オレはスキル【殺虫スプレー】で虫系モンスターを相手に無双する

竹井ゴールド

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ジオール王国脱出編

推定LV350のマウントスパイダー

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 日本育ちなので国境と言われてもピンと来ないが、別に国と国の境界線に万里の長城のような壁がある訳ではない。

 簡単に移動出来るらしい。

 つまりは都道府県の県境と一緒だって事だ。

 まあ、オレは見た事はないが。

 問題はそこまで行く足だ。

 蜥蜴車で2日の距離は、徒歩移動だと3倍の6日を要するらしい。

 ってか、自動車社会の日本人のオレにはウンザリの徒歩移動だったが、

「歩いてるとその内、称号が付くからもしれないから歩いた方がいいわよ」

 なんてバニラさんが教えてくれて、

「そうなの?」

「ええ、軍隊なんかだと称号が出るまで歩かされるし」

「へ~」

 オレは文句も言わずに歩いた。

 半日やそこらで称号なんて出なかったけれども。





 というか、ピピーをゲットして魔術師5人をシメた日の夜。

 野宿となった。

 枯れ木の枝を集めて焚き火だ。

 何かテンションが上がる。

 食糧はブルーウルフの肉があるのでそれを焼いた。

 毛布がないので、魔術師ローブを毛布や敷物代わりにした。

「森での野宿の経験は?」

「ないよ、そんなの」

「私達が付けてる魔法の指輪のお陰でモンスターは接近して来ないと思うけど、警戒だけはするのよ」

 オレは左手の中指に嵌めてる指輪を見た。

 【モンスター除け】の指輪でエンカウント率を下がるそうだ。

 左手の小指の指輪は【中級耐火】。

 左手首に付けてる魔法の腕輪は【防御力上昇】。

 魔法の首飾りは【MP微量常時回復】。

 4つも付けてた。

 さすがは魔法騎士団。いいのを持ってた。

 因みに右手にはなし。石を投げる時に邪魔だから。

「は~い」

 とか話しながらも、

「バニラさんはどうするの、これから?」

「もちろんマチルダーズ連合へ行くわ。魔法騎士団を辞めてきたんだから。精霊獣の森での精霊獣ゲットは退職金代わりな訳だし」

「そうなの?」

「ええ。王族や高位貴族だけが精霊獣の森を独占なんてムカつくでしょ?」

「それは確かに」

 それで就寝となったが、

「ほら、もっと私に抱き付いて」

「いや、でも」

「遠慮しないの」

 寒いので2人で抱き付く形で眠る事となった。





 凄い、モテモテライフだ。





 ◇





 だが、抱き付かれて30分くらいでウトウトしてたら、

 ピピピピ。

 ピピーがオレの頭をつついて起こしてきた。

「何? ピピー?」

「どうしたの?」

 バニラさんもオレの声で目を覚ます。

「ボク(バニラさんによく思われる為の演技再開)の精霊獣が騒いでて」

「もしかして敵が近付いてる?」

「敵って魔法騎士団の追っ手?」

「どうしてそうなるのよ、モンスターでしょ、普通は」

 確かに。

 オレ達は森の中で野宿をしてるんだから。

 モンスターからしたら「餌が落ちてる」って襲ってきても不思議じゃないが。

「えっ、魔法の指輪があるのに?」

「モンスター除けをモンスターだって、そりゃあ、いるわよ」

 そう言ってバニラさんが周囲を警戒して、

「うげえ」

 と美女らしからぬ声で呟いた。

「何?」

「マウントスパイダー、山サイズの巨大クモのモンスターだわ」

 あらら。

 そうなの?

「ラッキー」

 オレが思わず呟くと、バニラさんが、

「どこがよ?」

「ほら、だってボクのスキル、虫系モンスターに効くから」

「有効範囲1メートルでしょ? 巨大過ぎて顔まで届かないわよ」

 バニラさんがそう正論でオレに意見した時、ガサガサガサッと森が揺れ始めて、ソイツは現れた。

 一言で表現するならば、それは本当に小さな山サイズの蜘蛛だった。

 5階建てのビルくらいある?

 横幅はもっとだ。

 それが動いてる。

 マウントスパイダー。

 誇大広告なんかじゃなくて名前通りかよっ!

 全身が黒くて足も太い。タランチュラ系だ。

 眼はモンスターらしく赤い。夜でも光ってる。

 それに2個じゃない。

 50個以上がギラリンッと光っていた。

 それが全部こっちを見ていた。

 ってか、オレを見てる?

 何で?

 いや、オレじゃなくて、もしかしてピピーを見てるのか?

 ってか、バニラさんの言った通りだ。

 どう見てもマウントスパイダーの口は下に付いてるが、それでも地上から5メートル以上は離れてる。

 それが攻撃してきた。

 前足の爪が降り下ろされる。

 図体がデカイ分、遅い。

 狙われたオレは突進しながら避けて、

「はあっ!」

 ジャンプした。

 説明しよう。

 オレのLVは72だ。

 そのLVで本気でジャンプをすると4階の小さなビルの屋上くらいまではジャンプ出来るのだ。

 物理法則無視の異世界ファンタジーとLV最高~。

 そんな訳で、両手に出した【殺虫スプレー】でシューッと攻撃した。

 どうして両手で出せるかと言えば、





 アラン・ザク。14歳。LV72。

 ジョブ: 棒使い、精霊獣使い

 スキル:【殺虫スプレー】(26)(28)(12)

 称号:【貴族名鑑】【神童】【格上潰し】【英雄の卵】【精霊獣の契約者】【聖雛を連れて歩く者】





 ほら、オレのスキルの下の数字の入った()が3つに分かれてるだろ?

 つまり3本まで出せるんだよ。

 ダブル殺虫スプレーでマウントスパイダーを攻撃すると、





 グギャギャギャギャギャギャ。





 マウントスパイダーが悲鳴を上げて苦しんだ。

 ってか、悲鳴が凄い風圧となって周囲を襲う。

 だが、オレは身体がうっすらと輝いてその風が効かなかった。

 もしかして頭の上に乗ってるピピーのお陰?

 ピヨピヨ。

 そうらしい。

 何か頭の上のピピーが偉そうに答えてる。

 森の樹木の幹に着地して、更に口の前へと跳んでもう1回、ダブル殺虫スプレーをお見舞いすると、





 グギャアアアアアアアアアアアアア。





 断末魔を上げてひっくり返った。

 おっ、虫仕様だな、その死に方。

 オレは笑いながらステータスを確認した。





 アラン・ザク。14歳。LV72→LV185。

 ジョブ:棒使い、精霊獣使い

 スキル:【殺虫スプレー】(30)(30)(30)(30)ノズルタイプ(30)cold(30)

 称号:【貴族名鑑】【神童】【格上潰し】【英雄の卵】【精霊獣の契約者】【聖雛を連れて歩く者】





 えっ?

 いきなりLV185?

 113もLVが上がってる?

 どうして?

 大ムカデよりも経験値が多い?

 もしかして【格上潰し】の経験値5倍か?

 でも、それでもどうしてこんなに・・・

 まあ、小さな山サイズだからLVが大ムカデよりも高いのは分かるが。

 それにしてもLV185って。

 もしかして【神童】の経験値2倍と【英雄の卵】と【聖雛を連れて歩く者】の経験値1.2倍も相乗されてる?

 ん?

 スキルの【殺虫スプレー】全部で合計180だけど。

 何か点滅してるな、何だ、これ?

 オレがステータスに触れると、





 無印

 ノズル

 cold

 ムカデ専用

 蜘蛛専用





 と出た。

 最後の二つが出るって事はオレの戦闘経験も選択に影響してるのだろうか。

 オレは当然、ムカデ専用を選んだ。

 蜘蛛よりもムカデの方が危険だからとの認識で。





 アラン・ザク。14歳。LV185。

 ジョブ: 棒使い、精霊獣使い

 スキル:【殺虫スプレー】(30)(30)(30)(30)ノズルタイプ(30)cold(30)ムカデ専用(5)

 称号:【貴族名鑑】【神童】【格上潰し】【英雄の卵】【精霊獣の契約者】【聖雛を連れて歩く者】





 なるほど。

 それにしても、もうLV185か

 いいね~。

 乗ってるね。

 LVが上がるとスキルの回数も回復する事が分かったし。

 ってか、ノズルタイプ、coldタイプ、ムカデ専用タイプって、色々ある訳ね。

 何かcoldタイプって虫系以外にも使えそうだな。

 そしてーー称号は付かず、な訳ね。

 まあ、LVがこれだけ上がれば文句もないけどね。

 マウントスバイダーを倒したオレが褒めてと言わんばかりに焚き火の方に得意げに振り返る。

 だが、誰も居ない。

 あれれ、バニラさんが居ない?

 もしかして1人で逃げた?

 ったく、仕方ないな、バニラさんは。

 これまでおっぱいを堪能させてくれたから許すけどさ~。





 オレはその後、マウントスパイダーの死骸の横で一夜を過ごしたのだった。





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