに付き合って貰って、レッドスネークの蛇皮で新たな装備一式とリュック、レッドスネークの牙で同じ長さのではなくバット型の棒、それに剥ぎ用ナイフを注文した。

 オーダーメイドの代金は当然、持ち込んだ素材の残りである。

 つまりは無料。

 いや、こっちの方が損をしてるってベアリスさんは言ってたっけ。

 ああ、鍛冶屋との交渉はそのベアリスさんがしてくれた。

「ありがとね、ベアリスさん」

「お礼はいいわよ、私達も儲かったから」

 他の蛇モンスターの牙や皮を持ってるベアリスさんはホクホク顔で答えて、こうして鍛冶屋の前でオレはお3人と別れたのだった。

 さて、オーダーメイドの装備が出来るのは3日後。

 つまりはモルゼスに3日は滞在だ。

 そんな訳で、まずは宿屋を確保ね。

 安宿ではない。

 中くらいの宿を選んだ。

「お金はあるのかい?」

 受付のオッサンがマジマジとオレを見て来て、

「はい、あります」

 3日分の宿泊代金を前金で銀貨1枚と小銀貨5枚で払ったのだった。

 1泊5小銀貨(5000円)、妥当だな。

 料理は出ない。

 なので外に食べに出た。

 ポスタ屋があったので入ってミートソースを頼んだ。

 小銀貨1枚のを。

 1000円のミートソースパスタか。

 高くないか?

 前世の地元の喫茶店だとナポリタンと小さいサラダ付きのセットで750円だぞ?

 まあ、いいや。

 オレ、お金持ちだから。

 銅貨4枚のサラダも別に頼んだ。

 いや、オレの家って蜜柑農家だけど家で食べる分の野菜も畑で育ててたから。

 野菜も一緒に食べる習慣になっててさ。

 サラダが先に出て来て、更に待ってるとアツアツのパスタが出てきた。

 おお、見た目がそのままパスタだった。

 食べた。

 トマトの酸味が少し強くて、噛み応えのある肉がゴロゴロしてるが美味い。

 麺も少し平麺で、オレが知ってるミートソースパスタとは別物だったが。

 それでも日本が懐かしいな。

 いや、今のオレは前世の記憶があるだけで異世界ファンタジーの人間だ。

 それにこの異世界ファンタジーで成り上がるって決めた。

 その為にはーーまずは強くならないと。

 LV上げだな。

 【殺虫スプレー】のスキルがあるお陰で格上の虫モンスターを余裕で倒せるんだから。

 称号【神童】がある内にLVを上げれるだけ上げておかないと。

 後は魔法か。

 そう言えば1冊、魔法書を持ってたな。

 読んでみるか。

 そんな事を思いながら部屋に戻ったら、





 バニラさんがベッドに座ってた。

「は~い、アラン」

 当たり前のように挨拶してくる。

 ベッドの上ではオレのピピーとバニラさんの精霊獣も挨拶をしていた。

 明らかにピピーの方が格上らしい。

 赤色の子熊が尊大に胸を逸らすピピーに平伏していた。

 その偉そうなピピーの仕草も可愛い訳だが。

「逃げた人が今更、ボクに何の御用ですか?」

「逃げるでしょ、マウントスパイダーなんかが襲ってきたら普通。倒しちゃったアランの方がおかしいのよ。でもどういう訳か、マウントスパイダーを倒したの辺境伯の御令嬢って事になってるわよ?」

「あれ、変だな? 褐色肌の獣人のお姉さんに上げたのに」

「ああ、それよ、辺境伯の御令嬢って」

 えっ、あのお姉さん、辺境伯の令嬢だったの?

 いや、あり得るか。オレでさえザク男爵家の三男なんだから。

「ならそれでいいですよ。オレはLVが上がっただけで」

「マウントスパイダーを倒していくつまで上がったの?」

「50ですよ」

 嘘臭い笑顔でオレは答えておいた。

「72にって言ってた癖によくもぬけぬけと。100を越えてるわよね、もう?」

「内緒ですよ。そんな事よりも魔法を教えて下さいよ、バニラさん。マジで必要性を感じてますので」

「それは旅をしながら、おいおいね」

「旅? 待って下さい、バニラさん。オレ、鍛冶屋にモンスターの素材を持ち込んで装備を注文したので3日間は動けませんよ」

「そうなの?」

 当てが外れたとばかりにバニラさんが片眉を上げた。

「ーーもしかしてトラブってます?」

「ええ。追っ手が来ちゃって」

「なら、また旅費を稼げますね」

「いえ、今度は少し向こうも本気で正規の鎧姿で来てるからダメよ」

「ジオール王国の魔法騎士団ねえ~」

 ファンタジーのゲームでは騎士団が主流だが、オレが居るこの異世界ファンタジーのジオール王国では魔法が使える魔術師系の魔法騎士の方が普通の脳筋騎士よりも格が上だ。

 まあ、魔法が使えるんだから当然だけど。

 遠距離の攻撃魔法と、近距離の白兵戦。

 どちらの方が被害が少ないかと言えば魔法だからな。

 この世界は魔法が主流だから。

 なのに、オレのスキルは【殺虫スプレー】、どうなってるんだか。

 オレの父親が「使えないスキル」と断じたのもあながち間違ってないかもな。(0.1秒)

「そんな訳でマチルダーズ連合に入るまで一緒に行動しましょ」

「まあいいですけど」

 オレがそう同意したのは当然、おっぱいと魔法が目当てだった訳で、オレは1つのベッドでバニラさんと一緒に眠ったのだった。

 バニラさんってオレを抱き枕にして寝るからおっぱいが顔に・・・ムフフ。





しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

現代ダンジョンで成り上がり!

カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる! 現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。 舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。 四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる

けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ  俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる  だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った

処理中です...