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ジオール王国脱出編
推定LV50のレッドスネーク
しおりを挟む夜、半壊してる塔を野営地として寝てるとオレは叩き起こされた。
当然、ピピーにである。
オレがなかなか起きなかったのでピピピピッとピピーはかなりの御立腹だったが。
何?
オレがピピーに注目すると、ピピーが右の翼をビシッと指し示した。
焚き火を囲んで馭者の爺さんと乗客の老婆、それにお姉さん3人組がちゃんと寝ている。
つまり、誰かが荷物を持ち逃げしたとかじゃない。
ピピーが示した方向を向いて眼を凝らすと赤色の眼がやたらと光っていた。
シャーッとか聞こえる。
この異世界ファンタジーは文明の利器がある日本じゃない。
よって電灯もなく、意外に星空が明るくて夜でも視えた。
蛇だ。
でも日本のサイズの蛇じゃない。
3メートルはあった。太さもある。
それが10匹以上居る。
ちょ、蛇って。
虫じゃないからダメじゃん。
殺虫スプレーが効かないんだから無双出来ない。
そんな事を思いながらその辺の石を拾うと、オレは振りかぶって顔面ストライクを披露した。
命中するとシャーッと鳴いて蛇が死んだ?
弱っ! 3メートルサイズの癖に。
まあ、いいや、どんどん投げよう。
2球、3球、4球、5球。
距離がある間にピッチングを披露してると、
「何やってるの?」
モリエーネさんが起きてきた。
さすがはエルフ。
耳がいいのかな?
「なんか蛇が群がってきたっぽいので」
「あら、本当ね」
モリエーネさんも確認してそう言うと何やら理解出来ない言葉で呪文を唱え出して、
「氷の波動っ!」
魔法を使った。
それで残りの蛇達を葬り去る。
あれ、モリエーネさんって強い?
それともこの世界の魔法は地球の拳銃くらい強くてこの威力が当たり前?
「ええっと、モリエーネさんって強いんですか?」
「まあね。寝ましょう」
「その前に剥ぎの練習を。ってか、質問なんですが、ウルーウルフの肉と蛇の肉、どっちが食べられますか?」
「蛇ね」
「なるほど。じゃあ、剥ぎをーー」
「夜が明けてからにしなさい。血の匂いで他のモンスターが集まってきたら面倒な事になるでしょ」
なるほど、一理ある。
「は~い」
オレは自分が寝転んでいた場所に移動して寝たのだった。
ウトウトしてるとまたピピーにピピピッと起こされた。
今度は何?
ピピーを見ると、また翼をビシッと向けた先にモンスターの気配がした。
見るとまた蛇っぱい。
それが8匹以上。
何だ、これ?
多過ぎないか?
ってか、モンスター除けのアイテムはどうしたんだ?
使ってるんだろ、ちゃんと?
この付近にはモンスター除けのアイテムを貫けてくる蛇が多い?
それとも爺さんが粗悪品のモンスター除けのアイテムを掴まされた?
ったく、仕方がないな。(0.1秒)
オレはまた石を第1球投げた。
顔面ストライクを披露する。
2球目、3球目、4球目ーー
投げてると、
「またなの?」
またモリエーネさんが起きてくる。
「ええ、何でですかね、これって?」
「さあ」
モリエーネさんがまたしても氷の魔法で一瞬で蛇のモンスターを倒して騒動は終わった。
そして寝てたのだが、またピピーに起こされた。
翼をビシッと外側に向けたので見てみるとまた蛇の団体さんだった。
ムカチン。
はい、オレ、キレちゃいました~。
四目だぞ、オドレどもぉぉぉっ!
眠ってたところを3回も起こしたオンドレらに生きてる資格はねえ。
牙棒を持ってオレは突っ込んだ。
ウヨウヨ蛇が居る。
日本の蛇のサイズじゃない。
平均3メートルサイズだ。
普通は怖い。
オレも通常のテンションだったら、さすがに3メートルサイズの蛇が相手だったら怯むのだが、今のオレは睡眠を妨げられてオカンムリ。通常のテンションじゃない。
蛇のサイズなど気にせずに牙棒で殴り始めた。
2回の襲撃で倒れた蛇もそのまま落ちてるので、更に居るっぽく感じる。
見分けるポイントは目だな。
生きてるのは赤く輝いて動いてるから。
まあ、眼を瞑って死んでるフリをする狡いのが居たら不意打ちを喰らう訳だが、そんなの関係ねえっ!
ブンッと牙棒でホームラン狙いのフルスイングをすると、ボシュッと首から上がえぐれるように吹き飛んだ。
おお、オレって凄いっ!
さすがはLV192。
メジャリーガーも目じゃないぜ。
ブン、ボシュッ、ブン、ボシュッ、ブン、ボシュッと倒していく。
強い、強過ぎる。
まるで蛇が、ボトルタイプの蚊取り線香で墜落していく無力な蚊のようだ。
ククク、ハハハハ。
オレに勝てると思ったのかっ!
オレが変なテンションで無双していると、シャーッと声が聞こえた。
おっと、トグロを巻いてるがコイツはどう見ても3メートルでは収まらない。
倍以上のサイズ、10メートルはあるぞ。
14歳の少年のオレくらいなら一呑み出来そう。
だが、オレの敵じゃないんだよっ!
オレはホームラン狙いのフルスイングでその蛇の頭を一撃でバシュッと吹き飛ばして戦闘を終わらせたのだった。
戦闘終了直後に、
「何を騒いでるのかと思えばーーってか、このサイズのレッドスネークを一撃で倒すって。アナタ、何者なの?」
起きてきたモリエーネさんがやってきてオレを見て何故か引いていた。
「ただの旅行者ですよ」
「ただの旅行者はLV50はありそうなソイツを一撃で倒せないわよ」
「えっ、コイツ、LV50なんですか?」
オレはそんな事を喋って一緒に野営地に戻りつつ、ステータスを確認したがLVに変動はなかった。
もう192だもんな~。
50ごときの経験値でLVが上がる訳もないか。
まあ、これでようやく蛇モンスターの夜襲がなくなり静かに眠れたんだけど。
◇
さあ、翌朝は朝から楽しい剥ぎタイムだ。
「何よ、これ?」
「凄いですね」
呑気に寝てたベアリスさんとリィナさんが多数の蛇の死骸を見て驚く中、モリエーネさんが、
「私とこの子で倒して置いたわ。半分以上はこの子が倒したんだけどね」
「そりゃあ、嘘だろ、モリ?」
「装備が素人なだけでこの子、私達よりも強いわよ、ベアリス」
「へ~」
そんな訳で早速一番の大物である10メートルサイズの頭を失ったレッドスネークの赤蛇皮を剥き用ナイフで剥ごうとしたら、全く剥げなかった。
「はあ? 何で?」
「そんな安物じゃあ無理だろ」
ベアリスさんが呆れて、自分の剥ぎ用ナイフを出して、
「ほらよ。貸してやるよ」
貸してくれた。
「ありがとうございます」
「貸し賃に他の蛇皮をちょうだいね」
「いいですよ」
との交渉の結果、オレはレッドスネークの皮を剥いで肉をゲットして、吹き飛んだ頭から大牙2本を得たのだった。
どうやって運ぶのかと言えば当然、蜥蜴車だ。
運賃に小銀貨5枚を更に馭者の爺さんに渡したら、
「いいよ。好きなだけ乗せて」
と言ってくれたのでね。
因みに朝食時にレッドスネークの肉をチャレンジしたが、ブルーウルフの肉と比べるまでもなく、美味かったので、持ってるブルーウルフの肉を全部捨てて、レッドスネークの肉6キロをリュックに入れたのだった。
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